コモディティ化を促す3つの要因
急速に低価格化するオールフラッシュストレージ、その背景には何があるのか?(2/4 ページ)
ターゲットとなり得る市場全体の縮小
パブリッククラウドは2008年ごろに登場し、中堅・中小企業の市場に最も大きな影響を与えた。新規企業が自前のデータセンターを所有することは、めったにない。パブリッククラウドでITを運用すれば初期設定が簡単になり、これまでのように高額な先行投資コストも削減される。また、あらかじめパッケージ化されたSaaS(Software as a Service)を企業で活用できるようになる。加えて、IaaS(Infrastructure as a Service)やPaaS(Platform as a Service)などの「as a Service」製品も利用できる。
企業はクラウドでITを運用することで、社内にストレージ設備やAFAを用意しなくてもよくなる。クラウドでのIT運用は設備投資が運用投資へと変わるため、長期的にはコストが上昇する。しかし、複数のデータセンターを所有し、運用する必要もなくなる。中堅・中小企業にとっては非常に魅力的だ。多数の企業がより多くのアプリケーションをパブリッククラウドに移している。その結果、AFAのターゲットになり得る市場全体が縮小している。
激化する直接的競争
他のストレージ製品で過去にあった競争と比べ、AFAでは直接的競争がかなり増えている。それはなぜなのだろう。その多くは、基礎となるストレージテクノロジーの大幅な改革(イノベーション)によるものだ。
ハイエンドのストレージシステムは一般的にエンタープライズや中堅・中小企業用に分類される。かつて、これらのストレージシステムと、それに対応する大衆市場向け、つまりローエンドのストレージシステムとの間には全ての面で大きな差があった。ローエンドシステムが、パフォーマンス、信頼性、拡張性(スケーラビリティ)、機能性、データ保護の点でハイエンドシステムに匹敵することはなかった。その一因として、ハイエンドシステムは多くの場合、ASIC(特定用途に特化した半導体集積回路)と、高度に設計、製造された複雑なハードウェアの仕組みを備えていた。それにより、ローエンドの追随を許さないパフォーマンスを実現していた。高いパフォーマンスは共有ストレージ環境で求められるのが一般的だ。その結果、価格にも大きな差ができ、ハイエンドシステムのコモディティ化を防いでいた。大容量もハイエンドシステムならではの要素だったためだ。
テクノロジーの大幅な進歩によってこれまでの常識も変わってきている。パフォーマンスや容量の差は縮まり、その差がなくなることさえある。ストレージに変革をもたらした最初の進歩は機能性を増した「Intel x86マイクロプロセッサ」(以下、x86)だった。「半導体の集積率は18カ月で2倍になる」というムーアの法則は鈍化しているかもしれないが、それでも止まってはいない。x86は高性能化を続けている。数年ごとに、トランジスタ数やコア数を増やし、電力低減やストレージ機能を強化している。最新のプロセッサにはXOR型など、複数のストレージ機能が組み込まれている。このようにCPUが急激に改善されることでASICの魅力は落ちている。その先行投資コストや継続的コストに比べると、メリットは存在しないか、あったとしてもわずかなものだ。その結果、最近のほとんどのストレージシステムでは、x86のストレージコントローラーを標準として採用するようになっている。
x86を使ったシステム構成では基本的な既製ツールが多数付属している。そのため、より高速かつ安価にソフトウェア開発ができる。またこのシステム構成では、ストレージのソフトウェア処理(ストレージ管理スタックなど)をストレージシステムのハードウェアから分離することができる。この分離により、ストレージソフトウェアの開発をハードウェアから切り離せることになる。その結果、ソフトウェア定義ストレージ(SDS)という名目で新種の競合製品が実現している。SDSでは、ストレージ管理スタックを商用オフザシェルフ(COTS)サーバで実行できる。COTSサーバは特定の用途や環境に特化していない、一般的に商用として販売されているサーバのことだ。ソフトウェアを自由に使えるという意味で、ホワイトボックスハードウェアとも呼ばれる。
コモディティ化したハードウェアの登場が非常に大きな市場の転換点になっている。COTSサーバを利用できるようになり、以前のストレージシステムでは一般的だった、ハードウェアの高価格設定は見られなくなった。COTSサーバではない、エンタープライズ向けのストレージシステムでのHDDとSSDは、同等のドライブよりも10倍高額な価格設定が多かった。中堅・中小企業向けストレージのドライブは、サーバのものと比べてさらに6倍高額になることもあった。割引を全て適用した後でさえ、AFAのドライブが同一ドライブの価格に比べて3倍未満に抑えられるのはまれだ。また、保証後のこうしたドライブのメンテナンスコストはベンダーの高価な希望小売価格、つまり定価に基づく。割引後の価格ではない。
COTSサーバでSDSを実行することでストレージコストが大幅に削減できる。サーバベンダーはこうしたテクノロジーの変化を意識している。そこで、オールフラッシュ設計など、多くのドライブ向けに最適化される一連のサーバを開発している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
取手市がVDIと決別した理由 更改費用「4倍超」を約1.7倍に圧縮
-
2
「Excel至上主義」の終わらせ方 丸2日の手作業地獄から情シスと現場を救うには
-
3
221人調査で分かった「情シス最大のストレス」は?
-
4
AIで人を減らした企業がもう心変わり 「AIブーメラン現象」の実態
-
5
急増する「AIはこう言ってる」マン 判断を狂わせる「AI忖度」を防ぐには?
-
6
「Microsoft 365のセキュリティ運用」に関するアンケート
-
7
10年かけてBIを再構築したアマノの一手 「権限がない」「予算がない」でもDXは動かせる
-
8
LLMの「過学習」、正しく説明している文章はどれ?
-
9
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
10
「業務改善とツール活用」に関するアンケート
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
年収2000万「クラウドセキュリティのプロ」になれる資格とは
-
2
セキュリティソフトをすり抜ける標的型攻撃メール、不審メールの見破り方とは?
-
3
Windows Updateの通信集中で回線が逼迫、ネットワーク刷新事例に学ぶ解決策
-
4
財務を戦略的組織へ進化させるAI活用術、4つの主要な障壁と解消方法
-
5
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
6
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
7
標的型攻撃メールを見破るには? サンプル文面を例に傾向を解説
-
8
商用利用の安全性を確保し大量のコンテンツを高速で生成する、AI活用の秘訣
-
9
マンガで解説、1日で生成AI環境を構築できるワークショップの中身とは?
-
10
Dark AIが台頭する時代の新発想、「より高度なAIで対抗する」具体的方法とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー