米国企業が採用を手控え?
大統領令でH-1Bビザの今後は? IT企業の外国人採用に影響が出始める
求職・求人サイトを運営するHiredが実施した調査によると、専門技能を持つ外国人向けの査証(ビザ)「H-1B」の今後が不透明になっている状況を受け、米国企業はIT系専門職への外国人労働者採用を手控えている。
2016年11月のアメリカ大統領選以降、H-1B制度の行方が不確実になっており、米国企業のH-1B労働者採用は大きく減速している。
Hiredは、同社が企業から受けるH-1B労働者との面接依頼に基づいて何十万件ものデータポイントを調査した。また、362人のIT系労働者を対象に実施したアンケート調査の結果も報告した。
H-1B制度の見直し
ドナルド・トランプ米大統領は就任4カ月後、現在のH-1Bビザの抽選制度を見直して、ソフトウェア開発者やエンジニアなど高度な専門技能を持つ労働者を優先する方針を発表した。
関連政府機関にH-1Bビザ審査の厳格化を検討するように指示した大統領令以来、具体的な変更はまだ実施されていないが、Hiredの調査によると、こうした不確実な状況はIT技能職へのH-1B人材採用を直撃しているという。
Hiredが提供するサービスは求人と求職のプロセスを逆転させるもので、同社が求人条件に合った候補者を企業に紹介すると、企業の方が候補者に面接を申し込む。Hiredではまた、同社が集めたデータに基づいて定期的に報告書を公開しており、英国のブレグジット国民投票が採用状況に与えた影響なども発表している。
H-1B採用意欲は大統領選後に低下
HiredのH-1B関連調査によると、2016年11月の大統領選直後に集計した2016年第4四半期のデータでは、米国企業からIT系外国人労働者への面接依頼件数は大きく低下した。
もっとも2017年第1四半期と第2四半期になると、この数字は少しずつ回復した。移民改革の見通しは依然として不透明ではあるものの、状況がある程度落ち着いてきたからではないかとHiredのCEO、メフル・パテル氏は見ている。
とはいえ、米国企業による2017年第1四半期のH-1B外国人労働者採用への関心は前年同期より46%少なく、第2四半期には前年同期より37%少なかった。
「選挙の前後でどのような変化が起こったか確認するのが目的だった」とパテル氏は話す。「制度改革はまだ実施していないにもかかわらず、米国企業の外国人労働者採用意欲は著しく減退している」
H-1Bに関する意識調査
HiredはIT系労働者362人を対象として2017年6月に行った調査の結果も報告した。
トランプ大統領はH-1B制度改革で米国民を優先する雇用政策を進める方針を示したが、この調査に回答した米国人IT系労働者の大多数は、移民はIT分野にイノベーションとダイバーシティ(多様性)をもたらすと答えた。
また、米国にはIT分野の需要を満たす適格な人材が足りないと思うかという質問に対し、非米国人IT系労働者の多く(75%)がそう思うと答えた。本来、こうした問題を解決することがH-1B制度の主たる目的だったはずだ。
一方、米国人回答者のうち、そう思うと答えたのは24%にすぎず、48%は分からないと答えた。
現在のH-1Bビザ制度は機能しているかという質問には、米国人と非米国人の回答者の意見はある程度一致しており、どちらもかなりの数の回答者が現行制度は機能していないという考えを示した。
H-1Bの機能不全
政治的右派と左派の両方から批判を受けているH-1Bビザ抽選制度の問題点は、巨大なアウトソーシング企業に所属する高い技能を持たない従業員向けに多くのビザが発給されていることにある。この状況は、本来の目的である高度な技能を持つ労働者の確保を妨げている。
Hiredの調査では、米国人回答者の44%、非米国人回答者の64%が現在のH-1B制度は機能していないと答えた。
IT分野の人材不足
H-1Bを巡る議論の背景には、米国のIT分野における人手不足が2024年までに深刻化すると予想されている状況がある。
そのため、GoogleやFacebookなどの大手IT企業だけでなく、製造、金融、小売などの大企業からもH-1B制度は強い支持を受けている。
「IT分野の慢性的な人材不足は長期的な問題だ」とパテル氏は話す。「解決策は2つある。1つは教育改革によって国内の人材を育成し、米国民の人手を増やすという方法で、これには何十年もの時間がかかる。もう1つは米国が昔から実施してきた方法で、移民政策による解決だ。外国人労働者に厳しくする政策は、人手不足問題をますます悪化させることになるだろう」
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