ポイントは“核”となるサービスを決めること
乱立するコミュニケーション基盤 どうすれば1つに統合できるのか?
チームコラボレーションサービスでは、メッセージングを1つのコミュニケーション基盤に統合する戦略を採用する企業が増えている。IT部門とエンドユーザーのコミュニケーションを円滑にすることが目的だ。
土木建設会社Structural Groupは、ある時期、Slack Technologiesの「Slack」やMicrosoftの「Yammer」などのコラボレーションサービスを複数使用していた。同社は多種多様なシステムを利用していたこともあり、同僚を探して連絡を取るITの手段が一元化されていなかったのだ。
当時は、こうしたツールの多様性が問題になるとはそれほど考えられていなかった。だが、約6年前の2012年に同社はUCaaS(Unified Communications as a Service)に重点を置いた取り組みを始め、主要ベンダーにRingCentralを選んだ。同社は企業向けコラボレーションサービスを提供している。
併せて読みたいお勧め記事
コラボレーションツールの筆頭である「Slack」「Teams」
- 「Slack」「Teams」、本当に便利なチームコラボツールの選び方
- 電話よりも「Slack」、チームコラボレーションの主役交代はもう間近
- Slack vs. Microsoft Teamsだけではない、コラボツール戦争の次の注目はAI活用
コラボレーションツールの今後は?
Structural Groupは自社のコラボレーションサービスを1つのコミュニケーション基盤に統合した。同社は、全世界に約3500人の従業員を擁しているが、その全従業員に関するコミュニケーションの場を新しい基盤へと移行し始めた。
このコラボレーションサービスはStructural Groupにとって不可欠なツールになっていると話すのは、同社で最高情報責任者(CIO)を務めるジェイソン・カシュ氏だ。同社はそのほとんどがRingCentralのユーザーだが、Microsoftのグループウェアである「Office 365」も一部使用している。
1つのコミュニケーション基盤への統合
ここ数年、エンドユーザーが無料のコラボレーションサービスをダウンロードし、IT部門の承認も受けずに使用を開始する状況が増えている。その結果、多様なコラボレーションツールが企業にあふれることになる。そのため、自社で使うコラボレーションサービスを1つのコミュニケーション基盤に統合しようとするIT部門の動きが始まっている。実際、音声や動画、チームコラボレーションや会議にそれぞれ異なるベンダーを利用する企業は減っている。
調査会社Nemertes Researchのアーウィン・レイザー氏(ユニファイドコミュニケーションアナリスト)は「問題発生時の問い合わせ先をできるだけ1つにまとめたい、と企業は考えている」と話す。
だが、依然として多様なサービスを使用している企業は残っているとレイザー氏は付け加える。音声と動画にはCisco Systemsの「Cisco Spark」、メールにはMicrosoftとGoogleのメールサービス、ドキュメント共有にはBoxが提供する同名のファイル共有サービスといった具合だ。さらに、Microsoft「Skype for Business」のユーザーの中には、Web会議用にZoom Video Communicationsの「Zoom」やFuzeが提供する同名サービスを選ぶユーザーもいる。
既存のシステムが導入サービスを決める
2018年3月中旬、ユニファイドコミュニケーションに関するカンファレンス「Enterprise Connect 2018」でIT部門の責任者らが自社のコラボレーションサービス戦略について情報共有した。各企業は、コラボレーションサービスの導入について、異なるアプローチを取っている。だが、大部分のIT部門はエンドユーザーと密接に連携し、コミュニケーション基盤の導入前にフィードバックを集めているようだ。とはいえ、企業の既存環境が導入戦略を左右することは多い。
例えば、世界的なコンサルティング企業Mott MacDonaldはMicrosoftと密接に連携している。コラボレーションサービス導入で、同社はMicrosoftを選んだ。現在はSkype for Businessをオンプレミスで運用しているが、クラウドへの移行を検討中だ。クラウド移行後は「Skype for Business Online」と「Microsoft Teams」を利用する予定だという。
電気通信事業会社Charter Communicationsは、通信サービス会社のTime Warner CableとBright House Networksを買収した。この買収によって、複数の異なるコミュニケーション基盤が混在する事態になった。だが、同社はCisco Systemsのビデオ会議システムを中心に利用していた。その結果、同社はCisco Spark環境を選んだと、IT担当者リチャード・バッグビー氏は述べる。
また、Charter Communicationsは10万人近い従業員を擁する。そのため、エンドユーザーからの意見には制限を設け、同社のコラボレーションサービスの導入はIT部門が主導した。
「当社ユーザーへの導入はシンプルだった。今後はこのツールを使用するように指示しただけだ」(バッグビー氏)
1つにまとめる
メディア企業21st Century FoxでCIO(最高情報責任者)を務めるジョン・ハーバート氏によると、同社では以前、使用するコラボレーションサービスが細分化され、それがコミュニケーションの問題を生み出していたという。同社でコラボレーションサービスを利用するユーザーは90カ国、約2万5000人に及ぶ。同社はSlackを中心として、ビデオ会議にはZoom、文書管理などにはOffice 365アプリを利用するという形にした。
21st Century FoxがSlackをコミュニケーション基盤にする取り組みを始めると、一連の業務処理(ワークフロー)の一貫性と生産性が即座に向上したとハーバート氏は話す。この導入を後押ししたのは、同社従業員のSlack利用率の高さだという。
「当社はSlackに本腰を入れている。全従業員が1人ずつアカウントを持っている。本気で取り組めば、その熱意はウイルスのように企業全体に広がる」(ハーバート氏)
米ラスベガス市では、3500人の職員の間でコラボレーションサービスやデバイスの細分化を許容している。だが、同市のテクノロジー部門のディレクターを務めるマイケル・シェアウッド氏によると、まとまりのある1つのコミュニケーション基盤の方が好ましいという。
ラスベガス市は従来のPBX(企業内電話交換機)システムからVoIP(Voice over IP:音声をネットワークで伝送する技術)システムに移行したばかりで、Cisco SystemsとMicrosoftの環境が混在している。同市には多様なユーザーグループがある。コミュニケーションのために職員が使用するツールや、そうしたサービスの導入方法を特定する必要がある。
「いずれはコミュニケーション基盤が1つだけの理想的環境を実現できればと考えている。メンテナンスの点から見て、そのような環境になれば大きな進歩だろう」(シェアウッド氏)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社MatrixFlow] 「物流リソース最適化」ガイド:人員・配車・傭車を出庫依頼の確定前に決めきる -
製品資料
[株式会社キーエンス] なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは -
製品資料
[株式会社セールスフォース・ジャパン] 「CRMは設計と無関係」は本当か? PLMとの融合で実現する高速開発 -
事例
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] AIエージェントの時代にどう備える? 「新たな働き手」を支える3要素とは -
製品資料
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] “横並びの自動化”から脱却、AI活用で生産性と競争力を高める秘訣
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
2
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
3
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
4
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
5
情シスの約8割が転職や退職を意識 調査で分かった“辞めたくなる最大の理由”
-
6
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
7
情報漏えいはなぜ繰り返されるのか 今すぐ見直すべき「境界」
-
8
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
9
「結局使わなくなる」Microsoft 365 Copilotを半年で定着 キリンの3施策
-
10
「中堅・中小企業のネットワーク・セキュリティ運用実態」に関するアンケート
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
4
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
5
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
6
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
7
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
8
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
9
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー