教育機関IT活用・セキュリティ座談会【第3回】
「学校IT化」の遅れで日本が失うものとは? 現場の教員と専門家が議論(1/2 ページ)
国内にも積極的なIT活用を進める教育機関はあるものの、決して多数派ではない。確かにITは、教育目標達成の一手段にすぎない。だからといって活用の動きを停滞させたままで本当によいのか。教員と専門家が議論する。
市町村単位でのタブレット一斉導入やプログラミング教育の必修化など、教育現場でのIT活用に関する話題は事欠かない。とはいえこれまでの道のりを振り返ってみると、教育にPCやインターネットなどのITツールを活用する機運が高まっては薄れ、高まっては薄れの繰り返しだった印象も否めない。いったい何が原因なのか。
授業でのタブレット活用にいち早く着手し、生徒へのセキュリティ教育にも取り組む、佐野日本大学中等教育学校の安藤 昇氏と関東第一高等学校の横山北斗氏、そして教育ITに詳しいラックの武田一城氏の3氏による本座談会。第2回「『LINE禁止』ではなく『あえて失敗させる』 IT先進校が語る学校セキュリティ対策」に続く最終回となる本稿では、教育機関のIT活用を阻む原因に切り込む。
参加者(所属・役職は取材時)
安藤 昇氏 佐野日本大学中等教育学校 ICT教育推進室室長
横山北斗氏 関東第一高等学校 教務部長
武田一城氏 ラック マーケティング戦略室長
モデレーター
宮田 健氏
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―― タブレットやクラウドサービスなど多様なITツールを組み合わせて、授業や校務に活用している教育機関がある一方で、IT活用がまだそれほど進んでいない教育機関も多いと聞きます。
武田(以下、敬称略) 佐日中等や関東一高のように先駆的なIT活用を進めている教育機関は、全体で見るとごく一部です。一般的な教育機関は、残念ながら本格的なIT活用に至るまでのキャズム(溝)を超える前で、足踏みをしている印象があります。
ITツールにありがちな「ITを導入して生徒の成績を上げよう」といったうたい文句を聞くと、「これまで自分たちがやってきたことが否定されるのではないか」と感じる教員は少なくないようです。こうした意識が、IT導入に対する無言の“抵抗勢力”となる可能性はゼロではありません。
特に公立学校では、教員の定期的な転勤も、IT活用の定着を図る上で大きなハードルになります。旗振り役の教員がいるうちはいいのですが、その教員が転勤で別の学校に行ってしまうと、元のもくあみになってしまうケースをよく耳にします。
IT普及によって「教育の質」という日本の“貯金”がなくなる?
―― シンガポールや韓国、米国などの海外と比べて、日本の教育IT活用は総じて遅れているという声があります。
安藤 各国が人工知能(AI)技術を含むITの活用を進めている背景を見てみると、教員の質が下がっても、一定レベルかつ均質な授業を実現できるようにすることが、きっかけの一つになっているようです。米国をはじめ、賃金の低さといった理由から優秀な教員が現場からいなくなり、教員の質の低下をはじめとする悪影響が出始めた国もあると聞きます。
背景はどうあれ、教育へのIT活用を積極的に進めている国では、子どもは小さいときから当たり前のようにITを使って授業を受けることになります。今では無償で使える便利なITツールも豊富にあるので、各国はこうした手段を活用して高いレベルの教育を目指しているようです。
日本が手をこまねいている間に、海外の子どもはITを使った学習をどんどん進めていく。その結果として生まれる差を考えると、恐ろしさがあります。
武田 さまざまな国の現状を見てみても、日本ほど板書がきちっとしていて、若い教員にも教え方が伝えられていて、レベルの高い教育ができている国はほとんどないと考えています。東京でも北海道でも離島でも、全国どこでも同等のレベルの教育ができる国は、極めて珍しい。
世界の教育機関でIT活用が進むにつれて、こうした教育レベルの高さという日本の“貯金”が、だんだんとなくなってしまうのではないか、という懸念も生まれます。安藤先生のお話もそうですし、動画教育サービスなどのITツールを活用した学習で、受験勉強が完結するのではないかという横山先生のお話を踏まえると、こうした懸念が一層強まります。
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教育機関IT活用・セキュリティ座談会
先駆的なIT活用を進める教育機関は、どのような取り組みを進めているのか。ITの普及とともに重要性が高まるセキュリティの脅威には、どう対処しているのか。現場の教員とIT専門家との座談会から探る。
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