Partners HealthCareの導入事例を紹介
クラウド型STaaS「ClearSky Data」が研究機関のIT部門にもたらすメリット
Partners HealthCareは、セキュリティが確保され、医療規制に準拠した状態で、研究者がすぐに利用できるストレージとしてクラウド型STaaSを採用した。本稿はその選定理由について説明する。
Partners HealthCareは米国の非営利医療団体だ。同団体のエンタープライズ研究インフラとサービスグループ(ERIS)は重要なサービスを提供している。具体的には、研究者の作業に必要なデータファイルの保管、セキュリティ保護、ファイルアクセスの機能が含まれる。
こうしたサービスを提供するため、ERISは最大50TBのストレージを備えた大規模なネットワークを立ち上げた。このネットワークでは、研究部門がネットワークドライブを統合できるだけでなく、アクセス許可システムに基づくファイルへのアクセス管理もできる。
「一方で研究者は、データセキュリティの強化とアクセスの追跡に関するニーズの拡大に直面していた」と話すのは、ERISのディレクターを務めるブレント・リクター氏だ。米国の連邦規制や州法に加え、Partners Healthcareと連携する企業や機関から求められる標準や要件に応える必要がある。そのためにはアクセス管理、監査機能、セキュリティ層の増強が求められていた。
こうした要望を受けたERISは、医療上のプライバシーやセキュリティに関する厳しい要件を適切に満たせるシステムの検討が必要になった。
「監査統制、完全バックアップ、高可用性を備えたファイルストレージシステムの構築について考えた。このシステムはエンドポイントで使用できなければならない。その上で、ファイアウォール内のワークグループ全体が共有できる入れ子構造のアクセス許可が必要になる」(リクター氏)
併せて読みたいお薦め記事
新たなデータセンター運用手法
ハイブリッドクラウド環境の導入
クラウド型STaaSとは何か
ERISはさまざまな契約や研究プロジェクトで確保すべき多数の要件を基にセキュリティ計画を立案していた。この計画を文書にするための事務作業をこなし、時間のかかる監査をしなければならなかった。
そこでERISが出会ったのが、クラウド型STaaS(Storage as a Service)ベンダーClearSky Dataが提供する「ClearSky Data」だった。Partners HealthCare内の他のITチームは、ブロックストレージとして同社の製品を既に使用していた。これに続いて、ERISはClearSky Dataの試験運用を決定した。
「ClearSky Dataによって、比較的小規模な当団体のデータセンターでネットワークサービスが利用できる。このサービスでは、当団体のユーザーがエンドポイントにマッピングしているファイル用のキャッシュやステージング領域が、内部の高速ストレージによって提供されている」(リクター氏)
ClearSky Dataが提供する自動化とソフトウェアのシステムが上記のストレージからファイルを取得し、ボストンにあるPartners HealthCareのローカルデータセンターに移動する。「ストレージのデータを複製するので、当団体のデータセンターのサーバにかかる負荷を軽減できる。ClearSky Dataは全てのファイルを保持するが、当団体のデータセンターのファイルには全てのデータが存在するわけではない。ユーザーが使用する際に必要なデータが保持される」とリクター氏は説明する。
ClearSky Dataはオンデマンドのプライマリーストレージ、オフサイトバックアップ、災害復旧を、事実上1つのサービスとして提供していると同氏は話す。
ただし、ユーザーはシステム構造の全容を把握できるわけではないと同氏は付け加える。ユーザーとなる研究者は、ClearSky Dataに格納されたデータと、ERISが作成したデータにアクセスして日常業務を遂行しているが、どちらにアクセスしているのか、両者の違いに気付くことはない。
Partners HealthCareが感じるClearSkyのメリット
ClearSky Dataを利用したデータシステムへと移行する決定をERISが下したことで、幾つかのメリットが得られたとリクター氏は語る。
同氏によれば、このアプローチによって、オンプレミスストレージのフットプリントが減り、同時にハイブリッドクラウド戦略が加速しているという。高いパフォーマンスがもたらされただけでなく、セキュリティとプライバシーの管理の自動化も進んだ。豊富なデータ保護機能、災害復旧機能、俊敏性と柔軟性ももたらされた。
ClearSky Dataのおかげで、ERISは研究者にテクノロジーを提供するというミッションに力を注ぎ続けられるとリクター氏は述べる。
「ERISは要件を満たすシステムの設計や開発を自力でもできる。しかし当団体は結局のところサービスを提供するベンダーだ。必要なセキュリティ要件を全て満たした状態でユーザーが利用できるサービスを提供したいと考えている。そうすることで、ユーザーはサービスがさまざまな要件を満たしているかどうか確かめずに済む」(リクター氏)
さらに同氏は、ERISがハイブリッドのクラウド型STaaSアプローチの採用に踏み切ったことで、Partners HealthCareを他の研究コミュニティーと差別化する活動に重点を置けるようになったともいう。活動の具体例には、データサイエンスに関する取り組みの支援などが挙げられる。
「今回の決断によって、発見と研究を可能にするIT製品やITサービスの提供という当団体のミッションに専念できる」(リクター氏)
IaaSの長所と短所
