拡張労働力を高める
コボット(協働ロボット)は小売業の戦力となるか
職場でのAI技術の未来は、人間とロボットがうまく融合されるかどうかにかかっている。小売業における協働ロボット(コボット)の用途に注目してみよう。
実店舗を構える小売店で「コボット」(Collaborative robots:協働ロボット)の使用が広がり始めている。コボットは、さまざまな環境において、人間の近くでの運用を念頭に設計された物理的なデバイスだ。コボットを運用する場所は、倉庫、店舗フロア、病院やホテルの廊下、オフィスビルなど多岐にわたる。これまでロボットは、問題を改善するための平凡な仕事の自動化を多く担ってきた。小売店はコボットが、ロボットの用途の多様化に役立つと感じている。
顧客中心のビジネスモデルを採用し、実店舗を構えるビジネスでは、業務へのコボットの導入が広がっている。スーパーマーケットやホームセンター、レストランなどがその例だ。
顧客に関わるコボット
コボットは人間に寄り添い安全に稼働できる。そのため、企業は顧客エンゲージメントの第一線にコボットを配置することにその用途を見いだしている。コボットは、さまざまな顧客対応の場面に顔を出す。例えば、レジでのサポート、店内の清掃、在庫管理といった場面だ。
ホームセンターのLowe's Companiesが2016年にリリースした「LoweBot」は、コボットの代表例だ。店舗フロアを動き回って、さまざまな言語で顧客の簡単な質問に答えたり、棚の在庫管理をサポートしたりするのがその役割だ。この顧客エンゲージメントにおいて、LoweBotは決まり切った質問に回答する。そうすることで、従業員は、より複雑な質問、要求、仕事への対処が可能になる。
スーパーマーケット大手のWalmartは2017年に米国内50店舗で棚をスキャンするコボットを導入した。これらのコボットは店舗フロアを自律的に動き回り、在庫を確認する。棚をスキャンして、価格が正しく在庫が適切であることを確認し、置き場所が間違っている商品を特定する。
Walmartは2019年前半に約1500台の床洗浄管理コボットを追加導入した。このコボットは、自律的に店舗フロアの汚れをこすり落として、液体がこぼれていないかどうかを確認する。汚れがひどい場合にはスタッフに通知を送る。これらのコボットは任務を遂行する際、人間との接触を注意深く回避する。1日中掃除を続けること、それが任務だ。
店舗で動き回るコボットを見掛けることは珍しくなくなった。Stop&Shop、GIANT Food Storesなどを所有するAhold Delhaizeは2019年、英国企業のRoboticalが販売する「Marty the Robot」を約500店舗に導入した。Marty the Robotは店内を動き回って、商品陳列棚の通路に汚れや落ちている食べ物がないかどうかを確認し、置き場所が間違っている商品を特定する。大掛かりな清掃が必要な場合はスタッフに通知を送る。
Domino'sやAmazonは屋外でコボットを使用
店舗内での顧客エンゲージメントと顧客対応に加えて、配送のサポートを目的に屋外でコボットを導入している企業もある。ピザチェーンのDomino's Pizzaは、ピザ配達コボットを世界各地の特定地域で試験運用している。目的は、試験運用の対象店舗から半径1マイル(約1.6キロ)の範囲の顧客に焼きたてのピザを配達することだ。ロボット開発を専門とするStarship Technologiesの協力により、Domino'sは1マイルの配達中に発生した問題に対応する配達コボットを作成した。このコボットは、時速4マイル(時速6.44キロ)でゆっくり走行し、4、5枚のピザを運ぶことが可能だ。そのため、歩道を安全に移動して、いつでもお腹をすかせた顧客にピザを配達できる。
Amazon.comも、引き続き人工知能(AI)技術を使用して、価格の低下と配達時間の短縮を実現する方法を模索している。顧客からの高まる需要に応えるため、Amazonは、商品配達にさまざまな自律走行車と半自律走行車の試験運用を重ねている。具体的には、ドローンやコボットだ。
2019年初頭、Amazonは歩道を走行する宅配コボット「Amazon Scout」を発表した。初期導入の対象となるのは、Amazonの本社がある米シアトル近隣地域の配達だ。Amazon Scoutは、配達中に遭遇する歩行者や好奇心旺盛な動物を避けながら、歩道を移動する。また雨が多いシアトルでも運用できるように風雨に耐えられる仕様になっている。特筆すべきは、増加する小包泥棒への対策だ。顧客が帰宅してAmazon Scoutから商品を取り出すための暗証番号を入力するまで、商品は顧客の玄関先で施錠された状態が維持される。
コボットと一緒に働く未来
小売業務にコボットを導入することで、企業は労働者の能率向上、コスト削減、一貫性のある顧客体験の提供を目指している。認識力を備えたコボットの導入が少しずつ進むにつれ、多くの作業で人間の労働者の用途を考え直すことになるだろう。既に平凡な仕事、手の汚れる仕事、繰り返しの多い仕事にコボットを導入する動きが、店舗の間で広がっている。このような仕事から人間の労働者を解放して、顧客エンゲージメントや複雑な質問への対応といった、より価値の高い仕事に人間が携われるようにするのが目的だ。ただし、多くのAI技術と同様、コボットは簡素化されプログラミング可能な作業にしか使われておらず、クリエイティブな仕事や感覚的な仕事には、まだ使われていないのが実情だ。
どのようなことでも同じだが、コボットのような新しい技術の導入と普及には時間がかかる。現場においてコボットに人間が恐怖感を覚えることなく、快適だと思えるようになる必要がある。コボットは専門技能や専門知識を持たない。人間の既存の業務を補完し、平凡な仕事と要求に付加価値を提供する目的に使用される。
企業での使用と受け入れが増加すれば、人間が効率的に作業を遂行するのを常時サポートする補完ツールとしてコボットは普及するだろう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「Excel至上主義」の終わらせ方 丸2日の手作業地獄から情シスと現場を救うには
-
2
取手市がVDIと決別した理由 更改費用「4倍超」を約1.7倍に圧縮
-
3
「Microsoft 365のセキュリティ運用」に関するアンケート
-
4
急増する「AIはこう言ってる」マン 判断を狂わせる「AI忖度」を防ぐには?
-
5
221人調査で分かった「情シス最大のストレス」は?
-
6
「Salesforceのテスト自動化ツール」に関するアンケート
-
7
IT製品の導入に関するアンケート「サーバ&ストレージ」編
-
8
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
9
「AI時代の統合基盤・エンタープライズAI管理」に関するアンケート
-
10
自宅のWi-Fiが「遅い」「途切れる」本当の原因は? Dellが推奨する鉄則
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
年収2000万「クラウドセキュリティのプロ」になれる資格とは
-
2
セキュリティソフトをすり抜ける標的型攻撃メール、不審メールの見破り方とは?
-
3
Windows Updateの通信集中で回線が逼迫、ネットワーク刷新事例に学ぶ解決策
-
4
財務を戦略的組織へ進化させるAI活用術、4つの主要な障壁と解消方法
-
5
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
6
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
7
標的型攻撃メールを見破るには? サンプル文面を例に傾向を解説
-
8
商用利用の安全性を確保し大量のコンテンツを高速で生成する、AI活用の秘訣
-
9
マンガで解説、1日で生成AI環境を構築できるワークショップの中身とは?
-
10
Dark AIが台頭する時代の新発想、「より高度なAIで対抗する」具体的方法とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー