直近ニーズと長期的ニーズを見極める
マイクロサービスをどう活用する? エンジニアが知るべき4つの道しるべ(2/2 ページ)
クラウドの柔軟性と拡張性を生かすためにマイクロサービスを利用する
3番目のユースケースは、クラウドの柔軟性と拡張性を生かすためにマイクロサービスを利用するというものだ。企業は、クラウドの最大のメリットがシステム処理コストの削減でなく、業務の効率化によるビジネスのアジリティ(俊敏性)やアプリケーションのエクスペリエンス(ユーザーが体験する好意的なシステムの動作)の向上であることを知っている。問題はこうしたメリットを実現するにはどうすればよいかが必ずしも明確ではないことだ。この問題の最適解がマイクロサービスである。
柔軟性や拡張性はシステムの稼働状態を調整したり、障害に対応したりするためにシステムのリソースを拡張または縮小することを意味する。言い換えれば、アプリケーションの“ボトルネック”コンポーネントの複数コピーをインスタンス化し、これらのコピーの間でシステム処理を分散できるようにアプリケーションを構造化するということだ。マイクロサービスは、このプロセスを簡素化するコンポーネントを作成するための優れた手段であり、セキュリティやガバナンスの対策をマイクロサービスに適用するのと同じAPIマネジャーを負荷調整(ロードバランシング)やインスタンス管理に利用できる。
このユースケースは、アプリケーションをコンテナ方式のデプロイメント環境(プログラム配置環境)に移行する手段とみることもできる。クラウドコンピューティングを目指している企業にとって、コンテナ方式への移行は重要な目標になりつつある。マイクロサービスは比較的小さな機能構成要素であるため、低オーバーヘッド型(負荷超過が少ない型)のコンテナモデルに向いており、この2つの技術の最適な組み合わせを実証するための取り組みも進んでいる。
イベント駆動型エンタープライズの構築に利用する
マイクロサービスの4番目のユースケースはイベント駆動型エンタープライズの構築だ。これは著者の考えでは最も洗練されたユースケースだ。アプリケーションの設計は長い間「固定されたワークフローに沿って接続する一連のコンポーネント」という概念をベースとしてきた。コンポーネント同士の接続には通常、メッセージやサービスバス(エンタープライズサービスバス)を使用する。エンタープライズという考えは、ビジネスのイベントを起点にする部分がこれまでと大きく異なる。その違いがビジネスIT全般について大きなインパクトを生み出す可能性を秘めている。だがイベント駆動型エンタープライズ方式は伝統的なアプリケーション設計からの決別と同義である。設計者や開発者にとっては大きなチャレンジとなることを忘れてはいけない。
どのユースケースを選ぶべきか
マイクロサービスは、現存する他のどの技術よりも直接的にイベント駆動型のアプローチを実現できる。マイクロサービスは必要に応じ、素早く拡張が可能だ。つまり企業もしくは開発者の要望に応じて新しくきちんと情報整理された外部向けサービスを素早く立ち上げ、企業の情報と外部の利用者との情報仲介ができる。このようにマイクロサービスをうまく連携できればより新しいビジネスを展開できるだろう。
大抵の企業は、上記のユースケースの中から自社に最適なものを見つけられるはずだ。また、これらの幾つか(場合によっては全て)を自社に適用できる企業も多いだろう。ただし、マイクロサービスがこうしたユースケースに自動的に対応するのではないことを考えれば、ユースケースとはロードマップというよりは、マイクロサービスを適用するための指針であることが明らかだ。最も賢明な方針は、上記の全てのユースケースを検討し、自社の直近のニーズと長期的なニーズに基づいて優先順位を決めることだ。その上で重要な各ユースケースに関連したマイクロサービス機能を整理し、最も重要なマイクロサービス機能はどれなのかを決めればよい。
マイクロサービスは登場して間もない技術であり、失敗はつきものだ。適用分野にかかわらず、そのベストプラクティスは未熟な段階であるからだ。言い換えれば、マイクロサービスの有用性がどれだけ高くなろうが、また、現在どれだけ有用であろうとも、これまで長い間、多くのユーザーがサポートしてきた方式と比べると、まだリスクの高い戦略であることは確かだ。後で修正するのが困難な初期のミスを防ぐためには、各ユースケースをじっくり検討した上で、自社のマイクロサービス戦略を注意深く策定する必要がある。
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