ARは「IoTからの贈り物」
「ARって仕事に役立つの?」に対する3つのさえた答え
臨時職員に短期間で一人前のスキルを習得させるのは容易ではないが、仮想現実(AR)があれば話は別だ。初心者からベテランまであらゆる従業員が、ARを使うと業務効率化につながる3つの理由を解説する。
毎年のことだが、世界中の小売業者や物流業者が、消費者の需要のピークに合わせて倉庫業務やマテリアルハンドリングを強化するため、季節労働者を雇用する。年間ベースでは、ほとんどの倉庫業者や小売物流業者の年末年始にかけての作業員数は2倍から3倍になる。例えば、Amazon.comは2017年に12万人という途方もない数の季節労働者を同社配送センターで雇用している。
毎年戻ってくる季節労働者を対象にする場合でさえ、トレーニングにはコストも時間もかかる。その上、できる限り迅速にトレーニングを完了しなければならない。ピーク期間の標準は90日間だ。その中の2週間以上が臨時職員のトレーニングやスキルアップに費やされる。その間は、授業形式のトレーニングやeラーニングに加え、実地体験もある程度提供する。その結果、臨時職員は複雑な仕事を最適な形で完了し、標準手順に従うことができるようになる。昨今の倉庫環境では、このようなトレーニングの構成はほとんど変わらない。倉庫の作業員に求められるのは特定の仕事を理解することだけではない。リアルタイムに注文が入るため、作業ペースや手順の変化に合わせた迅速かつ柔軟な対応も求められる。そこで有用なのが、スマートグラスを拡張現実(AR)形式で利用するモノのインターネット(IoT)である。
季節雇用や長期雇用の作業員はスマートグラスでARテクノロジーを利用する。このARテクノロジーにより作業員は、表示情報、ドキュメント、動画、ステップ・バイ・ステップガイダンスにリアルタイムにアクセスできる。その結果、作業員は自分の仕事を効率的かつ正確に実行できるようになる。さらに、授業形式のトレーニング時間が短縮され、ストレスも少なくなるだろう。
スマートグラスを通じてARの価値を提供する上で不可欠なことがある。それは、さまざまな企業システム、IoTデバイス、データリポジトリ、コンポーネントを結び付けて、1つのARプラットフォームにまとめることだ。そうすれば、倉庫内の作業員、データ、機械がシームレスに統合される。
企業は2017年最後のひと頑張りを終えて、2018年の欲しいものリストをまとめているところだろう。本稿では、ARが役立つ可能性のある3つの分野を紹介する。
1.新人研修や実地トレーニング時間の短縮
ARがあれば、印刷マニュアルをデジタル化できる。デジタル化すれば、動画などの視覚的素材を記録できる。一連の指示をシンプルな個別の手順に細分化し、仕事を遂行している作業員のスマートグラスに表示することが可能だ。これにより、作業員は実際に仕事をしながら学習もできる。複雑なプロセスの理解が深まり、適切に業務を実行できるようになる。視野内に情報を表示することで、状況に応じて指示が与えられるため、認知のための負荷が軽減する。この方法は無線通話や音声を主体とするテクノロジーよりもはるかに効率的で、印刷物ベースのプロセスが大幅に減るだろう。
2.知識伝達の効率向上
学習時間を短縮するために、熟練作業者は各自のスマートグラスを使用して動画を録画できる。その結果、熟練作業者の普段の知識や業務特有の知識を記録することにつながる。新人、臨時職員、経験の少ない作業員などは、こうした動画を見ることでベストプラクティスを適切に理解できるようになるだろう。状況に応じたヒントやコツも会得できる。こうした動画は作業員が仕事をしながらリアルタイムに確認できる。そのため、臨時職員がより短時間で問題を解決し、ミスを減らせるようになる。
3.リアルタイムコラボレーション
コミュニケーションシステムやコラボレーションシステムもスマートグラスに導入できる。こうしたシステムを利用すれば、作業者はすぐに同僚や監督者に接続して、各自が見ている対象をそのまま動画でストリーミングすることが可能だ。例えば、倉庫作業員は品物をスマートグラスのカメラの高さに掲げることで瑕疵(かし)を記録できるだろう。記録した情報を倉庫のOSと統合すれば、システムが最新状態に保たれ、複合エラーの発生を回避できる。さらに、監督者に向けたビデオ通話が可能なため、作業員は問題を即座にエスカレーションして解決につなげることが可能だ。必要に応じて監督者から作業員に連絡したり、作業現場にいるチームとビデオ会議を実施したりすることも可能となる。
これらの機能は、あらゆるスキルレベルやあらゆる分野の作業員が必要とする倉庫での用途を既にサポートしている。具体的な用途には、受け取り、発送、ピッキング、梱包(こんぽう)、キッティングなどから、循環棚卸や品質管理まで含む。例えば、製品の組み立てやカスタマイズ業務をするキッティング作業中の作業員に対して、必要なものが入った収納箱の位置を示すビジュアル図をAR経由で提供できる。これによりミスを最小限に抑えることが可能だ。作業員が、指示書や扱いにくい携帯デバイスを定期的に確認する必要もなくなる。
同様に、ピッキング作業中の作業員もスマートグラスを介して最新情報をリアルタイムに受け取ることができる。その結果、収集対象の品物が見つかる通路、区画、収納箱への道筋について即座に指示を受け取ることができる。視野範囲内の状況の中にこの情報が直接表示されるため、作業員はより素早く注文品の場所を見つけ、識別して、選定できる。GE Healthcareでは、同社の医療機器製造工場におけるピッキングプロセスに、スマートグラスを使ったARを採用している。その結果、素晴らしい成果が挙がっている。ARテクノロジーを初めて使用した作業員は、以前のシステムよりも46%早く収集リストの指示を遂行できたという。以前のシステムでは印刷された指示書を使用していた。
スキルレベルや在職期間を問わず、あらゆる現場作業員のスキルを向上させ、変化を促す力がARにはある。ARはいつまでも効果が持続する「IoTからの贈り物」なのだ。ARテクノロジーを利用すると、任意の数の企業システムから提供される多くの情報やデータが統合され、それがワークフローのコンテキストの中で作業員に提示される。それに伴い、作業員とその周囲の機械やプロセスとのつながりもより密になる。これにより、さまざまなユースケースで生産性が向上する。だがそれだけではない。職場の安全性が高まり、品質保証が改善し、稼働時間が伸びて、コストまで削減する。2018年に効率性を高めることを考えているのなら、いますぐARを「欲しいものリスト」に追加したとしても早過ぎることはない。
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