「Amazon Elastic File System」「Azure Files」との違いは
Google、クラウドファイルストレージサービス「Filestore」を公開
Googleの「Google Cloud Filestore」が利用可能になった。パブリッククラウドとオンプレミス環境を統合して利用できるのが強みだが、競合他社のファイルサービス同様、課題も残されている。
クラウドファイルストレージは、ハイパースケールのプロバイダーにとって扱いにくい課題だ。しかし顧客企業と関係を保つには重要な要素になる。
Googleの「Google Cloud Filestore」(以下Filestore)のβ版が2018年7月に利用できるようになった。これはネットワーク接続型ストレージ(NAS)を使って、非構造化データを共有ファイルシステムに格納する企業向けのマネージドサービスだ。このネットワーク接続型ストレージは、「Google Cloud Platform」の仮想マシン(VM)インスタンスや「Kubernetes」インスタンスに直接統合できる。
企業が利用するアプリケーションがローカルファイルサーバに依存する場合、Filestoreのようなマネージドサービスが重要になる。こうしたサービスがパブリッククラウドにないと、業務がままならなくなる。
高パフォーマンスのクラウドファイルストレージ
パブリッククラウドへのデータの移行が進んでいることに伴い、ホームディレクトリなど、他の種類のオンプレミスストレージ市場が縮小している。しかしこうした現象はファイルストレージに限ったことではないと専門家は語る。
「事実、AI、機械学習、産業用IoTの新たなワークロードの登場に後押しされ、パブリッククラウドの市場は拡大している」と話すのは、Gartnerのアナリスト、ジュリア・パルメール氏だ。
GoogleはFilestoreのリリースで、高いスループット、短い待機時間、高いIOPSを必要とするアプリケーション向けに、高パフォーマンスのストレージを提供しようとしている。ファイルストレージはレガシーシステムと関連付けられていることが多い。しかしFilestoreは、コンテンツ管理システム、Webサイトのホスティング、画像レンダリング、アーティスト向けの仮想ワークスペースに重点を置いている。
価格帯は2種類あり、最大サイズを64TBとして、プロビジョニングされた容量に対して課金される。Premiumストレージはスループット(読み込み)が1秒当たり700MB、30000IOPSで、月額は1GB当たり0.3ドルになる。これより下の価格帯は、月額が1GB当たり0.2ドルになるが、パフォーマンスは容量に応じてスケーリングされ、最大で10TB強となる。
英ライギットにあるマーケティング企業Jellyfish Online Marketingは、キャンペーン、アプリケーション、Webサイトを運用しているが、これを支えているのがFilestoreだ。Jellyfishは当初、「Google Cloud Storage」の「Google Kubernetes Engine」(GKE)と「WordPress」などのオープンソースツールの併用を考えていた。しかしGoogle Cloud StorageシステムはWordPressの複数のコピーを並列に実行するアーキテクチャとしては不十分だった。そのため同社は、過去にはオーバーヘッドの大きな集中管理型クラウドファイルストレージシステムを自社開発したり、他のクラウドプロバイダーを利用したりしていた。
JellyfishにとってはFilestoreが「欠けていたパズルの最後のピース」だった。このネイティブストレージ統合によって、同社は管理しているKubernetesクラスタ環境にGoogleのサービスを完全に利用できるようになった。こう話すのは、Jellyfishで主任DevOpsエンジエアを務めるアシュレイ・マロニー氏だ。
「従来のようなオープンソーススタック外部にある多数のカスタムモジュールを必要とせず、GKEをネイティブに使用できることこそ重要だ。Filestoreがあることで、スケーラビリティと高い稼働率というメリットを利用しながら、Kubernetesとネイティブ環境を統合できる」(マロニー氏)
クラウドファイルストレージに残るプロバイダーの課題
Jellyfishのユースケースは比較的シンプルだが、高い効果が出ている。それはファイルストレージの幅広い機能よりもオンプレミス環境との統合が重要であるためだ。しかしレガシーシステムを抱える企業クライアントは、今まで以上のメリットを期待できなければ、既存のクラウドファイルストレージの設定を見限ることはない。
クラウドファイルストレージシステムの構築は難しい。分散型システムで信頼性とパフォーマンスを確保しながら構築する場合はなおさらだ。GoogleがFilestoreをリリースした理由は、恐らくその点にあるとパルメール氏は話す。ファイルストレージには高いIOPSとスループットが求められるため、BLOB(Binary Large OBject)やオブジェクトストレージに対応するよりも、パフォーマンスの高さに重点が置かれる。またクラウドネイティブストレージよりも機能がはるかに多くなる。そうすることでプロトコル数が少なくなり、パブリッククラウドの無制限のスケーリングに適合する。
