コスト要因とGoogleの狙いを解説
新しいマルチクラウド管理サービス「Google Anthos」を使うといくらかかる?
「Google Anthos」は、「Google Cloud Platform」の新しいマルチクラウド管理サービスだ。Anthosの利用にかかるコストと利用料を見積もるときの落とし穴、Googleの狙いについて解説する。
Googleのクラウドサービス群「Google Cloud Platform」(GCP)に新たに追加されたマルチクラウド管理サービス「Google Anthos」。サブスクリプション方式の利用料とシステム要件の詳細を見ると、このサービスの詳細が明らかになる。
2019年4月に発表されたAnthosは、コンテナオーケストレーションツールの「Kubernetes」によるコンテナ管理を、オンプレミスとクラウドの双方で実現する。GoogleのマネージドKubernetes「Google Kubernetes Engine」(GKE)に加え、GKEの環境をオンプレミスで実現する「GKE On-Prem」などの同社製ソフトウェアで構成されている。
Anthosは決して安くなく、大企業向けのサービスだ。その料金を見積もるには、幾つかのステップを踏む必要がある。
併せて読みたいお薦め記事
クラウドベンダーのハイブリッドクラウド支援製品
ハイブリッドクラウドについて詳しく
Anthosの基本料金について詳しく解説
Anthosの基本料金は、100仮想CPU(vCPU)当たり月額1万ドルで、最低1年間の利用を確約する必要がある。この月額料金は、Anthosを構成するソフトウェア群のみに適用されるため、基盤として使用する「Google Compute Engine」をはじめとしたGoogleのクラウドインフラについては、別途料金が掛かる。加えてAnthosは100vCPU単位で販売される。これはジョブの実行に125vCPUしか必要としない企業でも、200vCPU分の料金を支払う必要があり、75vCPU分の余計なコストが掛かることを意味する。
月額基本料金には、Anthosのサポートは含まれていない。しかしGoogleは、既存のGCP向けサポートサービスの利用を必須としている。同社がAnthosの顧客に推奨しているエンタープライズサポート契約の月額料金は、1万5000ドルか、GCPの月間使用料金に基づいた独自の計算式による算定額の、いずれか高い方の金額となる。Googleが挙げている例によると、顧客のGCPの月間使用料金が110万ドルである場合、エンタープライズサポート契約の月額料金は、6万4000ドルとなる。
オンプレミス環境ではさらなるコスト要因が
Googleのクラウドインフラの料金は、インスタンスタイプやリージョンによって大幅に異なる場合がある。
例えば、2019年4月18日時点でローエンドの「n1-standard-1」インスタンス(1vCPUと3.75GBのメモリを含む)の月額料金は、アイオワリージョンでは24.2725ドルだが、香港リージョンでは33.98ドルだ。このため、アイオワリージョンでn1-standard-1を基盤としてAnthosを利用する顧客は、1vCPU当たり125ドル近くの月額料金を支払う計算になる。
システム要件を見てみよう。オンプレミスでAnthosを利用するには、GKE On-Premクラスタ用仮想マシン(VM)を作成するために「VMware vCenter Server 6.5」が必要だ。VMware製品は、企業データセンターで広く使われている。Googleはユーザー企業が既存のVMwareハードウェアで利用できる点を、Anthosのメリットとして挙げる。しかしこの条件はAnthosをオンプレミスに展開する場合、VMwareライセンスの一部をAnthosのために転用するか、ライセンスを追加購入する必要があることも意味している。
Googleの説明によると、ユーザー企業はオンプレミスのAnthosワークロード(システム)が求めるレイヤー4ネットワーク要件を満たすために、F5 Networksのロードバランサー(負荷分散装置)「BIG-IP」を導入しなければならない。
大企業向けの高額サービスが登場した背景は
Googleは、Anthosの100vCPUという課金単位をもっと小刻みにすることは、今のところ計画していない。
「われわれは、顧客から購入パターンについて聞いてきた話を基に、この料金体系を設計した」と、Googleの広報担当者は声明で述べている。「顧客ニーズの進化に合わせて、新たな料金オプションを徐々に導入していくつもりだが、現時点では、このオプションしか用意されていない」(同)
Google Anthosのサブスクリプション料金は、顧客がワークロードを正確にサイジングしないと、際限なく増えてしまうと、調査会社451 Researchのデジタルエコノミクスグループのリサーチディレクター、オーウェン・ロジャーズ氏は語る。顧客が100vCPU分の追加契約をしても、実際はその半分の50vCPUしか使わなければ、Anthosの利用料は実質的に1vCPU当たり200ドル(=1万ドル÷50)に達する。
Anthosを利用するのが理にかなうのは特定の顧客に限られると、ITコンサルティング会社Computer Economicsのフランク・スカボ社長は指摘する。「小規模な企業またはソフトウェア開発会社の場合は、従来のGCPサービスを利用する方が得策だ」(スカボ氏)
一方で「企業からは、ハイブリッド環境を確保するためなら、多少高額になってもよいという声も聞かれる」とロジャーズ氏は語る。
ERPのニーズを狙うクラウドベンダー
Anthosのリリースとほぼ同時のタイミングで、SAPの元経営幹部ロバート・エンスリン氏がクラウド営業の新責任者としてGoogleに入社した。エンスリン氏はSAPに27年間勤務し、ERP(統合業務)ソフトウェアの大規模で複雑な取引を数多く取り仕切ってきた。
ERPワークロードは、ビジネスにとって重要な要素だ。そのためGoogleを含むクラウドベンダーは、自社サービスへのERPワークロードの移行を促進しようと躍起になっている。エンスリン氏の仕事は、SAPの顧客をGoogleのクラウドに取り込むことだろう。Googleは、Anthosをその切り札と位置付けている。
ERPのクラウド移行はまだ進んでいない。調査会社Computer Economicsの最近の調査データによると、いまだERPの60%以上がオンプレミスで運用され、19%がホスティングを通じて使用されている。「クラウドの顧客を開拓する余地はまだたくさんある」(スカボ氏)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
技術文書・技術解説
[Jamf Japan 合同会社] MDMだけでモバイルセキュリティは十分? 不足する対策を16項目でチェック -
事例
[Wrike Japan 株式会社] 世界的な家電メーカーが実践する「クリエイティブプロセス効率化」の方法とは? -
事例
[Wrike Japan 株式会社] 世界的テクノロジー企業に学ぶ、プロセス標準化とプロジェクト納品自動化の秘訣 -
事例
[Wrike Japan 株式会社] ソニー・ピクチャーズ テレビジョンに学ぶ、次世代サービスデリバリーのヒント -
事例
[Wrike Japan 株式会社] ソミック石川に学ぶ、ICT浸透後に直面した「工数管理」の課題と解決策
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
脱VMwareの前提が崩れる BroadcomのVDDK公開停止で確認すべき点
-
2
IBM iは生かすもの 捨てすぎない「脱レガシーシステム」が注目される理由
-
3
「Copilot」はなぜ放置される? “議事録要約止まり”を脱する処方箋
-
4
膨らむAIコストに歯止め GitHubのマルチモデルルーターは何が違うのか
-
5
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
6
「VMware離れ」は本当か 3000社がVCF 9にかじを切った現実的な理由
-
7
「Microsoft 365」が乗っ取られる 跡形もなくMFAを破る手口
-
8
「Microsoft一択」で本当にいいのか 知らぬ間にライセンス費用が膨らむ真相
-
9
AI全部入り「Microsoft 365 E7」に企業が二の足を踏む訳 移行意向はわずか4%
-
10
エンジニアが選考を辞退する本当の理由 7割が隠す“面接の違和感”とは
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
マンガで解説:「ゼロトラスト」「SASE」の必要性とメリット
-
2
5回聞くだけじゃ足りない? トヨタ式「なぜなぜ分析」の正しい実践方法
-
3
インシデント対応工数を約3割削減、東京ガスの事例に学ぶ監視体制刷新のコツ
-
4
AIエージェントで多様な日常業務を効率化するための入門ガイド
-
5
JR西日本ITソリューションズが「監視業務の属人化」を解消した方法とは?
-
6
国税庁の次世代基幹システム「KSK2」稼働開始に向けて、対応すべき変更点とは?
-
7
5分で分かる「セキュア大容量ファイル転送サービス」の機能とメリット
-
8
ドラマで分かる、標的型攻撃メールの被害を受ける企業と回避できる企業の分岐点
-
9
「脱Excel」か「Excel快適化」か? 現場にやさしい業務改善の進め方
-
10
少額減価償却資産が40万円未満へ拡大、令和8年度税制改正で押さえるべき変更点
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー