Sales CloudとSkyOnDemandの事例
創業60年の老舗企業3代目社長が挑む、Salesforceを使った業務改革
親子で3代続く自動溶接装置のメーカー三葉電熔社は、創業60年来の手書き帳票スタイルを「Sales Cloud」「Amazon EC2」そしてEAIツールの「SkyOnDemand」でクラウド化した。目指すのは従業員のマインドチェンジだ。
自動溶接装置メーカーの三葉電熔社は、創業60年以上も続く老舗企業だ。溶接機器や溶接ロボット、さまざまな溶接材料を組み合わせて、自動車の排気マフラーなどの部品を溶接する機械装置(産業用ロボットシステム)を製造・販売する。主要顧客は三恵技研工業などの自動車部品メーカー。機械装置は1台ごとに特注で、制作には数カ月から半年を要する。価格も数千万円は下らない。制作に当たっては高度な専門知識と熟練した技術が求められることは想像に難くない。
三葉電熔社は本社を東京都文京区に置き、国内に3拠点を構える。同社の従業員数は15人。本社勤務の経理担当以外は、全て拠点で勤務する営業担当である。当然、IT部門などない。
同社の3代目に当たる尾崎 洋氏は、5年前に突如、父親の後を継ぎ社長として入社する。そこで目の当たりにした課題は、“この道、何十年”という熟練した営業担当のスキルに依存した業務プロセスと、アナログな管理手法だ。高度な専門知識とノウハウが不可欠な商材であるが故に、顧客からも話が通じやすい“前回と同じ”営業担当が指名されやすい。見方によっては顧客からの信頼が厚い証拠といえる。一方で、人に依存するやり方は、仕事の進め方も属人的にならざるを得ない。その担当者がいなければ仕事が進まない、他の担当者との情報交換がなされないことを意味する。また、納品書、支払い帳、売り帳、入金管理表、支払い予定表など、ほとんどが手書きで行われており、案件の進捗について誰かと共有するという体制にはなかった。
創業以来、各営業担当は20年、30年という長い年月をかけて商品についての知識を蓄え、自分の顧客は自分で囲い込むというスタイルを貫いてきた。だが、これでは営業担当同士はおろか社長も業務内容を把握できない。こうした状況を変えるべく、同社のIT導入がスタートした。営業支援ツールを導入し、情報を1カ所に集め、案件管理・顧客管理の透明化と情報共有を目指す。
だが、この考え方に社内からの反発は予想以上に大きかった。IT化することは、営業担当の仕事のやり方を大きく変えることにつながるからだ。「ライバルと情報共有する意味はあるんですか?」。競争心から、そういった反発があったという。
それに対しての尾崎氏の考えはこうだ。「今は、高度成長期のようには物が売れない時代。また、顧客である自動車メーカーも経験を積んで技術力が高くなってきている。熟練した営業担当でないと仕事は難しいが、従来のように職人的な伝授では前線で活躍できるまでに何十年もかかってしまう。これからは、みんなで情報を1カ所に集めて、半人前であってもそれらを活用して専門的な能力を養い、共に成長しながら、結果として熟練した営業担当に成長してゆくという考えの方が時代に合っているのではないか」
競争から“共創”へ。帳票のIT化は、全営業担当にマインドチェンジを迫るに等しかった。
最初に導入したのはセールスフォース・ドットコムの営業支援ツール「Sales Cloud」。テレビ番組をきっかけに知ったという。ところがいざ導入してみると、全く使われなかった。営業担当の多くは「“商談(機能)”って、何ですか?」という感覚だったのだ。また、Salesforceにはまだ何の顧客データも、商品マスターデータも入っていない。データのないところから案件情報や見積書を起こすのはハードルが高かった。さらに、同社の機械製品は基本特注仕様であるが、細かい部品商材も含めると取り扱う商品数は4000近くに及び、マスターデータを手動で入力するには大層骨が折れる。
このような状況下、Sales Cloudをいきなり商談機能から使うのは難しいと判断し、まずは見積書のシステム化に取り掛かった。Microsoft Excelで作成した見積書をオービックビジネスコンサルタント(OBC)の販売管理ソフト「商・蔵奉行」でシステム化した(サーバはレンタルサーバを借り、インターネット経由で利用)。この作業は経理担当にも抵抗なく受け入れられたという。
だが、商・蔵奉行のデータがSalesforceに連携されなければ、目的である共創が実現できない。そこで、Sales Cloudをカスタマイズして見積書の機能を付与(標準の見積書機能では足りなかった)。商・蔵奉行に入力した見積もりデータをCSVで吐き出し、Sales Cloudに自動で流し込むことにした。このとき、データ連携で導入したのがテラスカイのEAIツール「SkyOnDemand」だ。
連携に関しては問題が2つあった。1つは、商・蔵奉行のレンタルサーバがシステム間連携を禁止していたこと。これについては商・蔵奉行のホスト先をAmazon Web Services(AWS)の「Amazon EC2」に乗り換えることで解決。2つ目は、商・蔵奉行の見積もり項目とSales Cloudの入力項目がマッチしないこと。こちらは、尾崎氏自らSkyOnDemandを操作し、手作業で項目を結び付けた。
こうして「商・蔵奉行に入っている過去の取引価格を基にSales Cloudで見積書を作成し、社内承認が下りたら顧客に提案し、案件が取れたら発注を掛け、発注伝票を商・蔵奉行に入力する」というサイクルが出来上がった。
「目指したいのは、マインドの変革」と述べる尾崎氏。今後の課題は改革の本丸である商談機能の入力と、全案件をSales Cloud上で管理することだ。詳細な商談内容を1カ所に集めることでナレッジを共有し、効率的な営業活動を進めるのが狙いだ。
さらに、顧客やパートナーとのコラボレーションを目的とした、Salesforceの「コミュニティ」機能を活用することで、顧客やパートナー企業とSalesforce上でコミュニケーションすることも視野に入れる。顧客である自動車メーカーと、パートナーである溶接ロボットや部品メーカーとの間に入り、双方のコミュニケーションの橋渡し役を担いたいと考えている。
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