アメックスからのスピンオフ企業がiPaaSを導入
クラウドファーストの切り札か? 年商2兆円企業もほれ込んだ「iPaaS」の実力(1/2 ページ)
American Expressから分離独立したビジネストラベル会社が、クラウドファースト戦略の推進に当たって「iPaaS」を採用した。そのいきさつや選定の背景を探る。
「出掛ける時は忘れずに」は、American Express(アメックス)の有名なキャッチフレーズだ。だが2014年に同社のグローバルビジネストラベル事業部門のスピンオフで生まれた新会社のAmerican Express Global Business Travel(GBT)は、独立時にほぼ全てのITシステムを置いていかざるを得なかった。
それまでの枠組みから出て、独立企業として新たにITオペレーションを立ち上げるのは容易なことではなかった。GBTは誕生当時、ある意味で珍しい存在だった。GBTは世界120カ国近くで事業を展開し、年間200億ドル(約2兆円)の売上高を誇る巨大企業でありながら、クラウドを前提としてシステム構築を進める「クラウドファースト」戦略を採用したスタートアップだったからだ。
クラウドファースト戦略は、既存システムをクラウドへ移行する一般的なアプローチとは異なる。実現に一役買ったのが、Dell Boomiの大規模エンタープライズiPaaS(integration Platform as a Service:サービスとしての統合プラットフォーム)の導入だ。iPaaSは、クラウドやオンプレミスを問わず、複数システム間の連係に必要な機能を備えたPaaSのことを指す。
併せて読みたいお薦め記事
「iPaaS」「PaaS」についてもっと詳しく
先駆的なPaaS導入事例
システム整備の猶予機関は数カ月
「われわれはわずか数カ月で人事、給与管理、調達、財務といった大規模業務システムを新規に立ち上げ、相互に連係させなければならなかった。これらのシステムについては、American Expressのシステムとは完全に切り離す必要があった」。GBTのディレクターを務めるプラサント・パニカー氏は、こう振り返る。まずこれらの業務をカバーするシステムを用意し、次に顧客向けのトラベルアプリケーションに取り組むことにした。
クラウドファースト戦略が奏功したのは、管理業務の分野においてだった。GBTが選んだSaaS(Software as a Service)形式の人事や給与管理などのアプリケーションは、いずれも各ベンダーがクラウド環境にホストしているものだった。
GBTがクラウドファースト戦略を管理業務アプリケーションに適用した背景には、1つの大きな判断もあった。それは「人事や給与管理アプリケーションの開発に、重要なITリソースを投入する必要はない」というものだった。「市場でのわれわれの差異化にはつながらないのが、その理由だ」とパニカー氏は語る。
システム連係のニーズにiPaaSで応える
クラウドファースト戦略を実行するためには「『さまざまなクラウドアプリケーションを相互に連係させたい』という、われわれの喫緊のニーズに応えるシステム連係プラットフォームを見つけなければならなかった」と、パニカー氏は説明する。
クラウドへの大掛かりな移行に取り組み、短期間に一連のシステム連係の仕組みを開発するには、大規模なシステム連係プラットフォームと冷静な頭脳の両方が必要になる。幸いにも、GBTのパニカー氏は全くパニックにならなかった。それはまさにiPaaSでできることだったからだ。
「さまざまなアプリケーション間、システム間、データストア間でやりとりされるデータについて、企業がそれらの移動や管理、ガバナンスを実行できるように支援するのがiPaaSだ」。Dell Boomiの製品およびパートナーマーケティング担当ディレクターを務めるブレット・スタインマン氏は、こう説明する。
コンサルティング契約を結んでいた調査会社Forrester ResearchやGartnerからのアドバイスを踏まえ、GBTは最終的にDell BoomiのエンタープライズiPaaSを選択した。パニカー氏は、選択に当たって、
- 使用するクラウドアプリケーションの既製コネクターが用意されていること
- 迅速に連係できること
- スケーラビリティやセキュリティが確保されていること
を重視した点という。
クラウドへの移行を乗り切ったパニカー氏は、似た状況にある担当者からアドバイスを求められるようになった。「自社の状況やユースケースをよく理解する必要がある。われわれの場合は、そのためにユースケースを全て洗い出し、詳しく分析した」(同氏)
「クラウドファースト」だが「クラウドオンリー」ではない
他のスタートアップと同じく、GBTはクラウドのみでシステムを構築、運用することが最も望ましい戦略だと考えていた。だがそれは「現実的ではなかった」とパニカー氏は語る。同社は大規模なレガシーシステムを抱えていたからだ。
GBTが内製をした一連のプロプライエタリなレガシーシステムは、いずれもクラウドの企業利用が活発化する前の時期に設計したものであり、クラウドへの移行に適さなかった。システムから膨大なトランザクションが発生するといった設計面の理由からだ。「多くのITシステムがレガシーシステムに組み込まれていた」とパニカー氏は説明する。
そのためGBTは、オンプレミスシステムの運用も継続させる必要があった。今のところ、主要なトラベルアプリケーションも全てオンプレミスで稼働させている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
市場調査・トレンド
[コパード株式会社] 約9割が負担を実感 Salesforceのテスト業務に関する実態調査で見えた課題とは -
市場調査・トレンド
[コパード株式会社] 「Salesforce」開発・運用におけるAI活用実態調査レポート -
事例
[テクバン株式会社] 1画面でITサービスデスク業務が完結 太陽ホールディングスに学ぶデバイス管理 -
製品資料
[デジタルサーカス株式会社] ライセンス無料 Drupalベースの「多言語ECサイト開発用パッケージ」の実力は? -
製品資料
[デジタルサーカス株式会社] 日本発グローバル企業用Drupal「Risley(リズリー)」の実力とは?
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
半数がブルーカラー転向を視野に? ベテランエンジニアを追い込む“54歳の壁”
-
2
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
3
本当にそのIBM iに問題はない? ブラックボックス化と属人化を防ぐ第一歩
-
4
OpenAIやAnthropicでさえ制御不能 2026年夏「3大サイバー攻撃」の衝撃
-
5
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
6
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
7
「企業内サーバ環境の利用実態」に関するアンケート
-
8
「レガシーシステム・老朽化システムの運用課題と刷新」に関するアンケート
-
9
脱VMwareか、継続か? 仮想化ソフト主要6製品の運用管理と統制機能を徹底比較
-
10
セキュリティは「情シス任せ」が過半数 漏えい発生時やSCS評価制度の課題は?
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
2
システムの保守がモダン化を阻む? 「変えない判断」から脱却する方法とは
-
3
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
4
AI駆動攻撃にどう対抗する? 超速の攻撃からエンドポイントを保護する方法
-
5
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
6
プログラミング不要で誰でも実現できる、ネットワーク運用管理の自動化とは
-
7
東大教授と考える、AI時代の「データ主権」「信頼性」「ガバナンス」の在り方
-
8
Linux初心者でも知らないとまずい「RHEL」「SLES」の違いとは?
-
9
最速72分でデータが流出? 最新の脅威トレンドや侵入手法から分かった防衛策
-
10
生成AIの活用を阻む「5つの壁」とは? AIネイティブ組織へ変革を遂げる方法
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー