NVMe対応ストレージアレイも次々登場
「NVMe over Fabrics」でストレージ環境が一変する――注目の技術革新を解説(1/2 ページ)
Non-Volatile Memory Express(NVMe)はSSDストレージの接続規格としてSCSIやSASプロトコルに取って代わり、NVMe over Fabricsはハイエンドネットワーク環境のデータ転送用に採用されていく可能性がある。
1990年代末から2000年代初め、ストレージネットワークが人気を集め始め、ファイバーチャネル技術が広く採用されるようになった。その数年後にイーサネットで使えるiSCSIプロトコルが登場し、ファイバーチャネルのハードウェア導入コストをかけたくない企業がこれを採用した。これらはどちらも、接続元(イニシエータ)とストレージ機器(ターゲット)の通信にSCSIストレージプロトコルを使う。ところが、永続ストレージ媒体としてフラッシュが台頭すると、SCSIのパフォーマンス不足が問題になってきた。
その問題を解決し、SCSIに代わる新しいプロトコルとして開発したのが「Non-Volatile Memory Express」(以下、NVMe)だ。NVMeは他のプロトコルとどこが違うのか。「NVMe over Fabrics」の登場でストレージネットワーク状況はどう変わるのか。
併せて読みたいお薦め記事
「NVMe over Fabrics」について詳しく
- いまさら聞けないSSD向け次世代接続規格「NVMe」 仕組みと歴史を解説する
- 2017年は「NVMe over Fabrics」が本格始動、専門家が語るフラッシュの未来とは
- SSD用リモートアクセス仕様「NVMe over Fabrics」に掛かる期待と現実
ストレージテクノロジーの2017年トレンドとは
いきさつ
ストレージネットワーク技術は、ストレージハードウェアの進化と統合的な一元管理ストレージのニーズとともに進歩してきた。ファイバーチャネルの起源はメインフレームで採用していた「ESCON」というファイバーベースの接続プロトコルにまでさかのぼることができる。一方、SCSIはサーバ内のHDDの物理接続に端を発している。
SCSIは当初、パラレル通信プロトコルだったが(サーバにHDDを取り付けたことがあれば、SCSIのフラットケーブルに覚えがあるだろう)、Serial Attached SCSI(SAS)の開発によってシリアルインタフェースに移行した。PC分野ではSerial ATA(SATA)に対応する「Advanced Host Controller Interface」(AHCI)が相当する。これらのプロトコルは今でもHDDやソリッドステートドライブ(SSD)に使われている。
サーバとストレージを物理的に接続するファイバーチャネルやイーサネットでは、SCSIが依然としてハイレベルストレージ通信プロトコルの役割を果たしている。しかし、SCSIはそもそも、システムメモリやプロセッサより桁違いにレスポンスの遅いHDDを想定して開発されているため、高速のSSDに対して使うにはパフォーマンス不足が問題になる。ほとんどのSATAドライブはまだ、インタフェース上限6Gbps、実効データ転送速度600MbpsのSATA 3.0仕様に基づいている。SASドライブは12GbpsのSAS 3.0に移行しつつあるが、多くはまだ6Gbpsだ。
しかし、SASとSATAの深刻な問題は、単一デバイスの同時I/Oに対する処理能力不足にある。HDDの構造を考えた場合、複数の同時I/O要求を処理するのは非常に難しく、不可能な場合もある。読み取りヘッドと書き込みヘッドが複数の要求で同じにならない可能性もある。バッファリングを利用するとしても、拡張性がない。SASとSATAのどちらの設計も、複数I/Oキュー処理に対応していない。AHCIには32個しかコマンドを保持しないキューが1つあるだけだ。SCSIのキューは実装に応じて128~256個のコマンドに対応するが、キューはやはり1つしかない。
単一キューだけではレイテンシに悪影響がある。キューのサイズが大きくなれば、他の多くの要求が完了するのを待たねばならず、新しい要求のレイテンシが長くなる。HDDではそれほど問題にならないが、可動部品がなく、個別I/Oレイテンの低いSSDでは大きなボトルネックになる。
NVMeの登場
デバイスレベルとネットワークレベルでこうしたインタフェースの問題を解決するために、SCSIを置き換えるプロトコルとしてNVMeが誕生した。NVMeは専用ストレージバスではなくPCIeバスを使い、内部接続ディスクデバイスに高い帯域幅と低レイテンシを提供する。例えば、PCIe 3.0×4レーンのデバイスでは、1デバイス当たり約4Gbpsの帯域幅を実現できる。
NVMeで大きく変わったのはストレージプロトコルの最適化だ。I/Oアクセスのシリアル化に必要な内部ロッキングの量を少なくし、割り込み処理の効率を高めた。また、NVMeは最大65535個のキューに対応しており、各キューに65535個のエントリを保持できる。単一キューではないため、大量の同時I/O要求を処理できる。プロセッサのコア数が増え、大量の処理を同時に行う現在のIT環境では、複数のI/Oキューに対応するストレージデバイスの意義は大きく、外部I/Oスループットの向上にもつながる。
NVMe規格は2011年、メンバー企業約90社で構成するNVM Expressワーキンググループが策定した。2013年、Samsung Electronicsが初のNVMe対応ドライブを発表した。同ワーキンググループは2017年5月、NVMe規格1.3をリリースし、セキュリティやリソース共有、SSD耐久性管理の課題に対応する機能を追加した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社キーエンス] なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは -
製品資料
[株式会社セールスフォース・ジャパン] 「CRMは設計と無関係」は本当か? PLMとの融合で実現する高速開発 -
事例
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] AIエージェントの時代にどう備える? 「新たな働き手」を支える3要素とは -
製品資料
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] “横並びの自動化”から脱却、AI活用で生産性と競争力を高める秘訣 -
製品資料
[サイボウズ株式会社] AIが「わざわざ使うツール」になっていない? 業務で自然に使う導線にする秘訣
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
2
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
3
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
4
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
5
「中堅・中小企業のネットワーク・セキュリティ運用実態」に関するアンケート
-
6
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
7
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
8
情報漏えいはなぜ繰り返されるのか 今すぐ見直すべき「境界」
-
9
情シスの約8割が転職や退職を意識 調査で分かった“辞めたくなる最大の理由”
-
10
【漫画付き】ひとり情シス協会が明かす、RAG導入でしくじる企業「2つの共通点」
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
4
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
5
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
6
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
7
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
8
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
9
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー