働き方改革が目立った「Japan IT WEEK 2017春」
もはやクラウドは当たり前、「AI技術」搭載製品が一気に拡大した春の展示会
IT業界の最新トレンドが伺える恒例イベント「Japan IT WEEK 2017 春」。各分野で多くのブースが並ぶ中から、特にクラウドコンピューティング、セキュリティ、IoTにフォーカスして業界全体の動向を探ってみよう。
昨年2016年10月に開催された「Japan IT WEEK 2016 秋」で目に付いたキーワードは「IoT(モノのインターネット)」だった。しかし2017年5月開催の「Japan IT WEEK 2017春」ではIoTの展示会場が1ジャンルとして独立したこともあり、どのブースに行ってもIoTというワードを目にする状況ではなくなった。代わりに一気に台頭してきたキーワードが「働き方改革」と「AI(人工知能)」「ディープラーニング」だ。
プレイヤー入り乱れる働き方改革市場、クラウドはインフラの前提に
クラウドコンピューティングのエリアでは、従来、オンプレミスで構築したシステムをクラウドへ移行してどのようなメリットが得られるのか、そんなアピールをするブースが目立っていた。しかし今回は、クラウドの展示エリアであっても、クラウドをはじめ「Amazon Web Services」(AWS)、「Microsoft Azure」(Azure)の文字を目にすることは少なかった。強いて言えば「マルチクラウド」を掲げたり、「顧客に最適なクラウド環境を提供できる」ことをアピールしたりするベンダーのブースは幾つかあったが、その程度だ。もはやインフラにクラウドを利用することや、商材をクラウドサービスとして提供することは当たり前になり、クラウドであるというだけで武器になる時代は終わったと見ていいだろう。
大きな戦場となっていたのは、政策としても取り上げられている働き方改革だ。企業の関心の高まりを受け、関連各社がこぞって「働き方改革」の看板を掲げ、さまざまな製品/サービスを展示していた。働き方改革の代表的な手段であるテレワークやリモートアクセス関連製品/サービスは、ネットワークの高速化やモバイル端末の普及に合わせて進化を続けてきたものであり、IT業界としては目新しいものではない。実際、おなじみの製品/サービスが、働き方改革という看板の下に並んでいた。しかし細かくアップデートされていたり、また新しい技術が取り入れられていたりするものもあった。
例えば遠隔地からオフィスのデスクトップを使った業務が必要な場合、利用する技術は以前ならリモートアクセスやVDI(仮想デスクトップインフラ)が主流だった。現在はクラウドに用意した仮想デスクトップを使うサービス(いわゆるDaaS:Desktop as a Service)が増えている。DaaSの利用を前提に、どのようにセキュリティを守るか、という点で各社が差別化を図り競い合っているようだ。
新たに注目を集めているツールの1つにチャット(メッセージングツール)が挙げられる。これまでも各種メッセンジャーは業務の現場で使われてきたが、テレワークでの利用を前提に、より気軽に使えるメッセージングツールを各社が開発している。「LINE」や「Facebookメッセンジャー」のような手軽さを実現しながら、しかもセキュアであることを訴えていた。筆者が目にした中で面白かったのは、合成樹脂を販売する藤光樹脂の「Kizna talk」の機能「消える会話モード」だ。チャットは手軽であるが故に、うっかり機密情報を書いてしまう恐れもある。かといって、やりとりできる情報に厳しいルールを課せば、気軽さというチャットのメリットを生かせない。そこでKizna talkは、表示から数十秒でメッセージや画像が消える機能を搭載した。画面から消えるだけではなく、送信者、受信者の端末はもちろん、経由したサーバにも情報は残らない。
従業員が業務で使用するメッセージングツールの種類は、増える傾向にある。多くのツールにログインするのは案外面倒だ。1つにまとめたいと考える向きもあるだろう。その面では、グループウェアで既に企業への導入実績が豊富なベンダーの製品が便利だ。例えばネオジャパンが提供する「ChatLuck」は、同社の中核製品である「desknet's NEO」とのシングルサインオン(SSO)や機能連携が予定されており、複数のツールにログインする面倒さを感じさせずにコミュニケーションを加速できそうだ。
働き方改革というキーワードを打ち出していた製品は、その他にも多くある。日報や予実管理、人的リソース管理など、管理者の目の届かない場所で働く人たちの生産性を可視化、管理するような製品を提供するベンダーも、こぞって働き方改革への効用を訴えていた。
製品の一部にAIが急増、従来機能との使い分けを訴えるベンダーも
さて、働き方改革と並ぶキーワードとして無視できないのが、AIとディープラーニングだ。これらはジャンルを問わず浸透しているようだった。Japan IT WEEKは製品ジャンルごとに展示エリアが分かれているが、どのエリアでも「AI」の文字を見掛けた。売り上げの分析、ちょっとした入力サジェストなど、機能の一部に使われているだけでもAIの文字を看板に掲げている印象だった。見方を変えれば、AI技術がそれだけ身近で取り入れやすくなったことの表れだ。人間の手間を少しでも減らせそうな部分に、気軽にAI技術を活用できる時代になったといえる。
中でもAIというキーワードが特に目立っていたのは、セキュリティ関連エリアだ。以前から振る舞い検知の技術はあったが、AI技術を取り入れることで検知率を上げようと各社努力を重ねているようだ。一方で、「AIだけでは、守れない」という刺激的な表現でアピールするブースもあった。クライアント端末からサーバまで身近なセキュリティブランド、トレンドマイクロのブースだ。「AIだけでは、守れない」の真意を尋ねたところ、「何でもかんでもAI技術で判断するのは無駄が多過ぎる。既知の脅威はこれまで通りブラックリストを使った方が高速で効率的なので、そこから漏れたものだけをAI技術で判断し、適材適所でシステム負荷の少ないセキュリティを目指す」と説明した。AI一辺倒で取りあえずAI技術を使ってみる、という段階から一歩進み、AI技術の特性を生かせる部分と既存技術に優位性がある部分とを見極めて組み合わせる段階に入っているようだ。
展示エリアが独立したIoTは、発展模索中といった印象
今回のJapan IT WEEK 2017春は、IoT関連製品/サービスは「IoT/M2M展」として展示エリアを分けていた。しかし展示されている製品/サービスは雑多で、方向性が定まっていない印象だった。格安SIMカード「Mineo」のようなMVNO(仮想移動体通信事業者)の展示があったり、IoTのバックエンドを簡単に構築できるノンプログラミング開発環境の展示があったりと、IoTとひとくくりにするには対象が広過ぎるように感じた。
こちらのエリアで最新技術として注目したいのは、LPWA(Low Power Wide Area)というIoT向け無線通信技術だ。インターネットイニシアティブは小規模スペースながら、主要なLPWA規格「SIGFOX」に準拠したIoTネットワークを展示し、最近もう1つの主要LPWA規格「LoRaWAN」準拠の商用サービスをスタートしたソラコムも、従来のIoT向けSIMカードと並んで展示に力を入れていた。Bluetoothに代わるIoTのラストワンマイルサービスとして期待がかかっている。
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