多様性のある人材が必要
企業の“機械学習離れ”を生み出さないための3つのポイント
ただ最先端のテクノロジーだという理由だけで機械学習を導入しても、ビジネスの改善効果はない。事業における意思決定プロセスに機械学習ツールを組み込む方法について、3つのポイントを紹介する。
機械学習は、企業のデータの見方を変え、新たなデータ分析手法を提供する。ビジネスで有利な結果をもたらすための、機械学習アルゴリズムの使い方のポイントを3つ紹介する。
1.機械学習で改善する対象を決める
驚くほど多くの企業が、最先端のテクノロジーだという理由だけで機械学習の導入を考えている。機械学習を使って改善したい課題があるわけではない。
ビジネスを改善する手段の1つとして機械学習をうまく活用するには、まず、取り組みの改善方法を明確に定義することが必要だ。信用調査会社のDun & Bradstreetでは、機械学習を業務に使うことでどのような効果を得たいのか認識している。それは、機械学習とデータを使った優れた予測分析を基に、顧客がより賢明なビジネス上の意思決定ができるよう支援することだ。
Dun & Bradstreetでは機械学習ベースのリスク分析を繰り返し実験している。不正行為をする人の絶えず変わる行動を検知するために、機械学習アルゴリズムを使用している。これらのアルゴリズムを使って信用リスクの分析も行う。
「顧客の支払い延滞の特定、不履行スコアリング、詐欺リスク計測などの用途に機械学習を利用することで、既存の手法を補完している」と話すのは、Dun & Bradstreet高度分析部門のアラ・クラムスカイア氏だ。
併せて読みたいお薦め記事
機械学習の選択
IT部門は機械学習にどう向き合うべきか
機械学習は、ビジネスの各種タスクにさまざまな方法で使用できる。基本的な洞察を提供するだけで十分なタスクならば、機械学習アルゴリズムへの手入力を必要としないこともある。例えばサプライヤーに関する自動ニュースアラートを提供するようにアルゴリズムを構築すると、自社のサプライチェーンに名を連ねる企業が破産手続きを行った場合に自動通知するようにできる。
さらに複雑な、企業の競争上の優位性を高めるためのタスクだったらどうだろう。そのような場合、競争相手を追い越すには、機械学習ソフトウェアを実行するだけでは足りないだろう。企業の命運を賭けた複雑なタスクには、機械学習と人間の洞察を組み合わせることが強く推奨される。次にその手法を説明する。
2.人手を使って機械学習に情報を提供する
複雑な機械学習アプリケーションのプロセスには、人間の考え方を取り入れることが不可欠だ。分析テクノロジーが急速に進化しているとはいえ、創造性や複雑な観念を必要とするときは、依然として人間の考え方が重要な基準になる。機械学習が持つ大きな可能性に分析チームが惑わされる恐れもある。テクノロジーを使用してデータ分析の全てを自動化しようとする取り組みが、分析結果の品質にどう影響するかに注意を払わなければ、そうした混乱が起こり得る。
Dun & Bradstreetでグローバルデータサイエンス部門の責任者兼シニアディレクターを務めるカロリーナ・キエルズコワスキー氏は次のように語る。「いったん機械学習や人工知能(AI)システムを導入したら、ボタンを1つ押すだけで全ての問題が解決すると考える専門家もいる。それは間違いだ」
キエルズコワスキー氏によると、より深い分析的洞察やビジネス価値をもたらすには、ビジネスに関するあらゆる洞察を結び付けて考えることができる人材に、機械学習ツールを使わせる必要があるという。例えば統計学者、予測モデル作成者、データサイエンティストなどの人材が挙げられる。
Dun & Bradstreetでは、チームや人材が持つ専門知識や経験を応用することで、機械学習の工程から最大の価値を引き出せることを見いだした。Dun & Bradstreetでは社内に擁するデータ分析人材に大いに自信を持っている。機械学習ツールは従業員の代わりになるのではなく、そうした従業員を補完すると考えている。そして、このことが次の提案につながる。
3.人間が持つ偏見とアルゴリズムの持つ偏見を把握する
人材を重視するのは、機械学習の価値を引き出すためだけではない。機械学習システムが偏ったデータ分析をすることを防ぐ点でも重要になる。機械学習戦略では、人間とアルゴリズムの両方で偏見や偏向が起こり得る。人間が自らの偏見を認識するのは難しいかもしれないが、それでも認識すること自体は可能だ。しかし本稿執筆時点では、機械は自らの偏向を認識できない。
機械学習アルゴリズムの偏向を最小限に抑えるには、アルゴリズムを扱う従業員に多様性を持たせることが有効だ。2018年3月に「CIO Dive」Webサイトに掲載された記事の中で、アレックス・ヒッキー氏は次のように指摘している。「多様性のあるチームを編成してアルゴリズムを学習させることで、システムの偏向が小さくなることが示されている。そのようなチームを編成する責任は経営陣の肩に掛かっている」
多様な背景を持つメンバーでチームを編成するメリットの1つは、さまざまな角度から機械学習アルゴリズムを検証できることだ。そうすることで、全体的に似たメンバーが多いチームでは見落とす恐れのある潜在的な偏向を見つけ出す。その後、偏向の回避方法をアルゴリズムに学習させることができる。この手法は、アルゴリズムを構築する際にプログラミングに潜む偏向のせいで、機械学習戦略の成果が他と比べてある地域やグループにとって不利にならないか検証する場合に特に当てはまる。
実現することを明確にし、人的資源を頼りにして、偏向を注意深く監視する。これらは、ビジネスプロセスにおける機械学習の統合を最適化する3つの基本的な方法だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「Excel至上主義」の終わらせ方 丸2日の手作業地獄から情シスと現場を救うには
-
2
急増する「AIはこう言ってる」マン 判断を狂わせる「AI忖度」を防ぐには?
-
3
取手市がVDIと決別した理由 更改費用「4倍超」を約1.7倍に圧縮
-
4
221人調査で分かった「情シス最大のストレス」は?
-
5
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
6
「AI時代の統合基盤・エンタープライズAI管理」に関するアンケート
-
7
自宅のWi-Fiが「遅い」「途切れる」本当の原因は? Dellが推奨する鉄則
-
8
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
9
本当に安いPCで十分か? “すぐ重くなる”を防ぐノートPC選びの絶対条件
-
10
Claudeの不可視透かしに批判殺到 著作権消失や誤判定に潜む企業リスク
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
年収2000万「クラウドセキュリティのプロ」になれる資格とは
-
2
セキュリティソフトをすり抜ける標的型攻撃メール、不審メールの見破り方とは?
-
3
Windows Updateの通信集中で回線が逼迫、ネットワーク刷新事例に学ぶ解決策
-
4
財務を戦略的組織へ進化させるAI活用術、4つの主要な障壁と解消方法
-
5
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
6
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
7
標的型攻撃メールを見破るには? サンプル文面を例に傾向を解説
-
8
商用利用の安全性を確保し大量のコンテンツを高速で生成する、AI活用の秘訣
-
9
マンガで解説、1日で生成AI環境を構築できるワークショップの中身とは?
-
10
Dark AIが台頭する時代の新発想、「より高度なAIで対抗する」具体的方法とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー