理想的なクラウド基盤を構築する方法【第1回】
ビジネス部門から見た、理想的なクラウドの要件とは?(1/2 ページ)
IT基盤はなぜクラウド化する必要があるのか。クラウド化の目的、理想像、現状を再確認する。また、理想的なクラウド基盤の構築に欠かせない、ビジネス部門と情報システム部門、双方の要件を考える。
今日、「クラウドコンピューティング」という言葉は、テレビCMや新聞記事でも目にするほど浸透してきている。しかし、IT基盤のクラウド化に注目している企業は多いようだが、果たしてどれだけの企業でクラウド化が進んでいるだろうか。
クラウドの導入や利用が拡大しているという調査データやニュース記事が出る一方で、「それほど導入が進んでいない」または「進めることができていない」という企業もまた多いのではないかと思う。また、仮想環境を導入することでクラウドを導入したと思い込み、その結果クラウドにそれほどのメリットを感じることができなかった企業もあるのではないか。では、なぜこのようなギャップは生じるのか。それはクラウド化と仮想化を混同してしまい、クラウドの本来の目的を誤解しているためである。
本連載は全7回を予定している。第1回では、クラウド化と仮想化の混同による誤解を払拭(ふっしょく)し、クラウド化の本来の目的、理想像、現状などを再確認する。第2回以降では、理想的なクラウドを実現するためのクラウド基盤の作り方を5つの技術分野で検討する。
今回の内容は下記の通りである。
- なぜ、クラウド化する必要があるのか?
- 理想的なクラウド基盤とは
- 現状の最適解がハイブリッドクラウドになる理由
- ハイブリッドクラウドを見据えた理想的なプライベートクラウドを考えていこう
1.なぜクラウド化する必要があるのか?
近年、ビジネスを取り巻く環境の変化は格段に早くなってきている。このような環境の中で、企業は消費者の需要の急激な変化や競合他社の動きに迅速に先手を打っていく必要がある。
一部の人たちは、クラウド化を仮想化の延長線上と認識し、クラウド化の目的を単なるコスト削減と捉えている場合がある。しかしながら、この考えは誤りである。企業のビジネスの伸長を促進させることがクラウド化の本来の目的である。
例えば、ビジネス部門(フロントオフィス)が新たなサービスのためのシステムを立ち上げる際に、情報システム部門(バックオフィス)はITリソースの準備を依頼されてから調達していては時間を要してしまう。その結果、絶好のビジネスチャンスを逃すことになる。このような事態を回避するためには、ビジネス部門が主導となって、必要なときに、必要なだけ迅速に、ITリソースを確保/解放できるIT基盤が必要になる。このようなIT基盤がクラウドである。変化の激しい状況の中で、クラウド化はビジネスの伸長を後押しする大きな力となる。
2.理想的なクラウド基盤とは
クラウドを有効活用するために、上記のように情報システム部門とビジネス部門の役割を従来のものから見直すことが必要になる。そのようなクラウド基盤には、単なる仮想化にはない、以下のような機能が求められる。
クラウド基盤に求められる機能
- 標準化/メニュー化
- 自動化/ワークフロー化
- 課金管理/(ビジネス部門にとって)サービス化されたITの利用
ここで多くの企業が陥ってしまう誤りとして、クラウド化または標準化/自動化/課金管理のそれ自体を目的としてしまうことである。標準化/自動化/課金管理を目的としてしまった場合、情報システム部門視点でのIT基盤ができあがり、その結果ビジネス部門にとっては使い勝手が悪く、利用されないクラウド基盤となってしまう。
こうした事態を避けるためには、情報システム部門とビジネス部門が一体となってクラウド化を推進していく必要がある。例えば、情報システム部門の視点で行った標準化/メニュー化では自由度が下がると感じるビジネス部門の利用者は多い。だが、逆に自由度が高すぎても利用者であるビジネス部門は混乱してしまうだろう。そのため、クラウドからITリソースを払い出す際の標準化は、ビジネス部門の意見を十分に取り入れて行うべきである。さらに一度作成したひな型はその時点で完成ではなく、随時見直しと改善を行い、ビジネス部門にとっての最適な形に近づけていくべきである。このように見直しと改善のサイクルを回すことが標準化といえるだろう。改善していく際に手間が掛かるかもしれないが、手間が掛かってもビジネスが伸長すれば良いと考えるべきである。
ビジネス状況の急激な変化に追随し、ビジネスの伸長を後押しするために、理想的なクラウド基盤はどのような特徴を持つべきか。実現可能かどうかは一旦考慮せず、ビジネス部門と情報システム部門のそれぞれの立場から理想的なクラウド基盤について考えてみよう。
ビジネス部門からみた理想的なクラウドの要件
まずビジネス部門としては、前述したように、必要なときに必要な分だけ自由にリソースを払い出して利用できる基盤であることが求められる。次にビジネスで使用する上では各サービスのSLA(サービス品質保証)を満たすために一定以上の性能とダウンタイムが極力ない高可用性が求められる。その上、分かりやすくメニュー化されたITリソースから必要なものを選択し、適切なコストで利用できるべきである。もちろん、セキュリティが担保され、データ保護が適切に行われていることは言うまでもない。ビジネス部門から見た、理想的なクラウドの要件をまとめると下記の通りである。
- 必要なときに必要なだけリソースが利用できる
- 品質が保証されている
- メニュー化されたITリソースを適切なコストで利用できる
- セキュリティ、データ保護が適切に設定されている
- 情報システム部門からみた理想的なクラウドの要件
続いて、情報システム部門から見た要件としては、ガバナンスが行き届き、コンプライアンスが確保できているが、ビジネス部門にとっては制限や使いづらさを感じることがないシステムが望ましい。そして、ビジネス部門への権限委譲を可能にするためのマルチテナント機能や、複数のビジネス部門間で干渉が起きないためのQoS(サービス品質)保証などの機能は最低限の条件だろう。また、複数のクラウド環境を使用する場合は、両方の環境を同じ手法/ツールを使用し、工数を掛けず管理できることも重要になる。全体のITリソースの使用状況を見て、IT基盤のリソース追加も簡単にオンラインで可能であり、ビジネス部門の利用者からの要望にも柔軟に対応できることも望ましい。情報システム部門から見たクラウドの要件を下記にまとめた。
ガバナンスが行き届き、コンプライアンスを確保できている
- マルチテナント機能、QoS保証の機能を有している
- 工数を掛けずに管理ができる
- 簡単にオンラインでITリソースを追加できる
- 利用者(ビジネス部門)からの要望に柔軟に対応できる
クラウドというと、システムありきで運用をそれに合わせていくものだと認識されているケースもある。しかし、あくまでビジネスの伸長を促進させるための手段であり、クラウドに運用を無理に合わせることにより生産性が下がってしまっては意味が無い。情報システム部門とビジネス部門、そしてここではあまり言及しないがサービスの利用者を含めた全員が、ストレスを抱えることなく利用できるという観点も重要になってくるだろう。
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理想的なクラウド基盤を構築する方法
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