IoT機器への影響も
「Edge TPU」から考えるGoogleのAI戦略 AWSやAzureに対する競争力は?
Amazon、IBM、Microsoftなどの企業が競い合う人工知能技術。Googleの「Edge TPU」が次世代アプリケーション開発者の注目を集めている。
GoogleはTensor Processing Unit(TPU)のエッジデバイスでの使用を可能にした。サンフランシスコのGoogle Cloud Nextカンファレンスで、同社は機械学習モデル「TensorFlow Lite」をモバイル機器や組み込み機器で実行するためのアプリケーション専用チップである「Edge TPU」を発表した。
この発表は、盛り上がるAIハードウェア市場と、機械学習がモノのインターネット(IoT)や無線デバイスに与える影響の両方を表している。Edge TPUは、エッジデバイスとクラウドをつなげるAIスタックを可能にする。新世代のアプリケーション開発者の注目を集めて、Microsoft、Amazon、IBMなどの企業に対するGoogleの競争力を強化している。
アナリストはこの動向を高評価しており、「これはGoogleに内在する大きなギャップを埋めるものだ」と、Forresterのマイク・ガルティエリ氏は語る。
IoTアプリケーションにも影響
Googleのクラウド環境は、膨大なデータ量と処理能力を必要とするAIモデルの機械学習プロセスに適した、充実したプラットフォームだ。AIモデルの機械学習が完了すると、実稼働環境に配備されて推論や予測を実行できる。
Deloitteのマネージングディレクターであるデイビッド・シャツキー氏によれば、ワイヤレスサーモスタットやスマートパーキングメーターなどでは、クラウドへの接続や大きな電力を必要としないエッジデバイスに推論機能をもたせるのが主流になっているという。同氏は「このような構成では、デバイス上で推論を実行できるため、クラウドと端末間のデータ送受信のオーバーヘッドを回避できる」という。
従来Googleの顧客は、エッジデバイスにモデル推論機能を埋め込むために、NvidiaかIntelに頼らざるを得なかった。Edge TPUは、クラウド内でAIモデルに機械学習させ、これを実働環境のエッジデバイスに配備するシームレスな環境を提供する。
密接になりつつあるAIとIoTの関係にもこれは朗報だ。シャッキー氏によると、2018年のAIに特化したIoTスタートアップ企業のベンチャーキャピタルからの資金調達額は、2017年のIoTスタートアップ企業全体の資金調達額を上回った。「AIはIoTデータの解析手段として非常に有効であるため、今後AIを使用しないIoTアプリケーションはごくわずかになるだろう」と同氏は言う。
開発者向けキットも登場
ガルティエリ氏によると、機械学習したモデルを実行する際、GPUよりもIntelのFPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)環境の方がより効率的に実行することができる。この点で、Edge TPUはProject Brainwave 2017におけるMicrosoftの発表と共通性がある。「機械学習モデルと推論モデルには根本的な違いがある。Googleはこれを認識している。Googleは、これがTPUでありエッジで実行できるということを言っているだけではなく、これは推論のために特別に設計された基盤となるチップだということを主張している」と同氏は言う。
実際、ガルティエリ氏によると、Edge TPUによりGoogleは競争力を高めており、Microsoft、Amazon、IBMの3社も、早々に機械学習モデルと推論モデルを区別する動きをはじめているという。「これは、クラウドではないエッジも提供することにより、クラウドをより魅力的にするためにGoogleがした努力の成果だ」と同氏は言う。
SiliconANGLE Wikibonのリードアナリスト、ジェームズ・コビーラス氏もEdge TPUを戦略的な動きとして見ている。同氏はEdge TPUを、インターネット業界の巨人Googleが作成したハードウェア、ソフトウェア、ツールの完全なAIスタックで、人工知能技術の分野における、他ベンダーに対する競合力を倍にする手法の例だという。
「Googleは、クラウド内に包括的なアプリケーション開発環境とサービス環境を構築してパートナーや開発者を引き入れることと、彼らに新しい世代のアプリケーションを構築するための必要なツールを提供するという、強者の戦術を実行している」とコビーラス氏は語った。
コビーラス氏は、Googleの競争戦略を示す別の例として、Edge TPUソフトウェア開発キットの導入を強調する。まだβ版であるこの開発キットは、現時点ではアクセスを申請したユーザーのみが利用可能だ。このキットでGoogleのクラウド環境内にアプリケーションを構築することが可能であることを開発者にアピールする。この戦略で、充実した開発者支援体制を持つAmazonやMicrosoftと肩を並べようとしている。「Googleは、ブームが高まっているこの段階でキットを提供する必要があった」と同氏は言う。
Google AIスタックとは何か?その詳細はまだ明らかになっていない、とコビーラス氏とガルティエリ氏は口をそろえる。AIにおける革新はあまりに急速で、まだ始まったばかりだと捉えるべきだ。
「さまざまな用途に、異なるチップが必要になる」とガルティエリ氏は言う。「Googleはこの点において遅れているわけではない。データ処理量や消費電力の多い小型デバイスなどが登場する可能性があり、そのような用途に使用できるさまざまな種類のチップが登場するだろう」と付け加えた。
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