「Partners HealthCareが採用したクラウド型STaaS戦略は、これまでコンピューティングとストレージという2つに分かれた広大なIaaS(Infrastructure as a Service)市場にマッチしている」と話すのは、調査会社Forrester Researchでインフラとその運用を専門にする上級アナリストのナビーン・チャブラ氏だ。
その点では、ClearSky Dataはクラウドストレージだけでなく、エンタープライズIT部門が必要とする他のインフラ層やエコシステム全体も提供するベンダーの1社だといえる。このような分野のベンダーで最大手には、Amazon Web Services(AWS)、IBM、Googleなどがあるとチャブラ氏は話す。
チャブラ氏によると、Partners HealthCareが採用したようなクラウド型STaaSアプローチを選んだエンタープライズIT部門は、柔軟性とスケーラビリティを獲得でき、製品販売までの時間も短縮できるという。これらは以前からクラウドによって得られるメリットだ。さらにエンタープライズIT部門は、ワークロードをこれまで以上にクラウドに移行することができる。
だがチャブラ氏は、ハイブリッドのクラウド型STaaSのシステムに潜む欠点も指摘している。オンプレミスとIaaSの両方にアクセス管理ポリシーを適用すると、特に開発作業量の増大によって、IT部門に負担がかかる可能性がある。さらに、技術的な立場から見て、クラウド型STaaSやIaaSの導入は一般に特別難しくはないが、世間で宣伝されているほどアプリケーションをシームレスに移行できない可能性がある。
「ストレージはオンプレミスアプリケーションのように容易に利用できないことがある。例えば、オンプレミスで運用しているアプリケーションがあり、それがストレージを利用しようとすると、規格が異なるため、連携が困難になる可能性がある」(チャブラ氏)
IaaSは、あらゆるものをオンプレミスに保持するよりも費用が高くつく場合もあると同氏は話す。だが基本的には高額になったコストがメリットを帳消しにするほど深刻にはならないとも付け加えている。「部分的にコストが高くなることがあり、顧客はそれを不安に思うかもしれないが、心配には及ばない」と同氏は締めくくった。
競争上の優位性
ERISによるClearSky Dataを用いた試験運用段階には、LinuxベースとWindowsベースのファイルサービスの立ち上げがあった。
リクター氏は、ERISがチャージバックシステム(ITサービスを使用する部門が費用を負担する仕組み)を採用していることから、同氏が担当する研究グループは、費用を多少抑えるために旧社内システムを選択したり、あるいはClearSky Dataのインフラを選択したりする可能性があると考えている。
「研究グループが、現時点では当団体のシステムで提供できる基準を超えるデータ管理とセキュリティ管理を含む契約をしても、グループにはその要求を漏れなく満たすオプションが与えられるようになっている」(リクター氏)
同氏は、これによってPartners HealthCareは競争の激しい研究市場で優位に立てると付け加える。
「この仕組みにより社内顧客は、要件が厳しい契約を抱えていても、その契約を取り付ける前段階としての外部監査を受ける必要がなくなる。このような部門の多くは、セキュリティとコンプライアンス準拠について非常に高い基準レベルを用意しているかどうか監査を受けなければいけない。つまりそのレベルがあらかじめ満たされているのであれば、それは労力の削減という点において競争上優位に働く」(リクター氏)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「Excel至上主義」の終わらせ方 丸2日の手作業地獄から情シスと現場を救うには
-
2
取手市がVDIと決別した理由 更改費用「4倍超」を約1.7倍に圧縮
-
3
「Microsoft 365のセキュリティ運用」に関するアンケート
-
4
急増する「AIはこう言ってる」マン 判断を狂わせる「AI忖度」を防ぐには?
-
5
221人調査で分かった「情シス最大のストレス」は?
-
6
「Salesforceのテスト自動化ツール」に関するアンケート
-
7
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
8
IT製品の導入に関するアンケート「サーバ&ストレージ」編
-
9
「AI時代の統合基盤・エンタープライズAI管理」に関するアンケート
-
10
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
年収2000万「クラウドセキュリティのプロ」になれる資格とは
-
2
セキュリティソフトをすり抜ける標的型攻撃メール、不審メールの見破り方とは?
-
3
Windows Updateの通信集中で回線が逼迫、ネットワーク刷新事例に学ぶ解決策
-
4
財務を戦略的組織へ進化させるAI活用術、4つの主要な障壁と解消方法
-
5
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
6
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
7
標的型攻撃メールを見破るには? サンプル文面を例に傾向を解説
-
8
商用利用の安全性を確保し大量のコンテンツを高速で生成する、AI活用の秘訣
-
9
マンガで解説、1日で生成AI環境を構築できるワークショップの中身とは?
-
10
Dark AIが台頭する時代の新発想、「より高度なAIで対抗する」具体的方法とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー