車が空を飛ぶ近未来
Uberの空飛ぶタクシーは2023年に開始予定? 夢のプロジェクトが着々と進行中
未来の象徴として描かれてきた空飛ぶ車が、技術的に実現可能になりつつあるという。Uber Elevateの試みを紹介する。
何世代にもわたって、SFでは空飛ぶ車が未来の象徴として当たり前のように登場してきた。そして今もそれはSFの世界だけのものだ。だが、少し解釈を広げれば、技術的にはしばらく前から存在している。
Terrafugiaの「Transition」がその例の1つだ。Transitionはハイブリッドという考え方だが、基本的には翼を畳んで道路を走行できる自家用機だ。同じく、Flight Design General Aviationが1990年代から提供しているCTシリーズは、特徴的な3つの着陸形態を備えている。ごく最近、Kitty Hawkは、超軽量の「Kitty Hawk Flyer」の初代バージョンの垂直離着陸(VTOL)能力を水上で実演した。こうした例は、さらに多くの製品が登場する前触れといえる。
だが、テレビアニメ『宇宙家族ジェットソン』に登場するような、3次元の道路を飛び交い、人口密集地にスムーズに着陸する、密閉型の操縦席を備えた乗り物の例はない。本稿では、このようなアニメに登場する技術の全てを多かれ少なかれ実現しようとする、Uber Elevateの試みを紹介する。
宇宙時代を現代に
2017年4月、Uber Technologies(Uber)は、新プロジェクト「Uber Elevate」の一環として、テキサス州ダラスのフォートワスとUAEのドバイで2020年までにUberに空飛ぶ車の試験飛行を行う計画を発表した。
同プロジェクトでは、VTOLテクノロジーを利用して乗客を輸送し、15分でおよそ80キロの距離を移動することを計画している。この新たな飛行機はヘリコプターに近いが、騒音や排気はなく、飛行距離も長い。
当然だが、Uberは難しい問題を抱えている。特に、同社の取り組みをサポートするテクノロジーが現存しないことが一番だ。それだけではなく、インフラ、運用コスト、必要な許認可、空域の使用方法、全般的な安全性など、直面する困難は多種多様だ。
だが、同社は独力で対処することは考えておらず、メーカーや規制機関を巻き込むつもりだ。同社は、近い将来、オンデマンド型の航空機を実現するために、イノベーションを起こそうとしている。このようなシステムの導入を野心的過ぎると感じる人もいるが、Uberは成功を確信している。
本当に空飛ぶ車といえるか
Elevate戦略のホワイトペーパーでは、実際のところ「空飛ぶ車」という言葉はどこにも出てこない。同社が提唱するのは、ドローンに似たVTOL機だ。VTOL機には分散型電動推進(DEP)テクノロジーが導入され、騒音や機体性能のような課題を克服している。さらに操縦ミスをなくし、交通量の多い都市部でも安全な空飛ぶタクシーの運用を可能にする自律飛行システムを採用している。
VTOLとDEPというテクノロジーは、開発者が最近こぞって利用しており、多くは既に初期の試作品段階まで進んでいる。Liliumの「The Lilium Jet」、Vahanaの「Air A3」、Joby Aviationの「Joby S2」などの電動VTOLテクノロジーエコシステムの出現は、反対意見を少しは和らげるかもしれない。
高額になるのでは
結論から言えば、イエスだ。Uberはパートナーと共同で、VTOL機を安全かつ効率的に、しかも手ごろな価格で運用する方法を探っている。さらに、同社はドバイ道路交通局(Road and Transport Authority)の協力も得て、交通量を最適化し、最適な価格モデルを設定する方法についての研究も行っている。
同社は、物事を開始(この場合は飛行)するのにコストがかかることは認めている。だが、地上車両で実証したライドシェアモデルと同様に、空飛ぶタクシーの運賃が最初は高額でも、いずれ下がるだろうと予測している。ライドシェアリングサービスが始まったら、その結果生まれる「肯定的フィードバックの循環」が運用コストの削減を促し、乗客が支払う空飛ぶタクシーの運賃も安くなると同社は考えている。
また、Elevateプロジェクトでは、従来の道路インフラと比べて、VTOLネットワークのコスト効率は潜在的に高いと捉えている。VTOLネットワークには、道路、橋、線路、駐車施設、安全地帯などは不要だとUberは主張する。
