AWS「スポットインスタンス」と比較
GCPを割引価格で利用できる「プリエンプティブVM」の条件とは
Googleは割引料金のプリエンプティブ仮想マシンで余剰のコンピューティングリソースを提供する。ただし、これはいつシャットダウンされか分からないため、利用するアプリケーションの選定には注意が必要だ。
パブリッククラウドベンダー各社は新しい料金体系や低価格のサービスを次々と打ち出しているが、本稼働のワークロードに利用するには事前にその内容をよく理解しておく必要がある。
Googleが割引料金で提供する「プリエンプティブ仮想マシン」(以下、プリエンプティブVM)は、「Google Compute Engine」(GCE)の通常のインスタンスと同じだが、他のワークロードにコンピューティングリソースが必要になると、Googleによっていつでもシャットダウンされるという違いがある。ユーザーは、GCEの余剰リソースを使うために割引料金で利用できる。
GCEの通常のインスタンス同様、プリエンプティブVMも固定料金で利用でき、1時間0.01ドルから使える。CPU数1~96個から選べる各種GCEインスタンスにオンデマンドでプリエンプティブVMを利用すると、最大で80%近い割引になる。有効期間を予測できないため、Googleの確約利用割引や継続利用割引の対象にはならない。
プリエンプティブVMの仕組み
プリエンプティブVMはいつでも終了される可能性があるが、終了30秒前の通知がある。全てのプリエンプティブVMは24時間実行した後には必ず終了する。
Googleのドキュメントによると、プリエンプト処理の流れは次のようになる。
- GCEは容量が必要になると、どのOSでも処理可能な標準マザーボードシャットダウンコマンド「ACPI(Advanced Configuration and Power Interface) G2ソフトオフ信号」の形式でシステムのリブートが必要であることを通知する。
- このソフトオフ信号を受けたら、ユーザーが事前に設定しておいたシャットダウンスクリプトを起動することが望ましい。このスクリプトでシステム状態とアプリケーションデータを保存し、プロセスを終わらせ、VMを終了する。
- 30秒後もまだインスタンスが終了していない場合、GCEはACPI G3メカニカルオフ信号をOSに送信する。これで電源を抜くのと同じ状態になる。
- GCEインスタンスは終了状態になり、構成設定やメタデータ、アタッチメント、ストレージボリュームなどのリソースは維持されるが、インメモリデータとVMステートは破棄される。ユーザーは終了状態のインスタンスを再起動または削除するか、終了状態のままにすることができる。
Googleのドキュメントには、プロセスを正常に終了させるシャットダウンスクリプトのサンプルが含まれている。手動でインスタンスを終了してプリエンプトをシミュレートすれば、シャットダウンスクリプトを試すことができる。
ダウンタイム条件はないため、終了直後にインスタンスの再起動を試行することができる。インスタンスがプリエンプトされたからといって、「Google Cloud Platform」(GCP)領域の容量が不足しているとは限らない。Googleのインフラストラクチャと、ワークロードの動的な組み合わせにより、別のところで容量が瞬時に解放される可能性もある。ただしプリエンプティブVMは可用性が保証されず、GCEの「サービスレベル保証」(SLA)の対象にならない。
クラスタでの使用
プリエンプティブVMは、データベースなど従来型のビジネスアプリケーションには適さないが、複数マシンのクラスタで実行する耐障害性の高い分散システムには適している。
GCPでクラスタを自動作成するには、マネージドインスタンスグループを使う方法とコンテナクラスタマネジャーを使う方法がある。それぞれでプリエンプティブVMを使用すると次のようになる。
マネージドインスタンスグループの場合
インスタンスグループは自動スケーリングするVMの集合であり、テンプレートを使って一元的に管理・設定できる。管理者はインスタンステンプレートを使ってインスタンスグループにプリエンプティブVMの使用を設定でき、自動スケーリングで維持するアクティブインスタンスのターゲットサイズも指定できる。インスタンスが強制終了されても、ターゲットサイズを維持するために自動的にインスタンスの再作成を試行するので、プリエンプティブVMの利用を大幅に簡素化できる。容量の自動管理と組み合わせて安価なプリエンプティブVMを利用できるメリットがある。
コンテナクラスタマネジャーの場合
「Kubernetes Engine」とそれが実行するコンテナクラスタも、プリエンプティブVMの利用に適している。インスタンスグループの場合と同様、コンテナマネジャーも自動的にVMを作成する。さらに標準のVMとプリエンプティブVMが混在するクラスタも作成できる。Kubernetesのノードテイントのパラメーターを使えば、可用性とパフォーマンスの保証を必要としない特定のワークロードポッドのみをプリエンプティブノードに配分できる。
ワークロードの例
プリエンプティブVMは一般に分散システムに適しているが、ノードロスに対応可能な次のようなアプリケーションやシナリオにも向いている。
- 大量の写真や生成画像のプロセスを実行するイメージングやレンダリングのワークロード。例えば、アニメーション制作会社Moonbot Studiosは、レンダーノードをオンプレミスとGCPの両方で運用しており、急激な必要性増加に対応するためにプリエンプティブVMを利用している
- ノードロスに耐性のある並列アルゴリズムを使った科学や統計のシミュレーション。Northeastern Universityによる伝染病の感染シミュレーションモデルなど
- 分散クラスタで一括実行される機械学習や深層学習のモデルトレーニング。Googleが「NVIDIA Tesla」の「K80」や「P100」などのGPUのサポートを開始したことで、プリエンプティブVMを人工知能(AI)モデリングにも利用可能になった
これ以外にも、「Google Cloud Storage」のチェックポイントファイルに保存された状態を使って再起動できるアプリケーションなら、プリエンプティブVMを利用可能だ。
プリエンプティブVMとスポットインスタンス
「Amazon Web Services」(AWS)の「スポットインスタンス」も、予期しないタイミングで終了する可能性がある点でプリエンプティブVMと似ている。ただし、スポットインスタンスは需要に応じて料金が変動するのに対し、GoogleのプリエンプティブVMは固定料金で費用を予測できるという利点がある。
AWSのスポットインスタンスは「スポットブロック」(継続期間)という方法で費用の予測可能性を提供する。この場合、1~6時間の範囲で指定した継続期間が終わるまでは、料金が変動してもインスタンスは終了しない。チェックポイントから簡単に再起動できない長時間実行のアプリケーションにはこちらが適しているだろう。
いずれにしてもクラウドベンダーは柔軟なシステム容量管理を可能にする価格戦略を提供している。それをどのように利用するかはIT担当者次第だ。
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