HCISとHCIは何が違うのか【第1回】
HCIはなぜ誕生したのか 「統合」したからこそ起きた課題とその解決策とは(1/2 ページ)
HCIの導入を検討するとき、何を判断基準にすればよいか迷うことがある。その主な理由は「HCI」と「HCIS」の違いを理解できていないことだ。
一般的に「ハイパーコンバージドインフラ」(HCI)といえば、サーバとストレージなど仮想環境の構築に必要な機器をまとめた一体型製品を指す。実はHCIには、アプライアンスでの導入が前提となる製品と、ソフトウェア定義ストレージ(SDS)が前提となる製品の2種類があり、それぞれ特徴や用途が異なる。
前者は「ハイパーコンバージドインフラシステム」(HCIS)と呼ばれ、後者は狭義の意味でのHCIとなる。企業の目的に合わせて、具体的に導入を検討しようとすると、結局どちらのHCIを選べばよいか判断に困ることがある。
そこで本連載では、HCIとは何かをあらためて解説し、製品選定の指針を紹介する。第1回となる今回は、HCIの歴史を振り返りながら、狭義のHCIとHCISの違いについて解説しよう。
併せて読みたいお薦め記事
製品を“買わない”選択肢もあるHCI
- HCIアプライアンスではなく、あえて“自作”の意義とは? そのメリットとデメリット
- ゼロからHCIを構築するなら知っておきたい 押さえるべき8つのポイント
- ハイパーコンバージドインフラ(HCI)、3つの導入アプローチ その違いは?
「HCIは万能」と過信せず、正しく理解しよう
コンバージドインフラ(CI)の始まり
今までの企業のITインフラ管理は、情報システム部門に所属する複数のスタッフが担当し、システムの機能ごとに分担しているケースが多く見られた。つまりサーバ管理、ストレージ管理、ネットワーク管理で担当が分かれていて、それぞれが責任を持って自分の担当する機能を保守、運用しているイメージだ。
昔はこれで問題なかったが、サーバ仮想化技術が国内で普及し始めると、それぞれの責任範囲が重なる状況になった。サーバの仮想化によってシステムは複雑化し、自身の担当ではない領域についてもきちんと把握する必要が出てきた。
具体的には容量や性能の見積もり(サイジング)において、顕著にその問題が見られる。
複数のシステムが1つのインフラで動くため、サイジングの失敗が他システムに影響を及ぼす状況になった。サーバ管理者とストレージ管理者からすると、仮想化により運用の負担が重くなってしまった状況だ。
サーバ仮想化が国内で普及し始めたころの「サイジングの失敗」は「ストレージ設計の失敗」によるケースが少なくなかった。サーバ管理者はサーバの仮想化だけではなく、仮想化に最適なストレージについても学ぶ必要があった。ストレージ担当者は、これまでの物理環境と同じように「サーバ管理者から指示された通りのスペック」でストレージを用意しても、想定した処理性能を発揮できないことがあり、サーバ管理者の「仮想化ノウハウ」が集まるまで手探りでストレージを運用する必要があった。サーバ管理者とストレージ管理者にとって非常に負荷が高い状況だったといえる。
ITベンダーはそこに課題を見つけ、業界の主要ベンダーが手を取り合って「コンバージドインフラ」(CI)を作り上げた。CIは具体的な製品というよりも、ITインフラの管理者負担を楽にするための仕組みといえる。ベンダーやシステムインテグレーター(SIer)が、複数社のサーバとストレージ、ネットワークの推奨製品から組み合わせ、検証、サイジングの設計までを実施した。
CIが世の中に出て以降、情報システム部門の管理者は「このアプリケーションを動かすには、このスペックのCIシステムを選べばよい(提案を受ければよい)」といったノウハウをある程度蓄積し、RFP(提案依頼書)作成や運用に集中できる状況になっていった。
サーバ管理者とストレージ管理者は、CIのおかげで機器の組み合わせに頭を悩ますことがなくなった。利用したいアプリケーションが適切に動く、検証済みの構成を比較的容易に手に入れることができた。ただしサーバやストレージ、それらをつなぐファイバーチャネル(FC)はそのまま残ったため、バージョンアップ計画の大変さなど、ネットワーク管理者の運用面での複雑性は依然として残り続けた。
CIからHCIへ
2010年ごろ、進歩があまりなかったストレージテクノロジーにおいても、SSDという新しいテクノロジーが出現した。CI登場の影響もあり、サーバ管理者がストレージも一元的に管理する、といったことが少なくなかった。サーバ管理者は一度導入したCIシステムの移行(マイグレーション)に迫られ、HDDベースで構築したストレージのキャッシュにSSDを使い、全体的な性能を上げる、といったことを始めた。
そこに目をつけたベンダーがある。「HCISの雄」であるNutanixだ。
Nutanixは、Googleの「Google File System」(GFS)という一種のSDSと「Oracle Exadata Database Machine」(Exadata)という事前構成済みのデータベース専用製品の開発メンバーによって設立された。同社は「SSDでキャッシュができるのであれば、低速なHDDベースの専用ストレージを用いる必要はない」「GFSで培った技術があれば、普通のサーバに安全にデータを保存できる」と考えた。そしてそれらの技術を集約し、製品として発表した(図)。
これが、HCISの始まりといわれる。
HCISはCIのメリットに加え、サーバとストレージを統合し、FCをなくしたことによる運用面の簡便性が評価された。簡易に性能拡張できる(スケールアウトできる)という特性から、仮想デスクトップインフラ(VDI)システムでの利用を皮切りに広く利用され、市場が形成されていった。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
HCISとHCIは何が違うのか
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「Excel至上主義」の終わらせ方 丸2日の手作業地獄から情シスと現場を救うには
-
2
「Microsoft 365のセキュリティ運用」に関するアンケート
-
3
取手市がVDIと決別した理由 更改費用「4倍超」を約1.7倍に圧縮
-
4
急増する「AIはこう言ってる」マン 判断を狂わせる「AI忖度」を防ぐには?
-
5
221人調査で分かった「情シス最大のストレス」は?
-
6
「Salesforceのテスト自動化ツール」に関するアンケート
-
7
IT製品の導入に関するアンケート「サーバ&ストレージ」編
-
8
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
9
「AI時代の統合基盤・エンタープライズAI管理」に関するアンケート
-
10
自宅のWi-Fiが「遅い」「途切れる」本当の原因は? Dellが推奨する鉄則
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
年収2000万「クラウドセキュリティのプロ」になれる資格とは
-
2
セキュリティソフトをすり抜ける標的型攻撃メール、不審メールの見破り方とは?
-
3
Windows Updateの通信集中で回線が逼迫、ネットワーク刷新事例に学ぶ解決策
-
4
財務を戦略的組織へ進化させるAI活用術、4つの主要な障壁と解消方法
-
5
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
6
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
7
標的型攻撃メールを見破るには? サンプル文面を例に傾向を解説
-
8
商用利用の安全性を確保し大量のコンテンツを高速で生成する、AI活用の秘訣
-
9
マンガで解説、1日で生成AI環境を構築できるワークショップの中身とは?
-
10
Dark AIが台頭する時代の新発想、「より高度なAIで対抗する」具体的方法とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー