東京ダイヤモンド工具製作所「UnitBase」事例
ユーザー企業が向かうべき内製化、ノンプログラミング開発ツールの導入現場を取材(2/2 ページ)
営業の見積もり情報管理に「UnitBase」を採用
そこで導入したのが、ジャストシステムが提供する顧客管理や案件管理向けのデータベース構築ソフトウェア「UnitBase」だ。プログラミング不要で、Webブラウザの編集画面からドラッグ&ドロップで項目をマッピングしながらデータベースを構築できる。既存の「Microsoft Excel」ファイルを取り込めるところもメリットとして大きい。具体的には各営業担当が作り込んできたExcelファイルの読み込み、同様のフォーマットをUnitBaseで再現できる。
UnitBaseでの開発は当初は小久保氏が担っていたが、今では営業企画の社員2人が行えるようになった。高度なスキルを要しないため、無事に業務を現場に託すことができた。やはり現場が使うシステムは、業務や現場の事情を熟知している人が作った方が効率がよい。また現場で開発や修正ができると、小久保氏やSIer(システムインテグレーター)に依頼するわけではないので細かい要件定義を作成する必要もない。まずはたたき台を作り、後は現場の都合に合わせて修正していけばいい。
開発スピードアップと情シス負荷軽減を実現
小久保氏は導入効果として「開発がスピードアップしました。UnitBaseなら複数の業務プロセスに共通の仕組みを適用できるため、新しい業務プロセスへも素早く対応できます。教育コストや管理コストも大幅に削減できます」と話す。
一人情シスとしては負担を減らせたことも大きい。今回のようにスキルトランスファーをするには「ITリテラシーが高いキーパーソンを見極め、仲間として巻き込むことが重要です」と小久保氏は言う。社内システムを維持していくためにも仲間を増やしていくことは重要なことだ。
使ってみての課題はどうか。GUI(グラフィカルユーザーインタフェース)操作で簡単とはいえ「他システム連係が絡むと少しシステムの見識が必要になります」と小久保氏は念を押す。またUnitBaseをWebブラウザ「Safari」から利用する際は環境や機能に制限がある(タブレット「iPad」版のみサポート、データベース編集画面はサポート対象外)、入力画面に英語表示がないことも懸念だと同氏は言うが、ジャストシステムによればこの2点については近々対応予定とのことだ。もう1点、小久保氏が挙げるのがサイボウズやセールスフォース・ドットコムのサービスに比べて知名度が低いことだった。「市場でのシェアや認知度は製品/サービスの進化に影響するので気になるところではあります。ですが現状、使っていて困ることはありません」と話す。
UnitBaseで見積もり情報を管理できるようになり、受注前の案件の進捗(しんちょく)が共有され、可視化できるようになった。提案が停滞しているのか、失注したのかが、より分かりやすく共有できるようになったという。
営業担当の働き方を変える効果も
東京ダイヤモンド工具製作所は、UnitBaseも情報系システムに含むと判断してAWSで稼働させている。UnitBaseへのアクセスは、ソニーネットワークコミュニケーションズのAWS構築・運用支援サービス「マネージドクラウド with AWS」のネットワークサービスを利用し、社内外からVPNやAWS Direct Connectで接続できるようにした。
モバイル端末からのアプリケーション利用も重要な要件だ。東京ダイヤモンド工具製作所の顧客企業の多くは製造業となるため、営業担当が向かう先は工場のある郊外が多い。営業が利用しやすいようにするには、車で移動する合間に閲覧や入力できることが望ましい。その点、UnitBaseで開発したアプリケーションはスマートフォンやタブレットなどモバイル端末からも利用できる。
見積もり情報管理のシステム化をしたことで、小久保氏は「社内のITリテラシーが高まりました」と話す。先述したように同社の営業活動は個別対応が多いため、最新鋭の顧客管理システムには向かずアナログな部分が残っていた。しかしUnitBaseでシステム化が実現できたことで営業担当のスタイルが大きく変わった。長らく紙とフィーチャーフォンで営業経験を積んできた人が、スマートフォンを持ちVPNに接続して見積もりの進捗を見たり、ワークフローで承認したりするようになったのだ。これは大きな変化である。営業がモバイル端末を使いこなすようになり、自然とITリテラシーも高まったという。
この先10年、製造業のIT化はますます加速へ
今後の展望について小久保氏は帳票バリエーションを追加するなど、全社で業務効率化を促進していくことを狙う。加えて「データを見てビジネスに役立てるように攻めていきたい」と話し、蓄積したデータを分析していくことで需要予測にも役立てるなどの展開を目指している。業界の変化を捉えていくという野心も抱く。「この10年で業務のシステム化は劇的に進みましたが、この先10年は製造業が大きく変化すると考えています。今後もトレンドをいち早くつかむためにアンテナを張り巡らせていきます」
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