価値は手間に見合っていたか
IT導入補助金で経費管理システムを導入した中小企業の実感(1/2 ページ)
中小企業や小規模事業者のITツール導入経費の一部を補助する「IT導入補助金」制度について、武蔵コーポレーションの事例を紹介する。
経済産業省が中小企業のIT導入を支援する制度「IT導入補助金」。この制度を活用し、収益用不動産販売の武蔵コーポレーションはコンカーの経費管理システム「Concur Expense Standard」を導入した。
同社は事業が拡大するにつれて、外回り業務の多い営業担当者の経費精算処理に課題を抱えていた。従来の交通費精算の方法は、各人が交通系ICカードの明細書を基に計算した書類を作成するというもの。経理担当者が書類を集計して確認し、さらに間違いがないかどうかダブルチェックする方式を取っていた。同社の従業員数は派遣社員を含め100人以上、うち経理担当者は5人だった。営業担当者は1日に約30軒の店舗を訪問しており、交通費精算の申請内容は近距離移動がほとんどだ。今後、事業規模がさらに拡大すると営業担当者の人数も増え、交通費の経費処理を確実にこなすには経理担当者の人数も増やさなければ対応できなくなることが目に見えていた。
拡大する事業規模に対応するにはIT活用が不可欠と判断し、導入に踏み切った同社だが、IT導入補助金の申請手続きはスムーズに進んだのだろうか。同社経営企画部部長の吉田祐馬氏と、同財務・会計部部長の志田宏樹氏に話を聞いた。
事業の急拡大で経費精算処理に課題
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武蔵コーポレーションは、収益用不動産の売買から仲介、賃貸管理を手掛ける資産運用会社だ。2005年12月の創業以来、事業を拡大し、売り上げは過去5年間で約3倍に成長した。現在の賃貸住宅管理戸数は1万戸以上で、2016年7月25日付の業界紙『週刊全国賃貸住宅新聞』の「2016年管理戸数ランキング」にて、2016年の管理戸数の対前年増加率が44.0%と全国1位の伸び率を示している。
現在、武蔵コーポレーションの従業員数は派遣社員も含め100人以上いるが、そのうち経理担当者は5人だ。不動産仲介店舗を回る営業担当者は、各駅を乗り降りしながら1日に約30軒の店舗を訪問しているという。今後、事業規模がさらに拡大すると営業担当者の人数も増え、交通費の経費処理を確実にこなすには「経理の人数を増やさなければ対応できなくなることが目に見えていました」と、志田氏は事業拡大に伴う悩みを明かす。そこで「これらの作業をIT化すれば、安価なコストで効率化できる」と考えたのだという。
経費管理ツールの導入に当たっては、自社でIT資産を持つ必要のないクラウドサービスを検討した。同社は、他の業務システムに関してもクラウドありきでシステム構築する“クラウドファースト”を重視しており、事業規模の拡張に合わせてシステムを迅速に増強できるようにしているのだ。同社の事業は短期間の間に大きく成長しており、必要なシステムがどんどん増えているという。その都度自社でシステム開発やテストをすることは困難なため、「この成長スピードに合うITツールを選ぶには、既に市場にあるクラウドサービスしかありません」と、システム部門の責任者を務める吉田氏は語る。IT資産を社内で抱えると運用保守要員が必要となり、間接業務が増えてしまうという懸念も、クラウドを積極的に選択する理由だと吉田氏は説明する。つまり同社には「人員をできるだけ売り上げや利益に直結する業務に配置したい」という方針がある。
こうしてさまざまな経費管理ツールを比較した結果、最終的に選択したのがConcur Expense Standardだった。選定理由について志田氏は「このようなツールは一度導入すると長く利用することになります。経営基盤のしっかりしたベンダーが提供している製品であれば、長期利用に当たってのリスクは低いだろうと考えました」と語る。
ツールの選定と同時に同社は、IT導入補助金の事務局が認定する「IT導入支援事業者」にコンカーが該当していることを知ったという。このIT導入支援事業者が登録するITツールを導入すると、IT導入補助金の対象となるのだ。補助金の対象となるのであれば、申請しない手はない。そう考えた志田氏はIT導入補助金の申請に向けた手続きを開始した。
IT導入補助金の申請プロセスは「手間ではなかった」
ここでIT導入補助金について少し説明しておこう。これは、2016年度第2次補正予算で講じられた、経済産業省・中小企業庁が主導する「サービス等生産性向上IT導入支援事業」のことを指す。中小企業が導入するITツールの経費の一部を補助することで、生産性の向上を目指す補助金制度だ。多くの場合、補助金の申請手続きは事務局認定のIT導入支援事業者が支援するため、導入企業の作業負担はそれほど大きくないという。補助対象となるのはソフトウェアやサービスの導入費用だ。コンカー製品で補助対象となっているのはConcur Expenseの他、請求書管理ツールの「Concur Invoice」と事前申請ツール「Concur Request」。IT導入補助金の補助率は導入費用全体の3分の2以内で、金額は20万円~100万円と定めている。
IT導入補助金制度を利用したくても、申請プロセスが大変なのではないかと懸念する向きも多いだろう。同社のケースでは、申請はさほど大変だとは感じなかったそうだ。「普段から企業の数字を見ている経理担当者であれば、それほど難しくない手続きだという印象でした」と志田氏は話す。「事業計画書の作成は慣れていますし、企業理念も会社として常に発信しているので、今回の書類を整える作業自体も手間はかかりませんでした」(同氏)。具体的なプロセスとしては、今後の事業に関する計画書や企業理念など、申請書類の案をコンカーに提出し、コンカーの専門スタッフと打ち合わせしながら書類を整えていった。
武蔵コーポレーションは2017年2月に申請書類を作成し、同3月に審査を通過した。これにより、Concur Expense Standardの初期費用と初年度のランニングコストの合計(年間80万円)のうち、3分の2が補助金として武蔵コーポレーションに入金されることとなった。
コンカーがIT補助金制度の支援を手掛けたのは武蔵コーポレーションの事例が初だという。「コンカー側の専門スタッフのサポートは万全で、スムーズに審査が通りました」と志田氏は評価する。IT導入補助金申請の負担が大きいと、中小企業はそもそもの申請さえできない。「面倒だと感じて申請すらしない企業もあるかもしれません。実際には支援事業者のサポートが受けられますので、挑戦してみる価値はあります」と同氏は語る。
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