「サービスとしてのAI」を提供するクラウドベンダー4社
徹底比較:AIに本気なAWS、Azure、Google、IBM 各社の違いとは?(2/2 ページ)
ベンダー選定に知恵を絞る
AIアプリケーションを巡ってIT部門が直面するもう1つの大きな課題は、クラウドプロバイダーの選択だ。ベンダー各社が目まぐるしい勢いで新しいクラウドAIサービスをリリースするという状況では、何から始めればよいのか迷ってしまいそうだ。
最大手パブリッククラウドプロバイダーのAmazon Web Services(Amazon)、Microsoft、Google、IBMの各社は、主要なAIベンダーとしても頭角を現してきた。各社の得意分野と苦手分野、ならびにサービスのユースケースは異なるが、各社のサービスには機械学習や画像認識、自然言語処理、音声合成など幾つかの共通したAI機能が含まれている。また、クラウドプロバイダー市場で脅威となるニッチプレーヤーが今後登場する可能性もある。
パブリッククラウド市場をリードするAmazonは、2016年に開催した同社主催の「re:Invent」カンファレンスで「Amazon Rekognition」「Amazon Polly」「Amazon Lex」という3種類のAIベースのサービスを発表した。Amazon Rekognitionは画像処理用のプラットフォームを提供する。Amazon Pollyは深層学習(ディープラーニング)によって文字を音声に変換する。Amazon Lexは「Amazon Alexa」と同じ音声合成技術を使用し、開発者は音声と文字を使った会話型インタフェースを作成できる。AWSの各種コンピューティング/ストレージ/コンテンツ配信/開発ツールを連携できるという点は、企業にとってAmazonのAIスイートそれ自体と同様に、あるいはそれ以上に魅力的だ。
スマートホームデバイスの「Amazon Echo」はアプリケーション開発プラットフォームとして人気を博しているだけでなく、企業にとっては顧客と対話するパッケージアプリケーションの分野に進出する足掛かりとなる。
「従来、コンピュータの操作は視覚的なインタフェースに頼ってきたが、音声がコンピュータを操作する一般的な手段になれば、ユーザーが話した言葉を認識するシステムは非常に大きな価値を持つ」とコプロウィッツ氏は語る。「2016年のクリスマス商戦ではAmazon Echoが飛ぶように売れた。この端末を通じてユーザーにアプローチするチャンスは大きい」(同氏)
一方、Microsoftは2017年5月初めに開催した「Build」カンファレンスで「Microsoft Graph」を企業にアピールした。Microsoft Graphは従業員の活動から得た洞察に基づいて、「生産性を改善する」「会議の日時を設定する」「プロジェクトの参加者を決定する」といった機能を提供するサービスだ。また「Microsoft Cognitive Services」は、音声、言語、知識、検索、視覚などに関連した技術を利用するための広範なAPIをAI開発者に提供する。
Microsoftの自然言語理解(NLU)技術のフロントエンドデジタルアシスタントである「Cortana」は、Amazon Alexaや「Google Assistant」と同様のユーザーインタフェースサービスを提供するが、一部の業界の企業にも訴求すると思われる。
クライアント向けのAIシステムを開発している独立系ソフトウェアベンダー各社は、クラウドプロバイダーとしての人気の高いAmazonやMicrosoftのサービスをクラウドAIサービスとして選ぶケースが多い。「こうしたベンダーはほとんどの場合、当初からAWSやAzureを利用したサービスを提供するだろう。『サービスとしてのAI』というビジネスモデルを構築しようとしているからだ」とボウルズ氏は話す。
Googleの優位性は、同社が社内で利用しているデータアクセスとデータ処理の技術にある。「Google Cloud Platform」のAPIは、オープンソースの機械学習ライブラリの「TensorFlow」に加え、広範なAIスキルを提供する。だが最も有望なのは、同社の機械学習ツールの予測分析機能だ。
「AIの神髄はデータだ」とコプロウィッツ氏は話す。「最終的な目標がデータであるのなら、ユーザーにデータを提供するという分野で特別な立場にあるのがGoogleだ」
ボウルズ氏によると、GoogleはAmazon Alexaに対抗するスマートホームデバイス「Google Home」をリリースしたものの、同社のAI技術はその将来性の割には普及が進んでおらず、競合ベンダーにも後れを取っている状況だという。
「だがAIのような未成熟の分野においては、現時点でGoogleの存在を無視するわけにはいかない」と同氏は語る。
一方、IBMのクラウドプラットフォーム「IBM Cloud」の将来は、同社のAIの普及がどれほど進むかにかかっていると言っても過言ではない。IBMの「Watson
APIは、典型的な機械学習、画像認識、自然言語理解の機能に加え、外国語翻訳、テキストや記事の分析といった分野を切り開くだろう。またIBMは、金融サービスや医療などの特定分野にニッチを見いだす可能性もある。IBMのAI技術を採用した企業には、税務サービス大手のH&R Blockなどが含まれる。
コプロウィッツ氏によると、AmazonやGoogleと違い、IBMはスマートホームデバイスを提供していないため、自然な形でWatsonユーザーにアプローチすることができない。「とはいえ、自社システムをベースとしたオンコロジー(腫瘍学)サービスを開発しようというプロバイダーが他にあるだろうか。Amazonは多分、そんな分野を手掛けないだろう。IBMがこうした分野に進出するのは間違いなさそうだ」(同氏)
だが、大手クラウドプロバイダーのサービスが個別業界のニーズを十分にカバーできるかどうかは不明だ。PA Consultingのクラウド担当者、ジェフ・セイジ氏は「クラウドプロバイダーを選択するのに役立つ基準はあるが、特定業界のニーズにぴったり合致する可能性は低い」と指摘する。
差別化に苦労するプロバイダー
IBMとGoogleのクラウドAIサービスは将来有望だが、企業ユーザーをAWSとAzureから自社のプラットフォームへと引き寄せる必要がある。4社のサービスプロバイダーの全般的な機能はほぼ同等であり、各プロバイダー独自の機能は特殊なニーズを持った企業やその機能を試す開発者向けだ。
機能的に大差がないことに加え、クラウドへの移行に伴う惰性的な感覚は、既に広範な企業向けアプリケーションが対応しているAWSに有利に働く。
「AWSは素晴らしいエンドポイントであり、皆がAWS向けに開発したがっている。AWSのAIサービスも優れており、私も既にAWSをベースとしたアプリケーションの導入を進めている」とコプロウィッツ氏は語る。「AWSがアプリケーション開発分野で非常に勢いがある現状を見れば、同社に強い追い風が吹いていることは間違いない」
セイジ氏とブラウン氏は、どのクラウドプロバイダーを顧客に推薦するかについては、AIのトレンドおよび個別ニーズに基づいて判断するとしながらも、各社の新機能の多くは特定のプロバイダーの優位性を高めるものではないという。
クラウドプロバイダー各社はAIに照準を定めており、いずれか1社がAIサービス競争から抜け出し、開発者を自社のプラットフォームに引き付けるようになれば、クラウドコンピューティング市場の様相が一変する可能性も十分にある。「将来、クラウド市場の競争は、どのプロバイダーがAIに関して最も優れたビジョンを持っているかに左右されるだろう」とモリーニビアンジーノ氏は語る。
AWSがクラウド市場で築いた強固な基盤でさえも盤石ではない。競合ベンダーはAWSの牙城を突き崩すチャンスとしてAIに目を向けているのだ。
「競合各社はAWSの弱点を探している。AIという巨大なハンマーで一撃を加えるためだ」(コプロウィッツ氏)
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