鍵は裏にいる人間
「拡張知能」と「人工知能」 2つのAIはどこが違うのか
『ターミネーター』から『アイ,ロボット』『チャッピー』『エクス・マキナ』まで、映画の描く未来では人工知能が人間の日常生活に浸透している。だが現実はまだ、そこまで進歩していない。
企業にとって、人工知能(Artificial Intelligence)が競争や仕事の獲得、売り上げ増加にもたらすメリットは計り知れず、人工知能を導入したと言いたがるのも無理はない。一般消費者が(そして一部のIT関係者も)高度なソフトウェアの登場を見て映画のような未来がいよいよ始まると思い、それを「人工知能」と呼びたくなるのも当然だろう。
だが実のところ、本当の人工知能はまだ実現していない。人工知能市場の規模は2017年だけで30億ドルになると予想されているが、真の人工知能はこの先少なくとも10年は登場しそうにない。では、今「人工知能」や「AI」と呼ばれてブームになっている高度なアルゴリズムやテクノロジーは何なのか。それは本来、拡張知能(Augmented Intelligence)と呼ぶべきものだ。
拡張知能とは
拡張知能は一見、人工知能に似ているが、両者の間には大きな違いがある。それは裏で糸を引いている人間の存在だ。拡張知能のプログラムは、プログラマーが決めたシナリオどおりに動作し、学習する。まるで人間のように動いたり反応したりする機械も、全ては人間が入力した情報に従っている。例えば、ソフトウェア開発者は「この場合はこうしろ」というシナリオを入力し、機械が実行すべき反応をあらかじめ作成しておく。高度な機械学習機能でも、学習のロジックと推論は開発者があらかじめ入力したものだ。いつ、どんな場合に、どのように反応するかという条件を人間が常に決めている。そこが人工知能と違うところだ。
人工知能の条件とは
では、人工知能はどのようなものかというと、通常なら人間の知能と理性を必要とする仕事を機械で代行する技術のことだ。現在のロボットでもさまざまな仕事を代行できるが、本当の人工知能と呼ぶには、知識を超えた理性や論理を形成する道徳性や倫理性を備える必要がある。
まず、本当の人工知能が備える道徳性とは、状況や状態、場所などに応じて善悪を判断する能力だ。例えば、自動運転車は人の命の危険がかかわる状況に遭遇した場合、即座に判断できなければならない。その場のさまざまな条件に基づく判断には、その結果がもたらす生死も関係してくる。
次に、本当の人工知能が持つ倫理性とは、行動を統制し、体験から学習して独自の規律を持つ能力だ。こうした規律は人間によって導かれながらも、人工知能が自律的に課し、自律的に制御する。例えば、捜索救助用のドローンは、生命に影響のない重要な仕事を遂行するために誰かのプライバシーや財産を侵害してもよいのかどうか。また、ドローンがプライバシーを侵害しても誰にも分からないという場合はどうなのか。
「この場合はこうする」といった基礎的な論理は機械にプログラムすることができるが、真の論理は、機械の行動原理を左右する道徳性や倫理性と深く絡み合っている。それは人間がそれぞれの人生を通して学習し身に付けるものであり、幾世代も前から受け継がれ、何千年もの歴史によって築かれてきたものだ。本当の人工知能を実現するには、機械やボットが自分で「考える」ようになり、人間の基本的な本能と理性に匹敵するだけの条件を満たさなければならない。さらには時間と経験に応じてそうした道徳性や倫理性を変更し、状況によってはこれに反する動作も実行できなければならない。そしていつか本当に機械が人間と同じように行動し、あらかじめプログラムされた倫理に背くことすらできるようになったら、その行動や結果は制限不可能だろう。
本当の人工知能の時代はいつ到来するのか
業界は新しい技術を人工知能として大きく宣伝しているが、本物の人工知能はまだ1つも誕生していない。あたかも人工知能であるかのように見える拡張知能の例は幾つかあった。報道によれば、Facebookは実験的なAIボットが独自の言語を作って互いに会話を始めたためこれを停止したという。だが、こうしたボットの背後にも必ず、それを操る人間が存在している。映画が描く未来のように、ロボットが自分で考え、日常的に人間と共存する日はまだ遠い先のことになりそうだ。それにしても、いつか真の人工知能が誕生したとき、人間はそれをコントロールできるのだろうか。
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