「ロボティックプロセスオートメーション」(RPA)導入に当たっては概念実証が重要視される。だが、専門家の見方は異なる。
人間がコンピュータを使って実行する定型業務をソフトウェアロボットで自動化する「ロボティックプロセスオートメーション」(RPA)。その導入に意欲的な企業の多くは「概念実証」(POC:Proof of Concept)にこだわる。だがRPA技術の専門家デビッド・ブライアン氏によれば、それは良いことではないという。
「顧客のところに行って、既に実証されている概念を何度も実証するのは気が引ける」とブライアン氏は語る。簡単なスプレッドシートを使って従業員が1人でこなせるようなシンプルなプロセスを自動化するだけで、概念実証は成功だからだ。
だが概念を実証したとはいっても、実際に実証できたのは、このテクノロジーが正しく機能するということだけだ。「ビジネスケースを提案できるかどうか、希望通りの効果を達成できるかどうかについては、実証できていない」とブライアン氏は語る。同氏によれば、企業がRPAを検討する際に重視すべきはPOCではなく「価値実証」(POV:Proof of Value)であり、「その方が大きな課題だ」という。
ブライアン氏は、RPAなど「未来の働き方」を実現する技術のコンサルティング、導入、マネージドサービスを手掛けるSymphony Venturesの共同創業者兼最高執行責任者(COO)だ。3年前の創業以来、Symphony Venturesは世界各地で幅広い業界のRPAプロジェクトに取り組み、これまでに世界の5大陸でRPA導入に携わったという。
Symphony VenturesがこれまでRPA化に携わった業務プロセスも多岐にわたる。RPAはプロセス特化型のソリューションではなく、そうしたソリューションがカバーしない、ルールベースの手作業業務を自動化するものだからだ。当然ながら、手作業業務の内容は企業ごとに異なる。
「例えば5社の企業が同じERPシステムを導入していたとしても、設定は各社のルールによって異なる。そのため、手作業業務の内容も違ってくる」とブライアン氏は語る。
Symphony Venturesには、手作業業務の自動化を依頼してくる顧客企業がある。その場合、Symphony VenturesはRPA技術を使って、手作業でやるのと同じ手順で業務を自動化する。また一方では、RPA化の前にまず業務プロセスの最適化でサポートを求めてくる顧客企業もあるという。
「その企業がどのような課題を抱えているかによる」とブライアン氏。RPA化の対象となるのはルールに基づく業務だが、ルールには非常に複雑なものもある。実際、Symphony Venturesがこれまでに手掛けたRPAプロジェクトの中には、RPA化する業務プロセスを理解するのに数カ月を要したものもあるという。
ただし移行の流れがどうであれ、ルールの複雑さがどうであれ、RPA化に際しては幾つかの段階を踏み、POVを実施する必要がある。RPA導入時に実行すべき5つのステップを紹介する。
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