「遅滞なく進むケースは皆無」という実態
マイグレーションでダウンタイムを抑えるために注意すべき点は?
データ、ソフトウェア、ハードウェアのマイグレーションでは、新しい環境の機能と設定をフル活用し、アプリケーションのダウンタイムを最小限に抑える必要がある。企業のマイグレーションの実態を見てみよう。
ITシステムのマイグレーションにはさまざまな形態があり、複雑さも異なる。マイグレーションとはデータやソフトウェア、ハードウェアの単体または組み合わせを、ある運用方法からより優れた方法へと移行させることを指す。
より具体的には、プログラムやソフトウェアを新しいシステムに移行させたりアップグレードしたりする、あるいはITシステムのリソースを異なる物理インフラに移行させるのがマイグレーションだ。種類が異なるデータベース間やストレージ間、サーバ間、フォーマット間で、データを移行させることもマイグレーションに含まれる。アプリケーションを社内サーバなどオンプレミスのITインフラからクラウドへ移行させることもあれば、クラウドサービス間で移行させることもある。
移行規模は、1つのアプリケーションや1つのシステムを移行させる小規模のものから、新しいアプリケーションの作成やネットワークの再構成/アップグレード、多数のシステム/サーバの移行を伴う大規模なものまで、幅広いケースが考えられる。
本稿で取り上げる例は、ITシステムのマイグレーションの一面をほんのわずかな紹介にすぎない。どのような種類、どれだけ複雑なマイグレーションでも、次の2つの基本的な原則を考慮しておく必要がある。
- 新しい環境の機能や能力をフル活用する。
- アプリケーションが正しく機能するように、設定と構成をメンテナンスし、必要に応じて都度変更する。
これらは簡単そうに見えるが、実はそれほど簡単ではない。
マイグレーションの実態
データ統合サービスベンダーのSyncsortが発行した、ITシステムのレジリエンス(回復力)に関するレポート「2018 State of Resilience」を参考にして、企業のマイグレーションの実態を見てみよう。このレポートから、マイグレーションのプロジェクトが遅滞なく進むケースはめったにないことが判明した。このレポートでは5632人のIT担当者を対象に、ITシステムのレジリエンスに関する調査を実施し、そのうち1000人以上からマイグレーションの質問に対する回答を得た。
調査では、ITシステムのパフォーマンス計測に企業がどのような指標を使用しているかを質問した。1位になったのは「可用性/稼働時間」で、IT担当者の67%が選択した。2位は49%が選択した「アプリケーションのパフォーマンス」で、3位は47%が選択した「顧客の満足度」だった。
IT部門が抱える主な課題として、調査から明らかになった点がある。調査対象者の半数近くが「ビジネスの継続性や可用性の確保」を課題として認識している点だ。
こうした結果から、企業がデータやソフトウェア、ハードウェアのマイグレーションを実施するのは、可用性/稼働時間やアプリケーションのパフォーマンス、ビジネスの継続性などに課題を抱えているからだという実態がうかがえる。
マイグレーションの主な目的として挙がった項目の1位は「古くなったテクノロジーの更新」で、回答者の68%が選択した。続いて回答者の50%が「パフォーマンスの改善」を、42%が「サーバの統合」を選択した。「仮想技術の導入」と「保守費用の削減」が5位で、いずれも約35%の回答者が選択した。
ITシステムのマイグレーションを進めるに当たり、約92%の企業では社内スタッフがマイグレーションのプロジェクトを計画し、テストし、遂行していることが分かった。ただし、この数字にはサードパーティーのコンサルタントの協力を受けた場合と受けなかった場合も含まれている。残りの8%の企業は、全てをサードパーティーのコンサルタントに任せていた。
マイグレーションの実施タイミングについては、約4分の3に当たる72%の企業が、クラウドへのデータ移行、ストレージ間またはデータベース間でのデータ移行といった作業を週末に実施していた。平日の営業時間後にこれらを実施した企業は54%で、祝日に実施した企業は約20%だった。
5分の1以上の企業は、マイグレーション作業に合計で100時間以上かけていた。50時間以内で終えたのは全体の20%未満だった。51~100時間は10~15%で、1時間未満は5%に満たなかった。
半数をやや上回る54%の企業で、マイグレーション時に障害が発生しなかったことが分かった。障害が起きたと回答したのは42%だった。障害の内容を見てみると、マイグレーションプロセスの終盤で問題が発生したケースが43%で、アプリケーションの再起動が正常にできなかったケースが38%だった。こうした障害の原因としては、「切り替え前のテストが不適切だった」「新しいサーバに重要データを移行できなかった」「計画時の考慮不足」「(障害でシステムが止まった時間のことを指す)ダウンタイムが長過ぎた」などが挙げられた。
障害が発生した場合、結果としてマイグレーションを後日に先延ばしする企業が多いことも分かった。先延ばしの理由として、回答者の約半数が「ダウンタイムが長引くことへの懸念」を挙げ、約40%が「マイグレーションプロジェクトを続けるためのリソース不足」を挙げた。
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