エンドポイント、サーバ、データ、あと一つは
マルウェア被害を最小限に抑えるインシデント対策に必要な4つの要素
ウイルスやスパイウェアなどのマルウェア攻撃は、実際に攻撃を受けたときの内容や規模を予想しづらい。本稿では、未知の要素を取り除き、細部までしっかりと詰めた計画を立てるためのポイントを解説する。
2018年前半から後半にかけて、マルウェア攻撃は増加すると見込まれていた。ここでいうマルウェアとは、ウイルス、ワーム、スパイウェア、トロイの木馬など、企業に深刻な被害をもたらす脅威の全てを指す。重要なデータの窃盗、暗号化、削除などどんな目的の攻撃でも、復旧するにはマルウェアによるインシデントへの対応計画を適切に用意することが不可欠だ。
SonicWallは年度の半ばに更新する「2018 SonicWall Cyber Threat Report」(2018版SonicWallサイバー脅威レポート)で、次のようにマルウェア攻撃の増加を報告している。
- マルウェアの量は102%増
- ランサムウェア攻撃は229%増
- 暗号化攻撃は275%増
- 仮想通貨採掘スクリプト「Coinhive」を使ったクリプトジャッキング(他者のコンピュータで不正に仮想通貨を採掘する攻撃)は2018年前期に560万件起こった
マルウェアによるインシデントへの対応計画を策定する際に問題となるのが、実際の攻撃の状況が予想を上回ることが多い点だ。セキュリティ啓発トレーニングベンダーのKnowBe4によると、攻撃の影響を受けるシステムの数はワークステーションが平均16台、サーバが平均5台だという。しかし米国の銀行National Bank of Blacksburgが最近受けた攻撃では、500台のワークステーションと、150台ある同行のサーバのうち120台が影響を受けている。
攻撃を受けるシステム、アプリケーション、データの数はともかく、いつ攻撃を受けるかは前もって把握できない。こうした未知の要素も、マルウェア対応計画に含めなければならない。この種の被害への備えを進める場合、企業環境には、最終的に復旧が必要な注意すべき領域が幾つか存在する。
マルウェア被害の拡大を防ぐために注意すべきポイントとは
エンドポイント データを盗もうとする攻撃者は、エンドポイントを侵害して、コンピュータ内の情報を収集し、データ流出の可能性を探る。ランサムウェアやクリプトジャッキングの最初の標的になるのもエンドポイントだ。全てのエンドポイントに個別のマルウェア復旧手段を用意するのは現実的ではない。そのためCEOのノートPCなど、攻撃を受けても即座に復旧しなければならない重要なエンドポイントを特定する。それ以外のエンドポイントには、PCのシステムイメージを作り直す手順を準備するのが適切だ。マルウェアを取り除いたと思っても、以前に侵害を受けたPCを運用環境に残すのは避けたい。マルウェアを完全に除去するには、攻撃を受けたPCのシステムごと取り除く必要がある。
サーバ サーバには、災害復旧(DR)計画が既に用意されているはずだ。1台以上のサーバが攻撃対象となっていることを突き止めたら、DR計画を実行に移す。エンドポイントと同様、攻撃を受けたサーバを運用環境から取り除き、システムイメージを作り直す必要がある。攻撃者は特定のPCやサーバへの攻撃を続けようとするため、マルウェアファイルを削除したからといって、クリーンな状態に戻ったと考えてはいけない。必ずイメージを作り直す。
データ データを暗号化して盗み出し、サーバを探索するハッカーを信用するわけにはいかない。ハッカーは攻撃の途中で、データを意図的に、あるいは誤って削除したり操作したりする恐れがある。ハッカーの暗号化解除メカニズムが、データを既知の適切な状態へと正しく戻すとも思えない。マルウェアによるインシデントへの対応計画の一環として、攻撃を受けたアカウントがアクセスしたデータの特定方法と、そのデータを侵害前の時点に復元する方法を用意する必要がある。
ディレクトリサービス 貴重なデータを特定して盗み出そうとする攻撃者は、持続性のある攻撃手段を手に入れることに高い関心を向ける。攻撃者はエンドポイントに加えて、資格情報の入手ももくろむ。資格情報があれば、ネットワークに常にログインできるユーザーアカウントを作成できるからだ。攻撃者はある程度高いレベルのアクセス権限があるアカウントを幾つか用意できれば、望みのままにネットワークに出入りできる。懸念する必要があるのはアカウントだけではない。持続性のある攻撃手段には、グループメンバーシップ、アクセス許可の割り当て、グループポリシーの設定権限も悪用できる。
ディレクトリサービスについて確認しておくべき点は2つある。
- 変更履歴の確認機能。攻撃者の操作内容と時間を把握することで、どこまで復旧する必要があるか確認する。
- ディレクトリを変更前の状態に復元し、復元によって取り除かれた変更のうち脅威ではない全ての変更に事後対応する機能、または個別のアクションをロールバックする機能
マルウェアからの適切な復旧の確立
DR計画は通常、具体的なシナリオに基づいている。例えば「サーバXが機能を停止したら、クラウドに復旧し、フェイルオーバーを実行する」という具合だ。しかしマルウェア攻撃の場合、シナリオは具体的な被害の内容を想定できない非常に大まかな計画になる。
それでもマルウェアによるインシデントへの対応計画を策定する必要がある。計画では、システムを正常な状態に戻す方法と、攻撃の影響を受けた恐れがある特定のワークステーション、サーバ、データセット、ディレクトリの設定を正常な状態に戻す方法を策定したほうがよい。こうした計画の策定は不可能ではない。全てのワークロードが攻撃対象になり得ることを前提に、ワークロードを重要なものとそうでないものに分類する必要がある。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「Excel至上主義」の終わらせ方 丸2日の手作業地獄から情シスと現場を救うには
-
2
取手市がVDIと決別した理由 更改費用「4倍超」を約1.7倍に圧縮
-
3
「Microsoft 365のセキュリティ運用」に関するアンケート
-
4
急増する「AIはこう言ってる」マン 判断を狂わせる「AI忖度」を防ぐには?
-
5
221人調査で分かった「情シス最大のストレス」は?
-
6
「Salesforceのテスト自動化ツール」に関するアンケート
-
7
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
8
IT製品の導入に関するアンケート「サーバ&ストレージ」編
-
9
「AI時代の統合基盤・エンタープライズAI管理」に関するアンケート
-
10
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
年収2000万「クラウドセキュリティのプロ」になれる資格とは
-
2
セキュリティソフトをすり抜ける標的型攻撃メール、不審メールの見破り方とは?
-
3
Windows Updateの通信集中で回線が逼迫、ネットワーク刷新事例に学ぶ解決策
-
4
財務を戦略的組織へ進化させるAI活用術、4つの主要な障壁と解消方法
-
5
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
6
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
7
標的型攻撃メールを見破るには? サンプル文面を例に傾向を解説
-
8
商用利用の安全性を確保し大量のコンテンツを高速で生成する、AI活用の秘訣
-
9
マンガで解説、1日で生成AI環境を構築できるワークショップの中身とは?
-
10
Dark AIが台頭する時代の新発想、「より高度なAIで対抗する」具体的方法とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー