市場規模は10倍以上に拡大
RPAの導入増加で見えてきた“落とし穴” いま最も関心が集まるテーマとは?
RPAは広く受け入れられ始めた。RPAの対象業務を拡大している企業もある。最新の動向を見てみよう。
ソフトウェアロボットで業務を自動化する「ロボティックプロセスオートメーション」(RPA)導入の広がりは、新たな段階に入った。
RPAを推進する上で、ガバナンス、チェンジマネジメント(組織の業務変革を効率的に推進するマネジメント手法)、ビジネス部門とIT部門の連携などを重視する必要性が高まっている――。RPAベンダーのUiPathが米マイアミで開催したカンファレンス「UiPath Forward」で、ある業界幹部はRPAのトレンドについてこう強調した。
RPAが普及し始めた当初、企業の従業員は自分の雇用を脅かす存在としてRPAに抵抗感を示した。現在そうした抵抗感は薄れつつある。管理職はRPAが状況を一気に変革する可能性を秘めていることを認識し始めた。同イベントで講演したスピーカーの論調は、おおよそ、この傾向で一致した。
拡大するRPA市場
RPAの導入が勢いづいている証拠に、調査会社のForrester Researchは2021年のRPA市場規模の予測を28億ドルから33億ドルに上方修正した。Forrester Researchの調査によれば、2016年の市場規模は2億5000万ドルだった。UiPath Forwardへの出席者数を見ても、RPAの急成長ぶりがうかがえる。出席者数は2017年の第1回に500人程度だったが、2018年は1500人超まで増えた。
製薬会社Merckで、インテリジェントオートメーション担当グローバル責任者を務めるブライアン・ギレスピー氏は、「RPAの普及拡大の背景にあるのは、ビジネスを変革する必要性の高まりだ」と述べ、さらにこう続ける。「経営幹部の間に、過去(会社創立以来)125年と同じやり方では経営を続けることが難しいという認識が広がった。これがRPA導入を推進する原動力になった。組織内のあらゆる部分で変革が求められている」
RPAの中心テーマはガバナンス
1年半前には、RPAはMerckが進める事業変革のごく一部でしかなかった。「当社は新しいテクノロジーの採用に対して保守的な傾向がある。そのためRPAをいったん導入してしまった後の制御が適切にできるかどうかを懸念していた」。ギレスピー氏はこう打ち明ける。その後、大掛かりな導入に向けてRPA導入の計画が一気に進展した。「単にRPAを導入するのではなく、急ピッチで大規模に進める必要があるという結論に達した」(同氏)
企業のRPAに対する姿勢が変化している。経営幹部のRPAに対する熱狂が需要を後押ししており、そうした中で従業員は反復的で単調な仕事から解放される可能性に目を向け始めている。RPAへの関心が高まる中で、企業はRPAを巡る最新の動きに対処できなければならない。そのためにはRPAガバナンスの確立が必要だ。
油田掘削サービスのBaker Hughesで、データアナリティクスデジタルテクノロジー担当ディレクターを務めるライア・ジョンソン氏は「RPA分野の最新動向を把握し、RPAに関連する問題を全体的に統制できるガバナンス」を確立する重要性を指摘する。
ガバナンスを確立するためには、組織内でRPAに関わる部署から幅広く人材を集める必要性が生じるだろう。Baker Hughesでは社内のサーバとツールのサポート担当者、データ収集と解析のスペシャリスト、プロジェクト管理部門などが、ガバナンスの主要メンバーだ。
ジョンソン氏はUiPath Forwardの講演で「ガバナンスの目的はどの業務にRPAの予算を割り当てるか、それぞれの関係者に適切な意見を出してもらうことにある」と説明した。このガバナンス構造は、Baker Hughesが全体として、最大限の投資利益率を引き出せるプロジェクトに照準を絞るよう設計されているという。
ガバナンスのもう一つの側面は、RPA導入の動きが制御できなくなる事態を防ぐことにある。ジョンソン氏によれば、RPAを求める声は、人事部門や会計部門などのバックオフィスからも寄せられている。
ジョンソン氏は「開発者がモジュール式の再使用可能なRPAのライブラリを作成すべきだ」と語る。これにより重複した無駄な作業が避けられる。ガバナンスは「組織横断的に共有できる共通のプロセスに目を向けること」でもある。RPAのライブラリの共有は、重要な検討事項だ。
「ガバナンスが鍵になる」。こう語るのは、医療保険会社AnthemでRPA業務を率いる、テクノロジー&センターオブエクセレンス担当シニアマネジャーのプラシャント・クリシュナクマー氏だ。同社は一部の業務でRPAを導入済みだ。現在はRPAを導入する業務をさらに拡大しようとしているため、特にガバナンスの重要性を感じるという。
「RPAへの関心は極めて高い。鍵を握るのは、それをどう管理するかだ」とクリシュナクマー氏は指摘する。
経営の変化は必須
組織はRPAを導入する際のチェンジマネジメントについて考えなければならない。「導入の妨げになるのは技術的な問題ではない。これはチェンジマネジメントの問題だ。われわれが多くの時間を割かなければならなかったのは、適切な関係者に幅広く関わってもらうことだった」(ギレスピー氏)
