「Salesforce World Tour Tokyo 2015」リポート
三菱東京UFJ銀行が行った現場主導のアプリ開発、「7割のコスト削減目指す」(1/2 ページ)
スピード経営や社会の変化に対応し、業務部門自らがIT導入を行うケースが増えている。業務の現場が主導してIT導入を行った2社(三菱東京UFJ銀行、UCS)の事例を紹介する。
東京オリンピックが開催される2020年まで残すところ5年を切った。事業計画を2020年に向けて設定している企業は多いのではないか。この5年間を長いととらえるか短いととらえるかはそれぞれだが、技術の進歩や経営のスピードが速い昨今において、5年もの期間があれば世の中はかなり変わりそうだ。言い換えれば、5年先はなかなか見通しづらい。全てのハードウェアを5年ごとに買い直すというIT戦略や、現場がアプリケーションを作りたいときに迅速に動けない企業の体制であるとすれば、時代に適合しないケースも出てくるだろう。
本稿では、2015年12月に開催されたセールスフォース・ドットコムの年次カンファレンス「Salesforce World Tour Tokyo 2015」でのテラスカイの講演から、三菱東京UFJ銀行、UCSのクラウド活用事例をリポートする。
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テラスカイ 代表取締役社長 佐藤秀哉氏は、「世の中はスピード感を持ってグローバル化、複雑化している。いまや特定業種の企業が、別業種の事業を始めることは珍しくない。米Uberや米Airbnbのように、新興企業が既存のヒエラルキーを壊すことも起こっている。これは日本企業でも同様だ。速く複雑なビジネス環境では、経営判断にもスピードが求められる」と述べ、ITの側面から見た経営スピード向上のための3つのヒントを提示した。
- 現場主義
- 外部ノウハウの活用
- 経営判断の迅速化
佐藤氏は上記について「システムを構築するのは情報システム部門(情シス)でも、使用するのは現場だ。システム構築では、その人たちの思いが、短時間にどれだけ反映されるかが重要である。情シスはもっと現場の声に耳を傾ける必要があるし、場合によっては業務部門が自らシステムを作るケースがあってもいいはずだ。その際、業務部門の人たちにコーディングを覚えてもらうのではなく、コードディングをしないで開発が実現できた方がいい。クラウドサービス(をはじめIT)がこれだけ普及した今、出来合いのものをうまく使うことが欠かせない」と補足した。
テラスカイが提供するSalesforceの画面開発ツール「SkyVisualEditor」は、Salesforceの「Visualforce」や「APEX」といった開発言語を使わず、視覚的な画面開発が可能だ。現在、世界で55万ユーザーが使用している。なお、米Salesforce.comからVisualforceの進化版ともいえるユーザーインタフェース(UI)技術「Salesforce Lightning」が登場したことで、テラスカイもSkyVisualEditorの後継進化版「SuPICE」(スパイス)を提供すると発表している。日本では2016年2月にサービスを開始する予定だ。
このSkyVisualEditorを使用して、システム開発を迅速化することに成功したのが三菱東京UFJ銀行の法人企画部である。三菱東京UFJ銀行 法人企画部 業務基盤企画室 ITソリューショングループ 上席調査役 小川祐司氏が登壇し、概要を説明した。
三菱東京UFJ銀行:改修しやすいアプリケーション基盤を目指し「カタログ開発」を実践
小川氏の所属する法人企画部は情シスではない。法人部門におけるシステム投資の企画、予算運営などを行う部署だ。法人部門の基幹システムに関してはプロジェクトオーナーとして開発を実施する。つまり、ユーザーサイドというわけだ。小川氏はこの部署でシステム開発・施策の立案に携わっている。
法人企画部は以前から、業務システムを改修する都度、わずかな修正でも大幅なコストが掛かることに悩まされていた。時間とコストをかけて完璧なシステムを目指しても、変化に対応できなければROI(投資対効果)に見合わない。小川氏は、「ビジネスニーズや業務の変化にツールの改修が追い付かない。そのため、システム投資に見合わない業務は一部、いまだに紙や『Microsoft Excel』で作業している。営業に行くための材料を用意する時間の方が、営業時間よりも長いといったことも起こり得る状況」と説明する。かといって、情シスに依頼せず自分たちでシステム開発をしようとしても、知見がないユーザーサイドの担当者にとって要件定義の作成はハードルが高く、製品のEOS(End Of Support)対応への負荷も高い。
そこで、同行の法人企画部が考案したのが、標準的な機能を共通部品として持ち、それらを組み合わせ、できるだけノンコーディングでシステムを開発する「カタログ開発」だ。個々の開発投資額を極小化することで、手作業が残存する業務もシステム化し、生産性向上を図る。
これまで、認証やワークフロー、権限制御といった類似の機能であっても、システムごとに一から要件定義をして開発しなければならなかった。また、開発後にイメージと違うことが分かり改修費用が発生してしまうケースもあった。しかしカタログ開発によって、「汎用的なパーツを選択するだけで開発できれば、『これと似たものを作って』といった形で要望を伝えやすい。また、出来合いのものを選択するだけにしておけば、作ってイメージと違うことが発覚する問題も起こりにくい」と考えた。
カタログ開発のプラットフォームにはSalesfroce.comの「Force.com」を活用しているが、標準機能だけでは独自文化に合わないため、業務にそぐわない部分を改修する必要がある。その部分を「機能カタログ」(共通部品)や「業務カタログ」(ひな型)として用意しておけば、独自機能の開発は少なくて済む。小川氏は「開発する場所を減らして7割のコスト削減を目指す」と話す。
ただし、共通部品の開発は、非IT部門にとっては難しい面もある。その点においてはテラスカイの画面開発ツール「SkyVisualEditor」を活用した。小川氏がSkyVisualEditorを選んだ理由は、「1つは、Force.comの開発において標準機能のコンポーネント化やアプリケーションの流用を容易にできること。2つ目がノンコーディングであること」の2点。
同行がForce.comとSkyVisualEditorで実現した機能カタログの具体例に「CIF管理」がある。CIF管理は、顧客番号、顧客名、担当者などをキーワードに顧客情報を検索する機能だ。例えば顧客番号が分からない顧客を検索する際に有用だ。このような標準的な機能をコンポーネント化し流用することで、アプリケーション開発の迅速化、低コスト化を追求している。
今後は、SuPICEによるビジネスロジック開発のGUI化や、テラスカイのデータ連係ツール「SkyOnDemand」を活用し、トランザクションの明細を出力するなど大容量データとの連係などを行う予定だ。
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