“昭和の工場”もIoT化
15分で工場をIoT化? 手軽な「スマートファクトリー」化サービスが充実
設備を買い替えるコストの高さや分析ツールの使いにくさが、工場IoT化の障壁となることがある。こうした課題を解消し、スマートファクトリー化へのハードルを下げる製品が充実してきた。具体例を基に動向を探る。
企業が工場のIoT(モノのインターネット)化を進めるとき、インターネットに接続する通信回線の開設工事や、機器の買い替えが必要になることがある。こうした中、大規模な工事を必要とせず、既存設備を生かして、短期間で工場をIoT化する製品が充実しつつある。IoT化を通じて工場内のデータの取得や分析をしやすくすることで、業務の最適化につなげる「スマートファクトリー」の実現を容易にする。
迅速なIoT化を支援する製品には、どのような傾向があるのか。2018年10月24日~26日に幕張メッセで開催された展示会「第4回IoT/M2M展【秋】」の展示内容を基に紹介する。
通信回線を新設せずにIoT化
LTEなどのモバイル回線を用いることで、インターネットに接続する通信回線がない工場でもIoT化を実現できるようにする動きがある。
モバイル回線の通信モジュールを組み込んだIoTデバイス(ネットワーク接続型デバイス)もある。その一つがビッグローブの「BL-02」(写真1)だ。BL-02は「Android 6.0 Marshmallow」を搭載しており、単体でLTEを使ったインターネット接続ができる。
企業はBL-02とビーコン(電波受発信器)を組み合わせて導入することで、従業員や機械の現在位置を取得することが可能だ。従業員に持たせたり、機械に取り付けたりしたBL-02が、Bluetooth Low Energy(BLE:低消費電力版Bluetooth)通信でビーコンに位置データを発信。GPS(全地球測位システム)の届きにくい工場内であっても、従業員や機械の位置データを取得できる。
マルティスープは、BL-02と同社の屋内位置情報計測SaaS(Software as a Service)の「iField indoor」を合わせて提供するサービスを2018年9月に開始した。LANケーブル敷設などの追加工事をする必要がない点、分析に利用するiField indoorがログインするだけで利用できる点など、導入のしやすさをアピールする。
iField indoorはBL-02などのIoTデバイスから得た位置情報を基に、従業員の作業分析や機械の行動計測を実現する。取得した位置データをiField indoorのマップに可視化することで、人や機械が工場内をどう移動したかを把握できるようにする。工場の一部スペースだけにIoTデバイスを導入したり、期間ごとにIoTデバイスを移動させて、分析する場所を変えたりする使用法も可能だという。
実導入前にBL-02とiField indoorを最長1カ月利用できる、マルティスープの導入検証パッケージの利用料は税別98万円。iField indoorの分析ツール群と60台までのビーコン、3台のBL-02をレンタルできる。モバイル回線を利用する場合は別途通信量が発生する。
アナログメーターをクラウドに接続
既存設備自体のIoT化を可能にすることで、設備を入れ替える必要をなくそうとする動きもある。KISの「C-Sight」(アナログメーター自動認識システム)は、こうしたコンセプトに基づく製品/サービス群だ。工場のスタッフが気圧計などのアナログメーターの前に通信機能付きカメラを設置する(写真2)と、画像認識アプリケーションがカメラから受信したメーター画像を数値データに変換。解析用クラウドサービスのサーバへ数値データを送信する。既設のメーターから、通信機能が付いたデジタルメーターへ買い替える必要をなくして、導入時のコストを抑えた。
C-Sightは製造業務向けサービス群「KIS SFSサービス」の一つだ。KISはSFSサービスのスターターキットとして、通信機能付きカメラやセンサー、ソフトウェア一式を初年度のみ税込み35万円で販売する。同サービスでは工場の課題に応じてハードウェアとソフトウェアの組み合わせを変えることができ、既設の表示灯の色を検知してモニタリングするシステムも提供する。スターターキットで提供するハードウェア類は買い切りで、AC(交流)電源とサーバが別途必要。C-Sightと同様のアナログメーターの計測システムは、日立製作所や木幡計器製作所なども提供している。
簡単なプロセスでIoT化
センサーをはじめとする各種機器の設置や分析ツールの構築など、IoT化に必要なプロセスを効率化する製品も登場している。国内販売元のアスコが「15分でIoT化を実現できる」とうたう、HSIのIoT関連製品/サービス群「THINGS3」は、その一つだ。
THINGS3は、工場内のセンサーなどの機器とインターネット間の通信を中継するゲートウェイデバイスと、設備の稼働状況に関するデータの収集や分析用アプリケーションの構築をはじめとするクラウド形式のツール群をセットで提供する。ゲートウェイデバイスの設置や機器との接続を容易にしたり、機器から取得したデータのクラウドへの転送を簡単な設定で実現できるようにしたりして、導入作業を単純化。環境にもよるが、ゲートウェイデバイスの設置から、取得したデータの確認までの作業がおおむね15分で完了するという。
風力原動機などの既存設備を制御するPLC(プログラマブルロジックコントローラー)やセンサーに取り付けたゲートウェイデバイスが、設備から取得したデータをクラウドに転送する。ツール群に含まれる分析用アプリケーション構築ツールは、ドラッグ&ドロップといった直感的な作業で開発できるようにし、コーディングを不要にした。構築した分析用アプリケーションは、ゲートウェイデバイスから収集したデータを基に、機器の動作状況を可視化できる(写真3)。ツール群のインフラには、MicrosoftのIoT向けクラウドサービス「Azure IoT」を採用した。
既にTHINGS3を販売している米国では、風力発電所が風量の観測と分析に、製造業が品質管理の用途に使用している例があるという。アスコは日本国内では、ゲートウェイデバイスはレンタルで、月額の料金形態での提供を予定している。
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