この考え方は、組織内のあらゆる方面へRPAへの理解を浸透させることが目的だ。対象となる組織のレベルによって伝える内容が異なる場合もある。例えばRPAに不安を持ち続けている従業員には、RPAによって雇用が奪われる心配はないという安心感を持ってもらう必要がある。
組織の上層部に対しては、RPAに対する過剰な期待を持っていることを前提にする必要がある。管理職にある上層部は、RPAならわずか数週間で大きな投資利益率を達成できるという印象を持っている可能性がある。ここではその過大な期待を調整することが目的になる。「管理職に対してはRPAの高い価値に目を向けさせ、本腰を入れた変革の取り組みとして考えてもらわなければならない」(ギレスピー氏)
ビジネスとITの連携
「RPAはビジネス部門とIT部門の橋渡し役になることが求められる。IT部門側は解決策を持っているが、その問題はビジネス部門側に存在する」とクリシュナクマー氏は説明する。RPA導入の取り組みは、IT部門とビジネス部門の両方の幹部に後押ししてもらう必要があると、同氏氏は提言する。
医療保険大手のUnitedHealth Groupは2017年、RPA導入を推進するための部門を編成した。同社のストラテジックイニシアチブ担当シニアディレクターのチャーリー・ジャコビー氏は「IT部門とビジネス部門の連携を進めている。両者の関わり合い方についての考え方が進化している」と語る。
Forrester Researchのバイスプレジデント兼主席アナリストであるクレイグ・ルクレア氏は、ビジネス部門とIT部門の管理職がRPAの責任を分担する方法について助言する。責任の約3分の2はビジネスが負い、残る3分の1をIT管理職が負う。
ルクレア氏はさらに両者が分担する具体的な業務について説明する。RPA導入に関するロードマップのメンテナンスや投資対効果の見積もり、RPAの設計、導入の優先順位付けなどの作業はビジネス部門が担う。ベストプラクティス、再利用可能なRPAのカタログ作り、専門家の起用、ベンダーおよびライセンス管理、などはIT部門が担当する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
事例
[株式会社マクニカ] アイカ工業に学ぶ脆弱性対策 情シスが把握できずにいたアセットも正確に把握 -
製品資料
[株式会社マクニカ] 「脆弱性総まとめ」解説 被害事例から考える必須の対策ポイント -
製品資料
[Splunk Services Japan合同会社] サイバー脅威「トップ50」完全解説ガイド、新たな攻撃手法に対抗するには -
製品資料
[株式会社うるる] 「入札市場」完全ガイドブック:メリットから資格取得のポイントまで -
市場調査・トレンド
[株式会社うるる] はじめての「自治体/官公庁入札」 必要な知識がすぐに学べる入門ガイド
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
2
Oracle巨大ITプロジェクトはなぜつまずいたのか 8年で導入1割、追加で170億ドル
-
3
Microsoft製品でここまで自動化できる 情シスがやめられる手作業10選
-
4
「世界一給与にハングリー」な日本のエンジニアが“雇用の安定”を求める理由
-
5
「技術屋」で終わらないために 情シスが今取るべき認定資格5選
-
6
「VMwareのコスト」に悩んでいるユーザー企業に送る、VMwareを残す・捨てる基準
-
7
後付けガバナンスの崩壊 PayPalが設計段階からデータを縛る理由
-
8
自宅のWi-Fiが「遅い」「途切れる」本当の原因は? Dellが推奨する鉄則
-
9
迫る“インフラ崩壊”の危機 米英を相次いで襲った「PLC悪用攻撃」の全貌
-
10
「GPTかClaudeか」だけでは不十分 AI選定で情シスが見るべき3つの仕組み
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
AIエージェントで多様な日常業務を効率化するための入門ガイド
-
2
AIが「わざわざ使うツール」になっていない? 業務で自然に使う導線にする秘訣
-
3
5回聞くだけじゃ足りない? トヨタ式「なぜなぜ分析」の正しい実践方法
-
4
JR西日本ITソリューションズが「監視業務の属人化」を解消した方法とは?
-
5
「脱Excel」か「Excel快適化」か? 現場にやさしい業務改善の進め方
-
6
インシデント対応工数を約3割削減、東京ガスの事例に学ぶ監視体制刷新のコツ
-
7
PostgreSQLの「機能」「性能」「運用」「拡張性」に関する悩みの解消法
-
8
5分で分かる「セキュア大容量ファイル転送サービス」の機能とメリット
-
9
Macの安全神話は崩壊? 最新の脅威動向から見えた攻撃のトレンドと有効な対策
-
10
情報セキュリティ対策早分かりガイド:25の自社診断で弱点と解決策を理解
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー