スマートウォッチと混同するなかれ
血糖値センサーや心電図モニターがウェアラブルになる未来はすぐそこ
「Apple Watch」や「Fitbit」など、ヘルスケア目的で利用するウェアラブルデバイスからのデータは、臨床現場では価値がないと専門家は言う。ただし、医療専用のウェアラブルデバイスは確かに進化している。
「Apple Watch」や「Fitbit」などのウェアラブルデバイスは、至る所で人々の活動、心拍、睡眠パターンなどを追跡しているように見える。だが、こうしたデータは臨床現場ではほとんど評価されない。ボストンで開催された「2017 Connected Health Conference」でこう述べたのは、医療機関Ochsner Health Systemでチーフクリニカルトランスフォーメーションオフィサーを務めるリチャード・ミラニ氏だ。ミラニ氏によると、医療ウェアラブルデバイスが血糖値を測定したり、心房細動などの健康状態を検出したりできるようになれば、臨床現場でも役に立つという。
本稿では、どうすれば医療ウェアラブルデバイスが診療現場に価値を提供できるようになるのか、そしてウェアラブルデバイスにはどのような課題があるかについてミラニ氏に質問した。
――臨床現場で医療ウェアラブルデバイスの効果が期待できるユースケースにはどのようなものがあるでしょうか。
リチャード・ミラニ氏 現状、ウェアラブルデバイスから収集できるデータはごく限られている。しかし実現が近い技術の中には、非常に期待できるものがある。例えば血糖値の測定だ。血糖値の測定が現状、ウェアラブルデバイスで対応できないのは確かだ。それは、身体に小さな針を刺す必要があるためだ。こうした(侵襲的な)方法では長時間計測し続けることはできない。しかし、今では技術の向上によって、計測可能な時間が延び続けている。最終的には、身体に針を刺さなくても血糖値を測定できるようになるだろう。そうなればウェアラブルデバイスとして利用できるようになる。これが最も期待できる技術だろう。
臨床では当然、活動中のデータを得ることになる。ここではウェアラブルデバイスが重要な役割を果たす。こうしたデバイスは睡眠中のデータを記録できるものが多い。ただ、十分な正確性を得られないため、あまり信頼できない。デバイスからは、活動中のデータ、歩数データ、座っていた時間などの情報を取得できる。ただし医療機関に「こうしたデータは役に立つか」と聞けば、ほとんどは「いいえ、全く」という答えが返ってくるだろう。
ウェアラブルデバイスで血糖値を長時間連続的に測定できるようになれば、非常に価値あるデータになる。本当に価値あるデータが得られれば、ウェアラブルデバイスは根本的に変化するだろう。今では、心房細動はウェアラブルデバイスを利用して検出できるようになっている。これは比較的新しい技術で、非常に重要な存在になるのは明らかだ。恐らく、いま影響力を持つ標準のウェアラブルデバイスとしては最大の躍進といえる。
――現在の臨床現場で医療ウェアラブルデバイスが直面している課題にはどのようなものがあるでしょうか。
ミラニ氏 ウェアラブルデバイスは将来重要になる要素の1つだ。だが、人が求めているのは情報だ。必要なのは、最も安価で最も抵抗なく収集できる高品質な情報だ。(こうした情報を提供するのは)必ずしもウェアラブルデバイスとは限らない。例えば私は、メールでの質問や電話での会話から、患者がうつ病かどうかを高い確度で診断できる。同様に、電話の会話内容から認知症かどうかも診断できる。情報を得るために、必ずしも患者に何かを装着してもらわなくても構わない。メールや電話でのやりとりは、大量のデータを入手し、治療方法を計画できる、非常にコストの低い医療介入になる。
もう1つの課題は、医療介入の方法を問わず、その有効性を証明しなければならないことだ。つまり、医療介入によって何らかの情報を得ることができれば十分ではあるのだが、その方法は別の方法よりもコストが低くなければならない。そのために、多くの証明作業が必要になる。医療関係者は、治療費総額はいくらになるか、その治療費は適正か、誰が支払うかといったことを検討するためにいろいろと苦労している。
いずれも変化しやすい課題だ。だが、ある疾患に適用できると思われる特定の治療計画だけでなく、医療機関を訪れる患者全員に効果がある治療計画を提示する責任がある。コストをかけずに、最善の成果を生み出し、当院のシステムの新たな利用者に最も抵抗のない治療を提供するためには、こうした検討事項が必要になる。当院のシステムは90歳代の利用者も多いが、必ずしもウェアラブルデバイスを着用しているわけではない。それでも情報は得なければならない。
最後に、デバイスの面からウェアラブルデバイスを見てみよう。この観点から見たウェアブルデバイスの将来は明るい。だが、現状では、幅広い人々が利用できるデバイスはまだ少ないとしても、情報を入手できる別のメカニズムも存在する。
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