Google、Microsoft、AWSなどのツールを使ってデータ活用
打倒Amazonに「AI」(人工知能)と「データ分析」で挑む小売企業
小売企業で、実店舗とオンラインでの購買履歴を活用したマーケティングが進んでいる。AI技術の活用やデータ分析によって、顧客に合わせて商品を提案し、需要を生み出すことができる。
家具、生鮮食品、洋服、電化製品、ゲームコンソール、ソフトウェア、ギフトカードなど、大概のものはオンラインで購入できる時代だ。
データ分析と人工知能(AI)技術の進化によって、オンラインショッピング事業者は、顧客の購買体験を個人に合わせて細かく調整できるようになった。技術主導の時代には、低コストのオンラインストレージサービスやソフトウェアを提供するAmazon.comのような企業も急速に成長している。
大手小売チェーンも、新たな需要を満たすためのイノベーションを着実に進めている。実店舗とオンラインの双方で、分析技術やAI技術を利用した革新的なアプリケーションや個別の顧客に合わせたマーケティングを導入している。
こうした技術の導入により、小売業界の文化も変わってきている。
小売に導入されるAI
「もはや小売企業が存在しているとは考えられない」。小売り大手Walmart子会社のWalmart Labsで、エンジニアリング部門のディレクターを務めるビラス・ビーララガバン氏は、こう話す。これは、2019年1月に米カリフォルニア州サンタクララで開催された、AI技術関連の年次カンファレンス「Global Artificial Intelligence Conference」のパネルディスカッションでの発言だ。
パネルディスカッションに参加したのは、ビーララガバン氏、小売り大手のKohl'sでデータサイエンスエンジニアリング部門のディレクターを務めるラビ・ブラガプ氏、Salesforce.comでデータサイエンスおよびエンジニアリング部門のディレクターを務めるアンジャン・ゴスワミ氏、飲食サービス大手のAramarkでAI部門の主任を務めるパバーン・アローラ氏の4人。
Amazon.comは、何年にもわたってオンラインストレージや動画/音楽のストリーミングアプリケーション、著名な音声アシスタント「Alexa」を顧客に提供している。一方で実店舗を運営する大手小売企業は一般的に、実店舗以外ではデジタルサービスを提供していない。Amazon.comのような完全なオンライン小売企業が進める、個人に合わせたマーケティング戦略にも後れを取っている。特にWalmartのような巨大小売企業では、最新技術の導入が遅れがちだ。
こうした技術の変化は、経済や文化の移り変わりと共に、米国の玩具販売大手Toys“R”Us(トイザらス)や百貨店大手Searsなどの小売チェーンに大打撃を与える一因になっている。
昔ながらの小売チェーンは動きが遅いと考えられてきた。だがここ数年、こうした小売チェーンを展開する大手企業は、個人に合わせた購買体験を顧客に提供するために、高度なデータ分析とAI技術の活用を、実店舗やWebサイトに生かそうとしている。
小売企業のWebサイトは、従来と比べて「個人に合わせて、Webサイトの構成要素を細かく調整するようになった」とブラガプ氏は言う。「Webサイトでの顧客の行動や行動パターンが、幾つかのツールや技術を利用して詳しく調べられている」と同氏は話す。
小売企業は、顧客にモバイルアプリケーションをダウンロードしてもらい、実店舗での割引や精算に利用してもらうよう促している。そうすることで、自社のWebサイト以外での顧客行動も掘り起こし、分析しているとブラガプ氏は説明する。
データの調査と利用
小売企業は、実店舗とオンラインをまたがったオムニチャネルで、カスタマーエクスペリエンス(顧客経験価値)に関するデータを収集できるようになった。個人に合わせた細かい調整も可能になった。これらが小売企業での最大の変化だとブラガプ氏は言う。
こうした変化が起きた理由は、Google、Microsoft、Amazon Web Services(AWS)などの大手ベンダーが提供するツールといった、手頃で比較的使いやすいAI開発ツールを数多く利用できるようになったことにあると、ゴスワミ氏は言う。「機械学習システムをはじめとするAIシステムの構築が、かつてないほどに簡単になっている」(同氏)
大手小売チェーンなら、大量のデータにアクセスできる。こうしたデータの大半は構造化されておらず、多様なデータを蓄積するデータレイクに置かれている。データ分析やAI技術活用を進める上で、こうしたデータが大いに役立つ。
今後の展望
今回のパネルディスカッションとは別のインタビューで、人材ネットワーク企業ToptalでAI技術およびデータサイエンス部門の責任者を務めるペドロ・ノゲイラ氏は、次のように答えている。「小売企業は自社のAI技術に、所有するデータを活用しようと考えている」
ノゲイラ氏は、少なくとも当面の間は小売業界のAI技術に関して「新たなことが数多く起きることはないだろう」と述べる。ただし同氏は、大手小売チェーンは今後もデータ分析とAI技術の活用で、個人に合わせて調整したマーケティングを続けるだろうと補足する。「小売企業は、顧客が購入を希望する製品を、より正確に予測できるように努めるだろう」
現代の小売企業は「顧客が今後購入を希望する製品を基に、需要を生み出す試み」に顧客分析の重点を置き続けると、ノゲイラ氏は予測する。AI技術は、今後数カ月~数年の間にサプライチェーン、特に物流分野に威力を発揮する可能性が高いと同氏は言う。小売企業は予測分析力を高め、配送経路の短縮や、悪天候の影響を受けそうな配送経路の回避ができるようになる。
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