コスト効率が悪化する場合も
「リフト&シフト」方式のクラウド移行に注意が必要な理由(3/3 ページ)
米国大企業が、リフト&シフト以外の方法でクラウド移行した理由
テーマパーク運営会社Six Flags Entertainment(以下Six Flags)は、Rackspaceの専用ホスティングサービスを利用しているが、社内用のあるサードパーティー製アプリケーションにはAWSインスタンスを利用している。同社にとって、リフト&シフト方式でのパブリッククラウドへの移行は、理にかなった選択肢ではなかった。その理由について、同社のインタラクティブ責任者を務めるショーン・アンダーセン氏は、「社内システムは、社内プロセスおよびハードウェアベンダーとの価格交渉を通じて既に効率化されていたからだ」と語る。
Six Flagsは、社内ITを刷新すべく、モバイルアプリのAPIを作成し、サードパーティーと協力して、コードを「Android」および「Apple iOS」に対応させた。同社が北米20カ所で運営するテーマパークには、1日に合わせて約30万人もの来園者が訪れる。同社は、大勢の来園者に対応できるチケット発券/料金精算システムの運用に向けて、より広いAWSの利用を検討中だ。
アンダーセン氏は、社内のニーズにより迅速かつ柔軟に対応したいと考えている。「例えば、システムをスマートフォンから簡単にアップデート可能にする方法を考えている。従業員がシステムに変更を加える際、重いアプリケーションにログインするためだけに急いでオフィスに戻ったり、リモートロケーションからVPNを使用したりする必要がないようにしたい」と同氏は語る。
Six Flagsは、Amazonの機械学習ツールの導入も検討している。画像認識の他、「Amazon Recognition」「Amazon Lex」「Amazon Polly」といった自然言語理解(NLU) ツールを追加し、待ち時間の予測精度を高めるなど複数の分野でサービス向上を図りたいという。
「飛躍を目指すなら、最適なタイミングを見極める必要がある」とアンダーセン氏は語る。同氏はCIOの配下という、導入に関する考慮を進めやすい立場にあるが、常にイノベーションを意識し、2年後に来園者とどのような方法で対話しているかを考えるようにしているという。「それが最優先事項だ」と同氏は語る。
サーバレスアーキテクチャに注目すべき理由
リファクタリングは、パブリッククラウドを最大限に活用する1つの方法だ。多くの専門家によれば、IaaS(Infrastructure as a Service)は、企業向けクラウドサービスの歩む最初のステップにすぎない。現在はコンテナとマイクロサービスがクラウドのアジリティ(敏しょう性)を高めているが、さらにその次のトレンドによって、インフラ保守はより多くの企業の手から離れることになりそうだ。
「アプリケーションのコンテナ化技術や継続的インテグレーション(注2)および継続的デリバリー(注3)(CI/CD)によって、ここ何年間かでプロセスの自動化は大いに進んだ。だが自動化できる要素はまだある」とRed Hatの製品管理担当上級ディレクター、リッチ・シャープレス氏は語る。
※注2:継続的インテグレーション=ソフトウェアやサービスなどの開発において、時間短縮と品質向上を目的に、開発者同士が自分の行った変更をもとにしたインスペクションやテストなどの流れを短いサイクルで統合(インテグレーション)し、小まめに繰り返す手法。
※注3:継続的デリバリー=継続的インテグレーションの拡張版で、コード変更が発生した時点で、ビルド、テスト、本番へのリリース準備を自動的に実行する。
システムインフラは、物理サーバから仮想サーバ、コンテナ化、最終的にはサーバレスアーキテクチャへと進化しつつある。現在Red Hatは、オープンソースのサーバレス実行環境「Apache OpenWhisk」に投資しているが、主要なクラウド事業者はいずれも隔離したコードで関数を実行するネイティブツールを提供している。
現状では、CPUやメモリを大量に消費するアプリケーションにサーバレスアーキテクチャを用いると、膨大なコストがかかる。今後こうしたサービスが拡大すれば、企業によるパブリッククラウド導入時のシャドーIT対策としても、サーバレスアーキテクチャの導入は検討の余地があるだろう。
「ローカルITに頼らずに、AmazonやMicrosoft Azure、OpenShiftなどのクラウドでより迅速に何かを実行できる方法があれば、開発者はどのみちその方法を用いるだろう。企業のIT部門は、ローカルシステムを保持したままよりよいIT環境を目指すか、外部のシステムに頼る場合、少なくとも責任を持ってあらゆる社内ニーズを満たす必要がある」とシャープレス氏は語る。
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