ファイルシステムは、通常パフォーマンスやスループットに焦点を当てて開発される。GoogleはFilestore向けに堅固なロードマップを用意しているように見える。Google Cloudの分析ツールの利用を考えている多くの企業がGoogle Cloudの利用を開始するよう、まずはパフォーマンスを追求することには意味があるとパルメール氏は話す。しかしこのロードマップでは、スケール、プロトコル、スナップショットなどのデータサービスはトレードオフの対象になりそうだ。
Googleは、クラウドファイルストレージの分野では競合他社に後れを取っている。しかし市場を独占するベンダーは現れていない。Amazon Web Servicesは、長期にわたるテスト期間を経て2016年に「Amazon Elastic File System」(EFS)をリリースした。しかし企業が必要とする機能がまだ幾つか不足している。例えばFilestoreと同様、EFSはサーバメッセージブロック(SMB)をサポートしない。SMBはファイル共有などに使用される標準Windowsプロトコルだ。Microsoftは「Azure Files」という独自のサービスを用意している。2018年初頭、同社はAvere Systemsを買収した。このAvere Systemsもハイブリッドクラウドファイルストレージを提供しているが、2018年中にAzureと完全統合されることは期待できない。
「大手ベンダー3社にはいずれも短所があり、各ベンダーが競い合う動きを見せている。企業が現実的にパブリッククラウドを利用できるように、ファイルストレージを充実させていく必要があるという方向性は各社とも一致している」(パルメール氏)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社kickflow] 2社の事例に学ぶワークフロー改革:属人化解消や年数万件の申請書類削減のコツ -
製品資料
[NTTPCコミュニケーションズ株式会社] 「回線速度不足」だけが原因ではない? Web会議の遅延を解決する方法とは -
製品資料
[東京エレクトロン デバイス株式会社] 工場の可用性向上に重要な「7つの領域」と対策 OTセキュリティ強化の基礎知識 -
製品資料
[リコージャパン株式会社] 問い合わせ対応で本来の業務が進まない、総務や情シスの負担をどう減らす? -
製品資料
[リコージャパン株式会社] 自社データから高精度な回答を生成、簡単に生成AIチャットボットを構築する方法
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
ITエンジニア1265人調査 生成AIを使い込むほど「人の確認」が重い理由
-
2
全社標準Copilotに絶望? MS Copilotで問い合わせ6割減できた企業は何が違った
-
3
Microsoft製品でここまで自動化できる 情シスがやめられる手作業10選
-
4
LLMの「過学習」、正しく説明している文章はどれ?
-
5
管理職542人に聞いた AIやデジタル化でなくしたい主な事務作業第1位は?
-
6
10年かけてBIを再構築したアマノの一手 「権限がない」「予算がない」でもDXは動かせる
-
7
レガシー基幹システムをSAPに統合 山善が突き止めた「標準化と個別最適」の境界線
-
8
GitHub Copilotを使いこなす第一歩 初めてのプロンプト6つのコツ
-
9
脱VMwareの前提が崩れる BroadcomのVDDK公開停止で確認すべき点
-
10
AI活用か新たな脅威か OpenAI自律エージェントがRubyGemsを急襲
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
JR西日本ITソリューションズが「監視業務の属人化」を解消した方法とは?
-
2
生成AIで文書活用を進めるには? 効率化と安全性をどう両立する
-
3
インシデント対応工数を約3割削減、東京ガスの事例に学ぶ監視体制刷新のコツ
-
4
Windows PCとMacの選択制で生産性向上 LINEヤフーが実践する運用管理方法とは
-
5
少額減価償却資産が40万円未満へ拡大、令和8年度税制改正で押さえるべき変更点
-
6
「Google Workspace」活用事例34選、先進の生成AIによる組織変革の全貌
-
7
国税庁の次世代基幹システム「KSK2」稼働開始に向けて、対応すべき変更点とは?
-
8
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
9
Linuxのスキルを証明する“激推し”の認定資格はこれだ
-
10
AI時代に成功するための「ナレッジマネジメント」ベストプラクティス
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー