中小企業がAIで勝つために
エッジデバイスでの機械学習はデータサイエンティスト不足を解消するか
データサイエンティストは数が少なく高給であることから、企業での雇用が難しくなっている。だが、エッジデバイスのインテリジェンスが大きく向上すれば、データサイエンティストを必要としなくなるかもしれない。
データサイエンティストを採用できる大手企業であれば、機械学習などの人工知能(AI)技術に対する現状のアプローチは非常に優れている。だが、中小企業は一般的に、高給のデータサイエンティストを採用する予算を確保できない。そうした企業がAI技術の潜在能力を取り入れる上で一つの解決策になりそうなのが、エッジデバイスでの機械学習だ。
併せて読みたいお薦め記事
エッジデバイス×機械学習
エッジコンピューティングをおさらい
Intelで人工知能製品グループのバイスプレジデントとアークテクチャの統括マネジャーを兼任するガディ・シンガー氏は、米ニューヨークで開催されたAI関連イベント「O'Reilly Artificial Intelligence Conference」でインタビューに応じ、「大半の企業では、AIシステムを統合管理するのに必要なデータサイエンティストの数は1人か2人だ」と話した。
労働市場は、高いスキルを備えたデータサイエンティストを全ての企業に供給できるのだろうか。NetflixやMicrosoftのような大手IT企業であれば、そうした人材を賄う十分な資金がある。だが、専門家によれば、予算を確保できない中小企業が自社に必要な人材を見つけられるとは考えられないという。
インテリジェントデバイス企業SWIM.AI(Swim)で最高技術責任者(CTO)を務めるサイモン・クロスビー氏によれば、AIシステム導入の監督や管理をできるほど高いスキルを備えた人材を、全ての企業が確保できる状況は期待できないという。一つの解決策は、インテリジェンスを持ったエッジデバイスを開発し、自動的に機械学習させ、調整させることだ。
「エッジデバイスがそれ自体に含まれるデータを処理し、そのデバイスを取り巻く世界についての理論を定式化する。そうすれば、物事は良い方向に向かう」とクロスビー氏は話す。
Swimは交通信号機など実世界の事物について、その事物が将来どのように動作するかを示す理論をデジタル的に定式化し、その理論を立証または反証して調整することが可能だと考えている。
エッジベースの機械学習の仕組み
カンファレンスに出席した専門家によると、エッジベースの機械学習は、AIシステムが企業にとってさらに役立つものになる上で重要な役割を担う可能性があるという。エッジデバイスで機械学習すれば、データをクラウドにアップロードしてアルゴリズムで分析する必要がなくなる。その結果、理論上はエラーの数を減らすことができる。AIシステム開発で起きる問題の大半は、不十分なトレーニングデータや典型的ではないモデルに原因があるとクロスビー氏は話す。エッジでの機械学習なら、そうはならない。
「エッジベースの機械学習に関して興味深い点の一つは、適合性の過剰や不足の概念がそのまま当てはまらないことだ」とクロスビー氏は説明する。エッジデバイスは、デバイス独自の動作を理解して予測する手段を備えるだけだ。デバイス固有の状況が原因でバイアスが生じることはあっても、それは個別の問題にすぎない。「バイアスが体系付けられることはない。つまり、バイアスがシステム全体に広がることはない」と同氏は言う。
インテリジェンスを備えたエッジデバイスが増え始めると、AIシステムにおけるバイアスの作用を考える重要性が高まる。カーネギーメロン大学のロボット工学部長を務めるマーシャル・ハーバート氏は、この種のシステムを第2形態のAIと呼んでいる。第2形態では、収集したデータをモデルに機械学習させるのではなく、モデル自体がデータを収集しながらトレーニングするのだ。
第1形態のAIは深層学習などの機械学習を中核要素とするシステムで、Netflixのレコメンデーションエンジンのようなものだ。これに対して第2形態のAIは、応答速度は速いものの、物理的な損傷を引き起こしかねない、つまり障害によってデバイスの寿命を損ねるリスクをはらんだアルゴリズムを利用する。
アルゴリズムの動作規範の必要性
こうした自律型デバイスに困惑するのは不自然ではない。人間の操作なしに動作する可能性を踏まえて、バイアス、リスク、正常な導入に総合的に対処するには、「恐らく、AIモデル自体が動作規範に準拠する必要がある」と、クロスビー氏は注意を促す。
そうなれば、その動作規範では、AIデバイスとそのトレーニング手法の両面で透明性のある手法を取り入れ、エッジデバイスで機械学習を実行するbotやアルゴリズムが業界全体のガイドラインに従って動作するよう保証することになるだろう。
「社会全体として、全員が納得して従うことができる指針となるような一連の原則を義務付ける。それによって、リスクが最小限に抑えられる」(クロスビー氏)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
“攻撃者優位”なサイバーセキュリティ、全ての「穴」をふさぐ方法とは? -
製品資料
実際に悪用される脆弱性は4%前後 優先的に対処すべき脆弱性を把握するには? -
製品資料
HubSpotの機能を拡張する法人データ活用法 -
製品資料
面倒で非生産的な「名寄せ」作業 高精度&高効率に実施するには? -
製品資料
名刺管理には「その先」がある 成果のでない営業活動から脱却する秘訣
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
ISMSの“コンサル丸投げ”が招く数千万円の無駄 NTTドコモビジネスの脱出劇
-
2
「VMware離れ」は本当か 3000社がVCF 9にかじを切った現実的な理由
-
3
「Microsoft 365」が乗っ取られる 跡形もなくMFAを破る手口
-
4
「OSの選定・導入」に関するアンケート
-
5
マンガで解説:KSK2稼働で何が変わる? 税務調査の高度化に備えるデータ管理
-
6
Netflixのバックエンドは「ほぼJava」 3000超のアプリを支える開発基盤の裏側
-
7
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
8
取手市がVDIと決別した理由 更改費用「4倍超」を約1.7倍に圧縮
-
9
脱VMwareに待った? AI基盤を掲げるBroadcomの思惑と情シスが直面する新コスト
-
10
なぜ人はいるのにDXが進まない? ライオンも直面した“老害”レガシーシステム
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
AIエージェントで多様な日常業務を効率化するための入門ガイド
-
2
AIが「わざわざ使うツール」になっていない? 業務で自然に使う導線にする秘訣
-
3
財務・会計はAI活用でどう変わる? 調査で見えた変革の道筋
-
4
JR西日本ITソリューションズが「監視業務の属人化」を解消した方法とは?
-
5
「脱Excel」か「Excel快適化」か? 現場にやさしい業務改善の進め方
-
6
「結局、一部の人しか使わない」 AI活用が業務に定着しない根本的な理由
-
7
コスト分析で見る「デバイス復旧」の代償 損失額から導きだされた投資戦略とは
-
8
Macの安全神話は崩壊? 最新の脅威動向から見えた攻撃のトレンドと有効な対策
-
9
ゼロトラストにおける「IDaaSの課題」と補完すべき重要機能とは?
-
10
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー