AWS、IBMとの連携も強化
Salesforceが音声アシスタント「Einstein Voice」発表、CRMはどう変わる?
Salesforceは、同社の年次カンファレンスでApple、AWS、IBMとのパートナーシップの締結や拡大に加え、今後リリースする統合ツール「Customer 360」、音声プラットフォームサービス「Einstein Voice」などを発表した。
Salesforce.comは2018年9月に開催した同社の年次カンファレンス「Dreamforce 2018」で、データ共有を強化し、統合を容易にするプラットフォーム製品や、Apple、Amazon Web Services(AWS)との大々的なパートナーシップなどを発表した。カンファレンスに参加したユーザーの間で最も話題を呼んだのは、「Salesforce Einstein Voice Assistant」がリリースされるというニュースだった。
Einstein Voiceによる音声アシスタントと顧客対応bot
今回発表されたSalesforceの新製品の中で、アナリストと参加者の両方を最も沸かせたのは、SalesforceのAI技術「Salesforce Einstein Voice」だ。
Einstein Voiceは自然言語処理を利用して音声コマンドを受け付け、新機能のEinstein Voice Assistantを介して個々のSalesforceアプリケーションに必要な動作をする。ユーザーはスマートフォンなどのモバイルデバイスに話し掛けて、顧客プロフィールの更新や、電子メールの作成、ミーティングのスケジューリングなどができる。
「従業員から見ると、Einstein VoiceはCRMを使いやすくしてくれる。ほとんどの営業担当者はスマートフォンに依存しており、AppleとSalesforceのパートナーシップが成立する大きな理由もそこにある」とリアリー氏は指摘する。同氏は音声技術に関するブログ「Voices Carry」も運営している。
Einstein Voiceは、ユーザーのCRMへのデータ入力を手助けするだけでなく、「Customer 360 ID」も更新する。これにより、顧客の好みに関するデータが常に最新に保たれる。
「これまでなかったようなCRMの運用が可能になる。ユーザーにとっては、作業が大幅にスムーズになる魅力的な進化だ」(リアリー氏)
Dreamforce参加者はEinstein Voiceに期待を寄せたが「顧客記録の更新や、営業担当者に対する1日の予定の読み上げ以外に、どのようなユースケースがあるのか」という声もあった。従業員が関わるプロセスでのEinstein Voiceのメリットは明らかだ。しかし参加者はこの技術により、顧客との通話などのやりとりから洞察を引き出せるのかどうか知りたがっていた。
「われわれはFordのWebサイトと、あらゆるディーラーのWebサイトを経由した全ての見込み客へEinstein Voiceを適用することに関心がある」と、FordDirectのビジネスインテリジェンスおよびアナリティクス担当バイスプレジデントを務めるトム・トーマス氏は語る。同社は、Ford車やLincoln車を扱うディーラーを取引先とするデータおよび広告ソリューション会社だ。
トーマス氏によると、FordDirectの取引先の独立系ディーラー全体では、Ford車やLincoln車に関する電話のやりとりが毎月数十万件に上る。トーマス氏は、Einstein Voiceがこうした通話を分析して学習し、顧客であるディーラーへのサービスを向上させることを期待している。
「Einstein Voiceによるbotが通話に応答し、販売につながる応対ができるようにして、ディーラーに貢献したい」(トーマス氏)
新しい技術には懸念が付き物で、Einstein Voiceも同様だ。われわれが話すことに耳を傾けて追跡するコネクテッドデバイスの急激な増加に対し、警鐘を鳴らす人もいると、リアリー氏は語る。
「プライバシーの懸念がある。しかしユースケースによっては、懸念を上回る価値が提案されている」(リアリー氏)
Einstein Voiceは、Salesforce Winter '19リリースの一部として、パイロット版が提供される。価格は、正式提供の開始時に発表される。
データ統合プラットフォーム「Customer 360」の提供
Salesforceは「Customer 360」プラットフォームを提供する計画も明らかにした。このプラットフォームは、Salesforceアプリケーション全体にわたってデータを統合するための管理インタフェースとして機能する。Salesforceは、Customer 360と「Salesforce Integration Cloud」を組み合わせて、同社の各種システムやアプリケーション全てのデータを統合し、ユーザーに包括的な顧客ビューを提供することを目指している。Salesforce Integration Cloudは、Salesforceが2018年に買収したMuleSoftの技術を基に構築されている。
「Salesforceの全てのクラウドが構築されるまでにはかなりの時間がかかった。それらは別々に開発され、中にはもともとアプリケーションだったものや、買収によって生まれたものもある。これらを連携させるプラットフォームがCustomer 360だ。セールスポイントは、統合を簡単に実現できることだ」CRMコンサルティング会社CRM Essentialsの共同創業者、ブレント・リアリー氏はそう指摘する。
Salesforceの共同創業者でCTO(最高技術責任者)を務めるパーカー・ハリス氏は、カンファレンスの基調講演の中で、Customer 360によって、企業が使用するさまざまなSalesforce製品を連携させることが可能だと語った。
「Customer 360はCustomer Success Platformの一部だ。その中心を担っている」とハリス氏は語った。さらに、Integration Cloudでわれわれのポートフォリオに加わったMuleSoftの技術は、企業がサードパーティーシステムをSalesforce製品と組み合わせて使うのに役立つと付け加えた。
「企業内では、HR(人事)やERPなど他の技術も使われている。われわれの製品のユーザーからすると、それらに含まれる顧客情報も含めて一元的に管理したい。そこでわれわれはMuleSoftを買収し、統合機能を実現した」(ハリス氏)
不動産検索サービスを手掛けるRealtor.comのエンジニアリング担当バイスプレジデントであるアルル・ダニエル氏は、同社のSalesforceアプリケーションやサードパーティーツール間でデータを移動するための統合ツールを独自に開発した。同氏は、Integration CloudとCustomer 360が正式リリースされれば、このツールの役割を引き継いでくれるだろうと期待している。ただし正式リリースは2019年になる見込みだ。現在は一部のユーザーを対象にパイロット版が配布されている。
「新製品は大いに役立ちそうだ。われわれは特定のタイプの技術に縛られずに済む。データのやりとりやAPIの接続が簡単になるだろう」(ダニエル氏)
パートナーシップの拡大
SalesforceはDreamforce 2018で、AWSとのパートナーシップの拡大も発表した。これにより、AWSとSalesforceのサービスを横断したデータ共有が容易になる。加えて「AWS PrivateLink」とSalesforce API、および「Amazon Connect」と「Salesforce Service Cloud」が連携する。
Salesforceは、IBMの新しいアプリケーション「Watson Discovery for Salesforce」により、「IBM Watson」に関するIBMとのパートナーシップを強化したことも明らかにした。Salesforceの「AppExchange」で提供されているこのアプリケーションは、AIベースの検索機能を利用して企業の各種データソースをクロールする。それによりSalesforce Service Cloudを使用する顧客サービス担当者に、案件の解決に必要な情報を迅速に提供し、情報検索に費やされる時間を短縮する。
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