自社ビジネスに「革命」を起こす準備 できていますか
未来型「IoT導入成功事例」の作り方とは(2/3 ページ)
“あらゆるモノがつながる社会”は、なぜまだ実現していないのか
単純なアプリケーションをネットワークに接続した段階からのステップアップ先として、パスカレラ氏が「複合アプリケーション」と呼ぶ形態がある。異なる種類のデバイスが相互通信を行い、デバイスによって異なる傾向を反映したデータを生成する。「例えば、最新型のトレーラー冷蔵車も複合アプリケーションの1つだ」と、パスカレラ氏は指摘する。こうした車両は、自動車の動力となるシステムと、冷蔵庫の機能を維持するシステムとを連携させたものを搭載し、さらにテレマティクス(注)などを提供する外部システムとも接続している。
※注:テレマティクス=自動車などの移動体に通信システムを組み込んで、情報コンテンツや映像、音声などさまざまなサービスを提供すること。テレコミュニケーション(通信)とインフォマティクス(情報科学)から作られた造語。
「(IoTの)進化の次の段階は複合アプリケーションだ。この場合、全てのシステムが相互接続する形で連携する」と、同氏は説明する。同氏はその一例として、「スマートシティー」を挙げる。「真の意味での『スマートシティー』は、あらゆるモノをインターネットで相互接続する。そこでは、例えば自動車が歩行者の存在や信号機、その周囲にあるもの全てを認識するだろう」(パスカレラ氏)
「現時点では、こうした都市は実現されていない。ただし、私たちはかなり近いところまで来ている」と同氏は語る。
では、何がIoTの成功事例の実現を妨げているのか。専門家や研究者の中には、広範囲に影響を及ぼす画期的なIoTプロジェクトの実現を妨げる要因が「複数存在する」と主張する声もある。そうした要因は、「スキルの高いワーカーやリソースの不足」「セキュリティ上のリスク」「社内システムの刷新を妨げるレガシーシステム」などだという。
IoTのエコシステムが生成する膨大な量のデータから知見を得ても、その戦略的な活用に向けた“ビジョン”が欠けているとの見方も存在する。
「現在、IoT関連テクノロジーの市場投入を急ぐあまり、(現時点でIoTシステム実現の障壁となっている)問題を無視して、企業へ導入しようとするケースも多く見かける。IoTテクノロジーの導入を成功させるには、まず社内のニーズと顧客のニーズを把握しなければならない」と、パスカレラ氏は語る。
「IoTを成功させるには数十年かかる」事実
Rockwellのプエス氏は、同社が「数十年間かけた“基礎固め”の末に、IoT環境構築に成功した」と語る。同氏は、成功のもう1つの要因として、他の業界に先駆けてネットワークとセンサーの組み合わせを導入していた点も指摘する。
同社は、長期間かけて現在の作業環境の基盤を築いてきた。ただし、プエス氏によれば、同社でさえ、IIoTへ本格的に移行するためには、最先端のコンポーネントに再度投資しなければならなかったという。
Rockwellは、2007年頃、旧式のLANテクノロジーに替えて、プラント全体に統合型のイーサネットを実装した。続いて同社は収集しているデータを戦略的に分析し、アナリティクスプログラムを策定して、データから得られた知見をより有効に活用するようになった。さらに同社は2014年、新しいERPソフトウェアを実装し、製造現場などの他のシステムと連携させて、社内ネットワークの接続範囲を拡大した。
調査会社VDC Research Groupのエグゼクティブバイスプレジデントで、IoTや組み込みテクノロジーに特化した専門家でもあるクリス・ロンメル氏は、「『コネクテッドファクトリー(「Industry 4.0」ともいう)』のコンセプトは、数十年前から提唱されていた」と話す。重化学工業などのいわゆる“重厚長大”産業を含む製造業界は、IoT導入から投資収益率(ROI)を引き出すノウハウについて、他の業界に先んじていたのだ。
ただし、こうした企業のIoT導入成功例について、複数の専門家は、「IoT導入によって業務プロセスを効率化した結果“利益”を得たのであり、IoT導入によって新たな収益源を開拓したわけではない」と分析する。
「これまで行われてきたIoT向け投資の事例は、業務の最適化とコスト削減を主な目的としていた。こうした投資が進んだ製造業界では、かけるべき費用とそうではない費用の区別が付きやすいからだ」と、ロンメル氏は指摘する。
さらに、企業の意志決定者たちにとっては、「コスト節約によって分かりやすい導入効果を出せるローリスクのテクノロジー導入を提案した方が、支持を集めやすい」という点も、先見性はあるがハイリスク・ハイリターンともいえる画期的なテクノロジー導入を妨げる要因だろう。
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