AIとストレージ【後編】
AI用ストレージに必要なのは単なる「速さ」ではない
AI用のストレージ要件はフェーズやユースケースによって変化する。要求される速度にも種類があり、場合によっては速度が重要ではないこともある。学習時と推論時でも要件は大きく異なる。
前編( Computer Weekly日本語版 8月7日号 掲載)では、AIを構築するに当たって求められるストレージの要件を検討した。後編では、AIシステムのフェーズごとに異なるストレージのI/O特性、NVMeやクラウド利用の可能性について解説する。
最適なメディア、NVMe
PA Consulting Groupのマコーレー氏は次のように語っている。「SSDを適切に利用することが、とてつもなく大きなメリットをもたらす。つまり、どのファイルシステムを使うか、そのファイルシステムをどのように最適化するか、そして(市販の)ストレージハードウェアを最大限に活用するためにアクセラレーターが必要かどうかになる。アクセラレーターはデータ管理とファイルシステムに多くの力を注ぐ」
現在はフラッシュストレージが一般的になっている。さらに、GPUの近くに格納するデータへの高速アクセスが必要なアプリケーションに最適なメディアとして、NVMeフラッシュも浮上している。HDDも依然存在するが、低層の大容量ストレージに追いやられることが増えている。
AIシステムにはIOPSパフォーマンスの高いストレージが必要だと誤解されることが多いが、実際に重要なのはランダムI/Oの処理能力だ。
AIの各フェーズとI/Oのニーズ
AIのストレージとI/Oの要件は、ライフサイクルの中で変化する。
一般的なAIシステムはトレーニングが必要で、そのフェーズではI/O処理が特に多くなる。ここで役立つのはフラッシュやNVMeだ。だが「推論」フェーズでは演算リソースの利用が多くなるだろう。
ディープラーニングシステムには動作しながら自身を再トレーニングする機能があるため、データへの継続的なアクセスが必要になる。ここで多くの企業が勘違いする。
IBMのストレージ部門でディレクターを務めるダグ・オフラハーティー氏は次のように述べる。「企業が機械学習のストレージについて語ることがあるが、GPUをビジー状態に保つために非常に広い帯域幅を必要とするモデルのトレーニングだけを話題にしていることが多い。だがデータサイエンスチームの生産性を真に高めるためには、取り込みから推論までのAIデータパイプライン全体を管理する必要がある」
AIの出力は非常に小さいため、最新の企業向けITシステムの多くでは問題にならない。つまり、AIシステムにはストレージの階層が必要だ。その点では従来のビジネス分析、ERP、データベースシステムに似ている。
Logicalis UKでAIリードとチーフデータサイエンティストを務めるジャスティン・プライス氏によると、オンプレミスシステムが商業価値を提供するためには少なくともSSDレベルのパフォーマンスが必要になるという。だが、AIシステムにも大容量ストレージが必要で、これにはHDD、クラウド、さらにはテープも使われる。
「ノードはそれぞれ異なる可能性があり、ユーザーはハイブリッド環境を使うことになる。重要なのは、柔軟性を持つことと、さまざまな応用事例の要件を満たすことだ。情報が“ホット”な場合はNVMeにキャッシュする必要があるが、コピーしてフラッシュに保存することもできる」と語るのは、ソフトウェア定義ストレージメーカーDateraで最高マーケティング責任者を務めるクリス・カミング氏だ。
クラウドストレージも、大量のデータを抱える企業にとって魅力的な選択肢だ。分析企業DataVisorのCEOインリャン・シエ氏は、クラウドも使えるがそのためにはデータがある場所にAIエンジンを移行しなければならないという。現在クラウドベースのAIを使用できるのは、最新世代のGPUを利用しない応用事例に限られる。
「ストレージは具体的なユースケースとアルゴリズム次第で異なる。ディープラーニングなどの一部のアプリケーションは演算リソースを集中的に使う。そのため当社の顧客はGPUを集中的に利用するアーキテクチャを使う。ストレージを多用するアプリケーションは、データがある場所で演算することを推奨する」(シエ氏)
クラウドに適している可能性があるのは、GPUをあまり使用しないアプリケーションだろう。例えばGoogleは、同社のインフラと連動するAI用チップを開発している。だがIBMのオフラハーティー氏は、技術面と金銭面の制約を考えると、現時点でのクラウドはAIの中核というよりも補助的な役割を果たしていると指摘する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Computer Weekly日本語版
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社MatrixFlow] 「物流リソース最適化」ガイド:人員・配車・傭車を出庫依頼の確定前に決めきる -
製品資料
[株式会社キーエンス] なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは -
製品資料
[株式会社セールスフォース・ジャパン] 「CRMは設計と無関係」は本当か? PLMとの融合で実現する高速開発 -
事例
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] AIエージェントの時代にどう備える? 「新たな働き手」を支える3要素とは -
製品資料
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] “横並びの自動化”から脱却、AI活用で生産性と競争力を高める秘訣
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
2
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
3
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
4
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
5
肥大化した「SFA」の沼 4カ月でBigQuery×AppSheetの新システムを構築した方法
-
6
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
7
次世代RPA「ハイパーオートメーション」が急成長か Gartnerが予測
-
8
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
9
昭和大学病院がeICUを導入、ICUの患者情報を遠隔地で一括管理
-
10
「何から始めればいい?」 情報漏えい対策で悲鳴を上げる中小企業のリアル
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
プログラミング不要で誰でも実現できる、ネットワーク運用管理の自動化とは
-
4
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
5
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
6
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
7
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
8
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
-
9
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
10
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー