新規参入を強力に支援するパートナー施策
中堅・中小企業向けクラウドERPに賭けるSAPジャパンの“本気度”とは(2/2 ページ)
中堅・中小企業向けビジネスの成否を大きく左右するパートナー施策
もう1つの柱である「パートナー施策」は、SAPが国内の中堅・中小企業向けパッケージ市場で存在感を高める上では重要な取り組みだ。中堅・中小企業がビジネスアプリケーションを導入し運用する際には、ディストリビューター、リセラー、システムインテグレーター(SIer)などの支援が欠かせない。SAPジャパンはこれまで、大手企業向けの直販ビジネスを強みとしてきた。後発の中堅・中小企業向け市場において、ほぼ一からパートナーエコシステムを構築するのは、並大抵のことではない。SAPジャパンが営業組織を再編したのは、まさにこの難問をクリアするためだったと牛田氏は述べる。
「これまでばらばらだった営業部門とパートナー部門を同じ組織下に配置した。その上で、各地方の中堅・中小企業と密な関係を築いているパートナー企業との協業体制を強化していく」(牛田氏)
SAPジャパンは2017年1~3月に、新たに全国10社のパートナー企業と取引を開始した。こうしたパートナー企業の営業担当者やプリセールス担当者向けに、SAPジャパンは合宿形式のトレーニングプログラムを提供している。パートナー向けのイベントを東京と大阪、福岡で開催する計画もあるという。
今までSAP製品を取り扱ったことがない新たなパートナー企業を開拓する取り組みも進めている。
「ベンダーの中には、製品だけを提供して、『プロモーションや販売はパートナー企業にほぼお任せ』というところも少なくない」と川崎氏は指摘する。同氏によるとSAPジャパンは、営業とマーケティング部門が一体となって、中堅・中小企業向け案件の商談発掘に力を入れている。同社で発掘した案件が成約に至れば、パートナーにバトンタッチする。パートナーと一緒に商談に当たりながら、SAPジャパンのセールスノウハウをパートナーに伝えていくような取り組みも進めているという。
SAP Business ByDesignは「年単位で契約し、月単位で課金」という契約形態を採る。SAPジャパンからパートナー企業へのマージンは、初期導入時だけでなく、ユーザー企業が利用契約を更新するタイミングでも支払われる。これにより、販売あっせんをしたパートナー企業は、ユーザー企業に長期間クラウドサービスを利用してもらいながら、安定的に収益を上げられるようになる。ライセンスの一括販売とシステムインテグレーションに依存するビジネスモデルから、クラウド時代にマッチしたサブスクリプション型ビジネスモデルへとスムーズに移行できるという。
パートナーエコシステムへの参入障壁が低くなる
SAP Business ByDesignは、「Java」をはじめとするオープンな開発言語を使ってカスタマイズできるようになっている。SAP製品といえば、これまでは「ABAP(Advanced Business Application Programming)」というSAP独自のプログラミング言語を使って開発する必要があり、SAPの導入や運用に強いベンダーはこのABAPの開発スキルを売りにしてきた。逆にいえばこのABAPの存在が、周辺ベンダーにとっては参入障壁になっていた。
その点、SAP Business ByDesignではこの開発言語の制約が外れるため、より多くのパートナー企業がエコシステムに参入できるようになったと牛田氏は述べる。
ABAPのスキルが不要になったことで「これまでSAP製品とは無縁だった企業や、ERPを扱ってこなかった企業も、新たにパートナーエコシステムに加わっていただけるようになった」と牛田氏は説明する。SAP Business ByDesignは、クラウドでモジュールを組み合わせたり、用意されているテンプレートを適用したりするだけで、基幹システムを容易に構築できる。ここに、パートナー企業が強みとする独自の機能をオープンな開発言語で追加実装して付加価値を提供することで「これまでSAP製品やERPパッケージと縁遠かった企業でも、新たなビジネスを開拓できるようになる」(同氏)。
ビジネスとテクノロジーの両面において「中堅・中小企業向けビジネスで組むメリット」をアピールするSAPジャパン。パッケージ製品ベンダーとしての同社の実績や信用、そして何より今回の新たなビジネス施策の「本気度」を感じ取ってほしいと、川崎氏と牛田氏は話す。
SAPジャパンの中堅・中小企業向け市場におけるビジネス強化の方針は、2020年までの中期経営計画として目標を明確に定めており「組織や人員、資金面も含めてじっくり腰を据えて取り組んでいく社内体制となっている」と川崎氏は説明。「今期だけ実験的に挑戦する、といった短期的な取り組みではない。われわれ自身が汗をかき、腰を据えて取り組もうとしている計画だ」と主張する。
牛田氏によると、SAPにはドイツの会社ならではの堅実な社風があり、販売した製品は「必ず動かす」ことをモットーにしている。「ERP導入プロジェクトで大きな苦労を味わうことは珍しくない」と同氏は指摘。こうした認識の下、SAPジャパンは導入企業規模やプロジェクトの規模を問わず、製品が必ず動く状態になるまで支援するという。「パートナー企業の皆さんには、ぜひ安心していただきたい」(牛田氏)
これまで幾度となく中堅・中小企業向け市場の壁に跳ね返されてきた同社だけに、今回の施策の「本気度」が試されるところだ。
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