NVMe対応ストレージアレイも次々登場
「NVMe over Fabrics」でストレージ環境が一変する――注目の技術革新を解説(2/2 ページ)
NVMe over Fabrics
NVMeがデバイス接続用の新しいストレージプロトコルになるとすれば、iSCSIにおけるSCSIやファイバーチャネルプロトコルに取って代わることも想像に難くない。ファブリック対応のNVMe規格は2014年に開発を開始し、2016年に公開された。
NVMe over Fabricsのトランスポート開発には、リモートダイレクトメモリアクセス(RDMA)を使用する方式と、ファイバーチャネルを使用する方式(FC-NVMe)の2種類がある。
RDMAを使用する方式では、2台のコンピュータのアプリケーションメモリ間でプロセッサを介さずにデータを転送することで、高速で低レイテンシのデータ転送を実現できる。RDMAの実装には「InfiniBand」「iWARP」「RDMA over Converged Ethernet」(RoCE、“ロッキー”と読む)がある。Mellanox Technologiesなどのベンダーは、NVMe over Fabricsオフロード機能を備え、InfiniBandとイーサネットの両方に対応する100Gbpsの高速アダプターカードを提供している。
ファイバーチャネルを使用する方式では、既存のファイバーチャネルを利用してSCSIとNVMeのストレージトランスポートに対応するようにアップグレードできる。この場合、適切なファームウェアを使ってスイッチをアップグレードするだけで既存のインフラを利用できる可能性がある。ホストレベルではホストバスアダプター(HBA)がNVMeに対応すること(一般に16Gbpsまたは32Gbps)、ストレージデバイスもNVMe over Fabricsに対応することが必要となる。
NVMeの実装
NVMeはデータセンターに普及しており、サーバでNVMeデバイスを利用するのが最も分かりやすい用途だろう。ベンダー各社は既にNVMe対応のサーバを物理コネクタやBIOSのサポートとともに市場に投入し始めている。
最新のオペレーティングシステムや、「VMware vSphere」などのハイパーバイザープラットフォームもNVMeに対応してきている。「VMware vSAN」プラットフォームは2015年11月からNVMeデバイスに対応している。
ストレージ機器のバックエンドストレージ接続としてNVMeに対応するという用途もある。ストレージベンダーは既にバックエンドインタフェースをSASに移行しており、Fibre Channel Arbitrated Loop(FC-AL)やパラレルSCSIを順次置き換えつつある。
NVMeを実装すると、フラッシュデバイス用に高速で低レイテンシの接続を提供でき、ストレージオペレーティングシステムのコードが効率的ならアレイのパフォーマンスを飛躍的に向上させることができる。現時点までに、Hewlett Packard Enterprise(HPE)が「3PAR」でNVMeに対応、NetAppが「FlashCache」で読み込みキャッシュにNVMeを採用、Pure Storageが「FlashArray//X」プラットフォームでNVMeに対応している。
Pure StorageのNVMe対応FlashArray//Xは、従来の半分のレイテンシと2倍の書き込み帯域幅を実現するという。この仕様にはホストベースのNVMe over Fabrics対応は含まれておらず、今後、さらにパフォーマンスが向上する可能性が見込まれる。
NVMeオプション
NVMe技術を最大限に活用するには、SAN全体に導入する方がいい。これを実現するのがNVMe over Fabricsだ。導入方法には前述の2つの選択肢がある。適切なインフラを備えているデータセンターならFC-NVMeに移行できる可能性がある。2017年4月、Cisco Systems
は高性能ファイバーチャネルディレクタ「MDS 9710」でFC-NVMeに対応すると発表した。Brocadeは2017年3月発表の「G610」などのGen6 32Gbpsスイッチで既にNVMeに対応している。
ファイバーチャネルのメーカーは、適切なファイバーチャネル機器を使っている場合は既存の環境を完全に入れ替えなくてもNVMeに移行できるとしている。32Gbps接続に対応済みのデータセンターならこれが当てはまるが、多くのサーバは恐らくまだ32GbpsのHBAカードを導入していないだろう。
NVMe対応ストレージアレイが登場して同じインフラにSCSIとNVMeが共存できるようになれば、全てを一度にNVMeにアップグレードしなくて済む可能性がある。既存のハードウェアを維持できるかどうかは環境によって異なる。管理と運用の観点でファイバーチャネルに慣れ親しんでいるデータセンターやIT部門なら、ハードウェア入れ替えコストが原因でなかなか実現できないコンバージドイーサネットへの移行よりも、NVMeの方が移行しやすくなるかもしれない。
ファイバーチャネルではなくRDMAを使用して新しいストレージネットワークを実装する場合、スケーラビリティは下がるが、パフォーマンスが少し高くなる。一部のベンダーはこの方式を採用した製品を提供している。スタートアップメーカーのE8 Storageは、100ギガビットイーサネット(GbE)コンバージドスイッチとRDMAネットワークインタフェースカードを使用して高パフォーマンスSANを実装するNVMe対応ストレージアレイを開発した。同社は、1000万読み込みIOPSと200万書き込みIOPS、読み込みレイテンシ100マイクロ秒と書き込みレイテンシ40マイクロ秒を実現するとしている。
スタートアップメーカーのExceleroが開発したソフトウェア定義型ストレージ(SDS)の「NVMesh」では、NVMe対応サーバメッシュを使用して分散コンピュートストレージファブリックを構築し、ハイパーコンバージドコンピュート環境などさまざまなシステムを実装できる。Micron Technologyの3.2TB SSDとMellanox TechnologiesのイーサネットRoCEスイッチを利用する、Micron Technologyの「SolidScale」というプラットフォームにも採用されている。
Pure Storageは2017年6月に開催した「Accelerate」カンファレンスにおいて、同社の「FlashStack」のリファレンスアーキテクチャでCiscoと提携してNVMe over Fabricsをサポートすることを発表した。これには、FlashArray//X、「Cisco MDS 9700」ディレクタと「Cisco Unified Computing System」(Cisco UCS)、「C-Series」スイッチ、32Gbps HBAが含まれる。同社はバックエンドシェルフ接続にNVMe over Fabricsを採用してシングルコントローラーで追加シェルフをサポートする機能も発表した。
スタートアップメーカーのApeiron Data Systemsは、40GbEと外部化したハイパーコンバージドデザインを採用し、ストレージとコンピュートを別々に拡張できるNVMeアレイアーキテクチャを開発している。
今後の展望
NVMeはSSDデバイスの標準接続規格としてSCSIとSASに取って代わっていくだろう。ハイエンド環境ではNVMe over Fabricsの採用が進みそうだ。導入コストが掛かっても、それに見合うだけの高いアプリケーションパフォーマンスを実現できる。
NVMeを既存のアレイプラットフォームに採用して、スナップショットやレプリケーション、圧縮、重複排除などの機能を維持する動きと、それほど機能豊富ではないExceleroやApeiron Data Systemsなどの新しいプラットフォームアーキテクチャでの導入の両方に注目したい。これまでは、機能が少ないことを理由にNVMe対応製品になかなか関心が集まらなかった。しかし、オールフラッシュへの流れを乗り越えたものの、SSDの能力を最大限に引き出すことのできない古いアーキテクチャは、これから徐々にNVMeに置き換えられていくだろう。
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