プロジェクトでは、駐車場ビルの屋上、ヘリポート、使用されていない不動産の屋上や土地などを、VTOL機用飛行場として使うアイデアを掲げている。地点AからBへの移動に道路や線路などは全く必要ない。
騒音問題への懸念
航空業界の大きな懸念はいつも騒音にある。航空機もヘリコプターも本質的に非常に大きな音を発する。空港近隣地域は、絶え間なく続く騒音が原因で資産価値が低いのが一般的だ。飛行機が生み出す空の騒音が100倍になるという見込みは、恐ろしいと受け取られるかもしれない。
幸いなことに、DEPは騒音の緩衝にも役立つと考えられる。Uberが計画する空飛ぶタクシーに最も近い機体はヘリコプターだが、その最大の問題は大きな回転音を発するローターの設計にある。DEPは、騒音を大幅に取り除きながらも機体の効率を増すという、新たな設計の検討を可能にする。
1つの目標は、最低巡航高度を約150メートルに設定することだ。そうすれば、その音量は、現在市場で一番小さい4人乗りヘリコプターが発する騒音の約4分の1になる。だが、多数の航空機が空を飛びまわることを考えると、騒音対策としてこれだけでは不十分かもしれない。
幸い、米国連邦航空局(FAA)が制定した音の「不快さ」を測定する方法が既にある。これを活用すれば、飛行機やVTOL機用飛行場を分析して、「運用時に許容可能な騒音レベル」を調整できる。
さらに、UberはSiemensとチームを組んで、電気エンジンと燃焼エンジンの騒音試験も実施している。Siemensは最近電気飛行機を公開した。同機は、燃焼エンジンに比べて圧倒的に騒音が少ないだけでなく、時速340キロでの飛行を実現して、バッテリー式航空機の世界最速記録を塗り替えた。
安全か
新たな航空機を運用するには、機体の設計標準、メンテナンス、操縦ライセンス、管轄区域間での飛行に関する規制を確立しなければならない。当然のことだが、地上からはるかに高い空域で同時に数多くの航空機を飛ばすなら、操縦ミスをほぼ0%にする必要がある。操縦ミスをなくす唯一の方法は、操縦者が不要になることだ。
繰り返しになるが、Elevate戦略の重要な要素の1つは自動操縦テクノロジーだ。Teslaが段階的に自動運転テクノロジーを開発しているのと同様に、VTOLの自動操縦技術も時間と共にその重要性が増していくだろう。だが、都市部の空域は車が走行する地上と比べて開かれていて妨げとなるものがないため、自動操縦技術の開発プロセスは迅速に進むと考えられる。
都市部の空域について、Uberは既存の航空管制(ATC)システムで数百機の飛行機を管理できるという。だが、同社が意図するような高い頻度で運用するにはATCシステムを大幅に拡張し、さらには新しいシステムを実装することも必要になる。
問題は、空が過密状態になることだけではない。悪天候など、航空機の運行を不規則に妨げる要因が数多く存在する。Uberの価値提案が「時間の節約」であることを考えると、こうした課題を十分検討する必要がある。
実現は可能か
Uberは、全ての重要な要素を解決して、早ければ2023年に空飛ぶタクシーの運用開始を計画している。
大規模なVTOLネットワーク、つまり「空飛ぶ車」が日常生活の一部になったら、驚くべき結果が生まれるだろう。結局のところ、Elevateの大きな目的は地上の混雑を解消することにある。そうすれば、大気汚染、環境ストレス、交通事故が減り、血圧が下がり、うまくいけば自動車保険の保険料も下がるかもしれない。それ以外にも、さまざまな効果が生まれるだろう。その中には、喜ばしい効果もあれば、残念な効果もあるに違いない。
1950年代に最盛期を迎えた未来主義は、希望にあふれた空想的な楽観論だった。だが、それとは異なり、Uberは空飛ぶ車の実現に関して非常に綿密な計画を立てている。
次のステップは、規制当局、市区町村の役人、設計家、ネットワーク事業者など、さまざまなキープレイヤーを参画させることだ。確かに、これは活気と可能性に満ちたプロジェクトであり、自動走行車とともに、市場に大変革をもたらすだろう。だが、今のところ、全ては未知数だ。
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