単純作業から、複合的な作業の自動処理へ
次世代のRPA型bot「デジタルレイバー」「デジタルペルソナ」とは何か?
ロボティックプロセスオートメーション(RPA)は、個々のタスクを自動化するものから、特定業務の仕事全体を自動化するものに進化し始めている。RPAベンダー大手Automation Anywhereが提供する「デジタルワーカー」がその一例だ。
業務自動化の次の流れは、特定のタスクを自動化する従来のロボティックプロセスオートメーション(RPA)から、特定業務の仕事全体をほぼ全て代行するデジタルワークフォースへと向かっている。
RPAベンダーは既に、特定業務の仕事全般を代行する次世代のRPA型botを提供し始めており、それを「デジタルペルソナ」や「デジタルレイバー」と呼ぶ。
「こうした技術はこれまでのRPAより広範な仕事を代行できるため、デジタルレイバー(労働者)と呼ぶのがふさわしい」とコンサルティング会社PwCの新サービス・先進技術責任者を務めるスコット・ライケンス氏は語る。「RPAを複合的なbotに合成することによって、フルタイムの従業員と同等とまではいえないものの、特定業務の仕事の大部分を代行できる」
RPAベンダー大手のAutomation Anywhereが新しく提供するデジタルワーカーが好例だ。同社の各種デジタルワーカーは企業の一般的な職務の担当業務を代行する。例えばAmazon Web Services(AWS)向けのデジタルワーカー「Digital AWS IT Admin」(デジタルAWS IT管理者)は、
- サポートチケットの読み取り
- ユーザーパスワードのリセット
- 「Amazon Elastic Compute Cloud」(Amazon EC2)インスタンスの作成
- 使用状況レポートの生成
などを実行する。他に「Digital Azure IT Admin」「Digital Google Cloud IT Admin」「Digital SAP Accounts Payable Clerk」などもある。
同社でデジタルワーカーエコシステム製品マーケティングディレクターを務めるムクンド・スリゴパール氏は「人の役割を軸にして自動化のアクティビティーを構築することは、当社のエコシステムの非常に明確な方向性だった」と話す。
ロボティクスや機械学習、人工知能(AI)によって、個々のタスクだけでなく特定の職務の仕事全体を自動化する製品を開発しているのはAutomation Anywhereだけではない。Arago、Blue Prism、IPsoft、Kryonもデジタルワークフォース技術に取り組んでいる。
専門家は、企業の業務部門とIT部門のトップたちによるRPA型botの導入拡大を受け、自動化技術のベンダー各社は一斉にこの方向に向かうものとみている。
コンサルタント企業Gartnerのリサーチディレクターを務めるステファニー・スタウトハンセン氏によると、RPAの導入は急速に拡大しており、RPAソフトウェアベンダーの中には3桁の増収を達成した会社もあるという。
こうした市場の拡大を受けて、RPAベンダー各社はさらに先を見据え、より高度な機能の提供へ進み始めているようだ。
Gartnerの調査結果によれば、ベンダー各社のRPAソフトウェア製品ロードマップは「コンピュータビジョンや、既製オートメーション、自動スケールシステムを活用した高度な機能の計画を示している」とスタウトハンセン氏は指摘する。Gartnerは、RPA市場はタスクを対象とする自動化からプロセスレベルの自動化にシフトし、いずれはプロセスオーケストレーションに進むと予想している。
自動化の課題
企業におけるRPAソフトウェアの活用には課題もある。
スタウトハンセン氏によると、Gartnerの予想は、これまで以上にコンシューマーベースの価格を採用するRPAベンダーが増え、モデルが多様化するため、各ベンダーのサービスの比較が難しくなるのではないかという。製品の方でプラグアンドプレイの課金方式を採用したり、簡単に導入できる仕組みを提供したりしても、RPAプロジェクトを導入しようとする企業の側で分析やガードレール(リスク軽減)、ガバナンスが不十分なままでは導入が難しい。
「企業はこの分野の専門研究拠点を作り、将来的に規模を拡大できるようにプロセスを用意する必要がある」とスタウトハンセン氏は話す。
PwCのライケンス氏は、従来のRPAから職務全体の自動化に転換したい企業にとって、現時点ではあまり選択肢がなく、自動化に適するほど十分に標準化された業務プロセスはまだ少ないという。
「求人業務や、売掛金処理、買掛金処理などの標準的な業務プロセスは自動化の対象に適しているが、そのような好適業務は思ったより少ない。しばらくは容易に実現できるこうした単一プロセス自動化の多い状況が続くだろう」とライケンス氏は予想する。
効率向上か、変革か
ライケンス氏によれば、デジタルワーカーに仕事全体を代行させるより、RPA型botで個々のタスクを自動化する企業が多いという。個々のタスクの自動化は効率の向上には役立つが、変革にはつながらない。現行のプロセスを自動化するだけで、プロセスそのものを見直していないケースが多いからだ。
スタウトハンセン氏も、RPAの投資回収率(ROI)を最大限に高めるには、単一タスクの自動化で短期的な効果を追求するより、自動化に向けたプロセスの見直しや、自動化のスケーリング、他のシステムやプロセスと自動化の統合をどうするかを重視すべきであり、こうした課題に取り組むことがより大きなROIにつながるという。
ライケンス氏は「RPAのAI活用が進み、開始から終了までのプロセスを最大限に効率化する方法をAIで見つけることによってRPAの効果は高まる」と話す。
同氏は現時点で現行プロセスの自動化が中心であることに関し「プロセスを自動化して人の作業をデジタル化することには価値がある」と認めた上で「しかし、これまでに構築してきたプロセスはやり方や効率があまりよくないものも多い。これからは、開始から終了の間をインテリジェントな自動化に任せる段階に進む」と話す。
RPAを導入してプロセスに関する膨大なデータを収集することによって、そうしたインテリジェントな処理の基盤作りは始まっている、と同氏は語った。
業務のデコンストラクション
Automation Anywhereのスリゴパール氏によると、これからは企業のIT部門だけでなく業務部門のトップが自動化の導入を主導していくと想定して開発したのが同社のデジタルワーカーだという(デジタルワーカーは、AIと機械学習の開発者向けに世界初のbotストアとして2018年5月に開設した「Bot Store」で展開する)。
スリゴパール氏は、RPA型botで特定業務の仕事全てを自動化する企業もあるだろうが、それよりも人間の従業員の労働力を補強する目的でRPA型botを利用することの方が多いと説明する。
「このように特定業務の定型作業を自動化して人間の従業員が高度な作業に専念できるようにするRPAをデジタルペルソナと位置付けている」と同氏は話し、このような小さな自動化が企業における仕事のやり方を変えていくという。
「全ての仕事を人間が担当するやり方から転換し、業務のデコンストラクションが進むだろう。仕事を複数のスキルに分け、人とソフトウェアがそれらを分担する。その際に当社のデジタルワーカーが役に立つ」
一方ライケンス氏は、人とデジタル労働力をシームレスに併用するワークフォースを構築する段階はまだ遠いと予想する。RPAで自動化できるタスクを見つける作業は今後も続き、その後、標準化されたプロセスにデジタルワーカーを導入する方向に進むと同氏はみている。企業は標準的な方法で行う自社のタスクやプロセス、職務に使える既製のソリューションを購入し、自社固有のプロセスに合わせてそれをカスタマイズすることになるという。
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