IT担当者が語る
アップストリームとマネージドのKubernetesを比較 それぞれの長所と短所は
ITベンダーはKubernetesのパッケージ化を急いでいるが、ライバルは他のベンダーではない。アップストリーム版や企業の独自コンテナオーケストレーションプロジェクトだ。
Kubernetesをパッケージ管理することで使いやすくなるのは間違いない。しかしDIY(自社独自の)アプローチでKubernetesを稼働させることにこだわる企業もある。
コンテナの流行に乗って、プライベートクラウド用とハイブリッドクラウド用のKubernetes構成をパッケージ化し、利益を得ようと考える企業向けベンダーは多い。Red Hat、Docker、Heptio、Mesosphere、Rancher Labs、Platform9、Pivotal、Google、Microsoft、IBM、Cisco Systemsなどがその例だ。こうしたベンダーが提供するKubernetesの独自のディストリビューションとしては、Red Hatの「OpenShift Container Platform」、Dockerの「Docker Enterprise Edition」、Rancher Labsの「Rancher」などがある。大半の製品はアップストリーム(サードパーティー製ではなくコアの)Kubernetesを土台とし、企業向けセキュリティ機能や管理機能を独自に加えている。
しかし依然として、リポジトリ管理サービス「GitHub」からKubernetesのソースコードを直接ダウンロードし、ITベンダーの仲介を受けないことを望む企業IT部門もある。
ITコンサルティング会社Indellientでクライアントソリューション部門のディレクターを務めるダミス・カルナラニ氏は次のように話す。「DockerEnterprise EditionやOpenShiftではなく、アップストリームKubernetesを選ぶ企業もいる。ベンダー独自のマネージドKubenetesは、初期段階では管理の役に立つかもしれない。だがソフトウェアライセンスのコストが常に懸念される。自社の技術チームの専門知識に自信を持つ企業は少なくない」
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オープンソースソフトウェアとセキュリティ
アップストリームKubernetesを導入した企業は語る
アップストリームKubernetesを導入したした企業の1つが、グローバルに教育用ソフトウェアを提供するRosetta Stoneだ。同社は、何年も前からDevOps(運用開発)プロセスでDockerを使用している。一方で本番環境にはコンテナオーケストレーションツールをまだ導入していない。2017年8月時点で同社は、自社アプリケーションにKubernetesは大げさだと考えていた。コンテナオーケストレーションにはDockerのクラスタ管理用ネイティブツール「Docker Swarm」の方がシンプルなアプローチだと評価していた。
1年が経ち、Rosetta StoneはアップストリームKubernetesを運用環境に導入することを検討するようになった。Kubernetesが業界内でのコンテナオーケストレーションの標準として人気があり、普及していたことがその理由だ。
「(2018年8月時点で)Kubernetesの最新バージョンであるバージョン1.10では、管理面の問題が取り除かれ、企業向けセキュリティ機能を実現するために必要なカスタマイズも少なくなっている。その点を考慮すると、Kubernetesに伴う管理の複雑さが懸念されたのは過去のことだ」Rosetta StoneでDevOps責任者を務めるケビン・バーネット氏はそう述べる。
「導入は遅かったが、その分成熟が進んだKubernetesのメリットを得られる。ライセンスコストの支払いも避けたかったし、既に環境を導入するサーバも手元にある。最終的には『Google Kubernetes Engine』のような、より包括的なクラウドサービスを導入するかもしれないが、現時点ではまだそうしていない」(バーネット氏)
「チームはオープンソースツールによるKubernetesの独自構成を手動で導入することを好んでいる」とバーネット氏は語る。サードパーティーベンダーが提供するマネージドKubernetesの機能を使いたいとは考えていない。将来クラウドの移植を妨げる恐れがあるためだという。
マネージドKubernetesを採用した場合、最初のインストールは簡単になっても、長期的に見ると管理が複雑になりかねない。こうした懸念を持つ企業IT部門もある。ベンダーが独自のKubernetesディストリビューションを利用しているような構成では、そうした問題が特に懸念される。Red HatのOpenShiftがその一例として挙げられる。
「無秩序に広がるコンテナと、ベンダーによってフォーク(分岐)されたKubernetesランタイムが組み合わさり、従来のIT運用に委ねられる事態になったならば、それは管理の悪夢だ」と、ある保険会社のDevOps変革責任者は言う。自社の製品評価プロセスを公表する権限がないという同氏は匿名を条件にそう語った。
同氏の会社では、既にRed Hatと関係を持っていることからOpenShiftを検討している。だがオーケストレーション用に新しい層を追加しながら、仮想マシン(VM)とコンテナ用を複数同時に管理するのは難しいだろうというのがDevOpsに責任を持つ同氏の予想だ。セキュリティパッチの適用などのIT運用プロセスに関しては特に困難になる。
「パッケージ化されたコンテナの中には、ユーザーがセキュリティパッチ適用プロセスを開発する必要のあるものが多数ある。既に作業が手いっぱいの状況で、なぜそのような厄介ごとを招き入れなければならないのだろう」と同氏は疑問を呈する。
マネージドKubernetesの導入でもたらされるメリット
「フォーク」は、オープンソースの世界では議論を呼ぶ言葉だ。ほとんどのベンダーは、自社のKubernetesを純粋なKubernetesコードから分岐していないと主張する。マネージドKubernetesを早期採用した企業によると、コンテナオーケストレーションツールを導入する際の最優先事項は、企業向けのサポートとセキュリティ機能だという。独自Kubernetesがアップストリームコードに準拠しているかどうかではない。
旅行業界のIT企業であるAmadeusはOpenShiftを早期採用している。「そのため、Red Hatによるセキュリティパッチの適用やKubernetesのフォークについては心配していない」と話すのは、Amadeusでコアプラットフォームおよびミドルウェア部門の統括責任者を務めるディートマー・ファウザー氏だ。Red HatはアップストリームKubernetesからフォーク、つまり分岐することを選択できたが、そうはしなかった。「Red Hatが今後もそのような行動を取るとは思えない」とファウザー氏は話す。
マルチクラウド環境におけるコンテナ移植に関してAmadeusは最前線に立っている。オンプレミスのデータセンターに加えて、「Microsoft Azure」「Google Cloud Platform」(GCP)、「Amazon Web Services」(AWS)の各パブリッククラウドにOpenShiftのインスタンスを配置している。ファウザー氏は、OpenShiftを利用すればマルチクラウド導入プロセスが円滑に進むと考えているという。
「Red Hatはオープンソースソフトウェアのディストリビューション管理を非常に得意としている。パッチの適用は一貫性があり、保守も簡単だ。移植可能なバージョンのKubernetesの管理についてもRed Hatを信頼している。アップストリームKubernetesのAPIの中には現れたり消えたりしているものもあるが、Red HatのケアによりOpenShiftには安定性がもたらされている」(ファウザー氏)
「DockerコンテナとKubernetesは、コンテナ環境全体に移植性を提供するデファクトスタンダードになっている。どのベンダーのKubernetes構成を利用しているかは関係ない」そう話すのは、医療情報テクノロジー企業Change Healthcareで製品開発部門のアシスタントバイスプレジデントを務めるスーリヤ・スラバラプ氏だ。
スラバラプ氏は、Change Healthcareが使用しているベンダーのコンテナオーケストレーションツールの具体名を挙げるのは避けた。だが同社では複数のサードパーティー製Kubernetesツールを使用しているという。2018年中にもコンテナを運用環境に導入する予定だと同氏は説明する。
「Kubernetesを利用してマルチテナント環境とDevOpsプラットフォームを実現するには、サードパーティーを頼る必要があった。重視したのはITチームの生産性向上だ。ITチームでは、組み込みツールを使用し、簡単な操作でコードをコンテナイメージに変換している。コンプライアンスポリシーとセキュリティポリシーを全ての製品チームが利用できる」(スラバラプ氏)
「Kubernetesによる標準的なコンテナ管理方法でも、環境間での一貫性は十分に提供され、運用の効率性が改善される。その一方で、オンプレミス、パブリッククラウド、顧客環境間における移植性の実現が長期的な目標だ」とスラバラプ氏は言う。
同氏はさらに付け加える。「Change Healthcareは医療IT企業だ。年中無休の企業向けサポートがないような未熟なツールを簡単に選ぶことはできない」
それでも、Amadeusのファウザー氏は1社のベンダーによるマネージドKubernetesを信頼することにはリスクがあることを認めている。そうした構成が市場で比較的人気のあるオプションの1つである場合は特にそうだ。
「Red Hatはエコシステム全体を支配することを望んでいる。そのため、他社のOpenShiftへのアクセス権をプラグイン提供のみに制限する恐れがある」と同氏は言う。
「そのようなことはまだ起きていないが、リスクが潜んでいることもまた事実だ」とファウザー氏は話した。
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