社内資格制度や大学の教育プログラムを活用
テクノロジーに10億ドル投資する会計事務所 STEM人材をどう採用し育成するか
Ernst & YoungではSTEM人材の採用や、従業員へのAI講座の提供などを行っている。追求するのは、急速な時代の変化を有効に生かせるデジタルビジネスモデルだ。
デジタルトランスフォーメーション(DX)の実現を目指す、あらゆる企業が取り組んでいることが1つある。それは変化することだ。米国の会計事務所Ernst & Young(EY)で、グローバル最高変革責任者(CIO)を務めるジェフ・ウォン氏はそう語る。
EYも例外ではない。ウォン氏によると、同社が他の会社と異なる点は、イノベーション、変化、継続的学習に重点を置くという「文化的な信念」を全社で取り入れている点だという。この信念が同社のDX戦略の中心にある。
インタビューの前編、「会計事務所が最新テクノロジー戦略に10億ドル投資する理由」では、EYがテクノロジーやイノベーションに10億ドルを投じる理由をウォン氏が説明した。同社をはじめとした企業の成功を後押しする3つのテクノロジーである、人工知能(AI)、データ、ブロックチェーンについても詳しく述べている。
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STEM人材と出会うには
人材教育に必要な観点とは
中編となる本稿では、DXに向けたEYの戦略について具体的に紹介する。例えば新しいビジネスモデルの調査と採用、STEM(科学、技術、工学、数学)人材の雇用、デジタル社会で企業に必要なテクノロジースキルを会計士に教育することなどに、同社は野心的に取り組んでいる。
▲▼編集注:このインタビューは抜粋になります。
――デジタル変革に向けた戦略を実施するなかでEYはどのような課題に直面していますか。
ジェフ・ウォン氏(以下、ウォン氏) 私がよく聞かれるのは、出身企業であるeBayのような比較的歴史が浅いIT企業と、EYとの違いについてだ。EYは世界のあらゆる主要都市に26万人の従業員を擁し、100年を超える歴史がある。そのためEYとeBayは全く別物ではないかと聞かれる。実際その通りなのだが同じ部分もある。それは、どのような環境でも変わるのは難しいということだ。
成功を収めた大手企業や団体でも変わるのは難しい。それはこれまでの取り組みを通じて、成功し続けてきた歴史があるためだ。その事実が新しい取り組みを難しくする。世界中の企業が抱える課題の多くは、変化の必要性を自社に納得させることが関係している。EYに来て個人的に最も印象深かったのは、変化の概念がEYの指導者陣や全社に素早く受け入れられたことだ。世界は以前よりもはるかに速く動いている。そのため全員が一緒に変わる必要があるという考え方が、短期間で浸透した。同時に、イノベーションを実現して変化することが必要だという文化的な信念も広まった。ただ変化を必要とするだけではない。目の前にチャンスがあるから変わることを求めている。
依然として変わることは難しいが、意思決定は素早くする必要がある。EYはビジネスモデルの課題にも取り組んでいる。課題は既存のビジネスに新しいデジタルビジネスモデルを追加する方法だ。この課題には長期にわたって取り組んできた。今後も何年にもわたって継続的に取り組むことになるだろう。収入や利益を生み出すさまざまな方法と、それをどう実行に移すのか、その答えを求めている。そこでEYでは、利益が見込めるさまざまなパイロットプロジェクトを、世界中の顧客と協力して、全社で実施している。
STEM人材を雇用するには
――必要な変化を実現するために、EY社内で他に取り組んでいることはありますか。
ウォン氏 新しい人材採用の方法についても、EY社内に問い掛けている。誰を雇用するか、加わった人材をどんな方法で教育し、昇格させていくかといったことを考えている。そうしたこと全てを疑い、進化させている。
世界の動きが速いことを考えると、不確かな環境で複雑な問題を解決できる人材を少しでも多く見つける方法を考える必要がある。そのためビジネススクール出身者などのリーダーシップがある人材の採用はもちろん、STEM人材を自社に加えることが重要だと判断した。現在は世界中のSTEMの学位、学部、学校出身者の採用戦略に、より重点を置くようになっている。EYではビジネススクールの学生の採用は非常に得意としてきた。それと同じくらいSTEM人材の採用にも強くなれるかは、まだ分からない。
デジタル変革に向けた戦略:多彩なバッジ
――EYはメンタリングプログラミングと幅広い講座を提供していることで有名ですが、従業員教育はどのように変化していますか。
ウォン氏 これまで従業員教育で考えていたのはトレーニングで身につくスキルだった。現在は、身に付いたスキルを土台として、気概や立ち直る力を積み上げるような教育を追求している。スキルは重要だ。前進するにはスキルが必要なのは変わらない。それに加えて、継続的に学習できる組織を作るという思想が、重要な骨組みの一部になってきている。
実施している従業員教育については2つの例が挙げられる。1つはバッジだ。EYで発行するこれらのバッジは、大学に例えるなら副専攻のようなものだ。さまざまな分野の専門知識を備えていることを示すための学習科目やプロジェクトがある。例えばテクノロジー分野では、設計思考、人工知能、データ分析など、約30のバッジを用意している。EYでは既に3000のバッジを授与している。このプログラムは2018年に開始した。
EYでは、従業員がこれらのバッジを自己判断で申請できるようにしている。こうしたバッジを獲得するための学習課題やプロジェクトに、各自の裁量で取り組むことができる。バッジをEY社外で示すことも許可している。取得したバッジを履歴書やLinkedInのプロファイルに載せても構わない。それが、学習に関する他とは異なる取り組みの一例だ。
もう1つの例は、EYが提供するスタンフォード大学の学習プログラムだ。前に述べた通り、EYはエンジニアリング、設計、ビジネスを組み合わせた教育プログラムを必要としている。世界中のほとんどの受講者が、ビジネススキルやリーダーシップの取得のために、スタンフォード大学の学習プログラムを利用している。スタンフォード大学の学習このプログラムには、EY全社から特に、上級リーダー職に就いている人材を派遣している。受講者は、世界を変える新しいテクノロジーが台頭し、変化し続けるダイナミックな環境で競争に勝利する方法について学ぶことができる。
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