ロボット技術の既存ITシステムへの統合は、業種によってさまざまな形で行われており、CIOにとって新たな課題となっている。どのように取り組めばよいのだろうか。
EMS(電子機器受託生産サービス)を手掛けるFirstronicのジョシュ・ブルベーカー氏の仕事は、同社のような他の中小企業の上級IT幹部と多くの点で同様だ。
だがブルベーカー氏は、FirstronicのIT運用を統括するだけでなく、同社のロボットを支えるインフラも担当している。このインフラは、古いマシンをウイルスから保護するのに必要な隔離されたネットワークや、ロボットのプログラムに必要なデータベース、ロボットで生成される全データを保持するストレージスペースなどで構成される。
ブルベーカー氏は、プロセスエンジニアリングに携わった経験が役立っていると語る。この経験のおかげで、Firstronicの製造現場で稼働するロボットについて、エンジニアリング部門が何を望んでいるかを見抜けるからだ。
「彼らが何を求めているか、何を必要としているかが分かる」と同氏は付け加える。
ロボット技術は製造業で導入がいち早く進んだ。最近ではヘルスケア、農業、防衛といった業種がロボットの導入をけん引している。他の業種の企業も、ロボットを使って業務の改善、低コスト化、スピードアップ、あるいはこれら全てを実現する方法を探っている。
ロボット技術の活用を目指す企業が増える中、ロボットも担当するIT幹部が多くなるだろうと、専門家は見る。こうした幹部の下でIT部門はロボットの導入、立ち上げや継続的なメンテナンスを担うことになる。そうなれば、IT部門は新たなスキルを動員し、新たな課題に優先的に取り組まなければならなくなる。
「新しいシステムを実装するときは、どんなものであれ、必ず統合が行われる。ロボットも、統合が必要という点では、特別なものではない。だが、統合の要件は他のシステムとは異なっている」と、カーネギーメロン大学のロボット工学教授ハウイー・チョセット氏は指摘する。
「電力、データの通り道、安全ケージ、実際のメカニズム自体など、各種のシステムを組み合わせなければならない。ロボットを動かすにはさまざまなITが必要になる」(チョセット氏)
チョセット氏は、ロボット技術のあらゆる使い方に当てはまるルールや要件はないと語る。技術やユースケースが非常に多岐にわたることから、1つの企業とそのIT部門が業務用にロボットを導入し、サポートしていくのに何が必要かを、普遍的に説明することはできないという。
だが、企業における一般的なIT要件として以下が挙げられると、同氏などの専門家は説明している。
「ロボットは、買って設置すればすぐに使えるわけではない」とチョセット氏は語る。同氏はロボット技術の導入を計画している企業に、ロボット工学の専門家を採用するようアドバイスしているという。
「私が見てきた範囲では、ロボット工学の非専門家は、ロボットをどこに利用できるかについて、誤った判断を下しがちだ。ロボットに何ができ、何ができないかを理解していないからだ。従って第1の鉄則は、ロボット工学の専門家を確保することだ」(チョセット氏)
チョセット氏によると、ロボット工学の学位を授与している大学はほとんどなかったが、課程を新設する大学が増えている。ロボット工学の専門知識を持つ学位取得者は高給取りだ。カーネギーメロン大学でロボット工学を修了した学士の初任給は年収10万ドルを超え、博士課程に進んだ学生では同20万ドル以上になるという。
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