AIがファッションデザイナーになる可能性も
アパレル業界を変革する人工知能(AI) 需要予測や服の品質保証にどう活用されているか
ファッションデザイナーやアパレルショップは、人工知能(AI)技術を利用して人気商品を予想したり、製造やサプライチェーンの効率を高めたりしている。AIとファッションは、自然な組み合わせになりつつある。
ファッション業界は巨大ビジネスだ。FashionUnitedによると、その価値は全世界で推定3兆ドルに上るという。これは全世界のGDPの2%に相当する。衣服が手元に届くまで、デザイン、製造、配送、マーケティング、販売など、多くの過程をたどる。ファッションデザインやアパレルショップでの人工知能(AI)技術の利用がファッションブランドの間に広がっているのは不思議なことではない。ファッションブランドは、流通の過程で、さまざまな段階の変革について考えている。
併せて読みたいお勧め記事
人工知能(AI)のビジネス利用最前線
アパレル業界のテクノロジー活用
AIが次に流行るファッションを予測
季節が巡る前に、ファッションデザイナーは新しい服のデザインに全力を尽くす。小売業者にとっては、服のデザインが変わり続けることを前提に需要の予測が欠かせない。しかしデザインは流行の影響を大きく受ける傾向があり、需要を見積もるのは難しい。
アパレル販売業者は前年の売り上げや、人気が出そうな商品に関する直感に基づいて、どのような商品に需要が生まれるか予測を立てる。しかしこれらは知識や経験に基づく臆測にすぎない。さまざまな要因により、こうした臆測は外れる恐れがある。例えば顧客の購入パターンの変化や、特定の色やスタイルの人気低下など、予測の難しい要素が存在する。The Business of Fashionの見積もりによると、AIベースのアプローチを需要予測に利用することで、予測ミスを最大50%減らすことができるという。
服のデザインにアルゴリズムの助けを借りている小売業者もある。画像を分析し、人気のスタイルをコピーして、そのデータを使って売れ行きの良いものとそうでないものを確認する。アルゴリズムはこの情報を利用して全く新しいデザインを生み出すことができる。AmazonやWalmartのような大手小売業者は独自のファッションブランドを持つようになっており、ファッショントレンドを判断できる機械学習システムを構築している。そう遠くない将来、こうしたシステムを使って流行のファッションをデザインできるようになるだろう。
AIによる製造と配送の支援
服をデザインしたら、分析ツールやビジネスインテリジェンス(BI)ツールを利用することで製造プロセス全体の効率を高める。縫製加工の多くは中国、インド、バングラデシュ、グアテマラ、インドネシア、ベトナムのような人件費の安い国で行われている。縫製加工にはAI技術が採用され始めたばかりであるものの、さまざまな目的で徐々に利用が進んでいる。ファッションの製造分野でAI技術を利用するのは、主に効率を改善するためと、縫製作業員の能力を補うためだ。本稿執筆時点では、品質保証のためにAIシステムで生地の不良を検出したり、元のデザインの色が完成品の生地の色と一致しているかどうかを確かめたりできる。
機械学習やその他の認識技術を同じように適用することで、経路が最適化され、全体的な配送コストと輸送時間が削減される。そのため配送の高速化にも効果がある。企業は、物流業務プロセスを自動化し、悪天候や道路工事などの不測の事態で予定が変わる場合に、別経路の輸送手段を素早く見つけることができる。
財布、サングラス、衣服などの高級品は偽造されることが多く、輸入品からこれらの偽造品を割り出すのは難しいこともある。しかし税関や国境での取り締まりにAI技術を適用することで、偽物を突き止めることができる。あるベンダーが開発したテクノロジーで、商品の写真を撮影し、アルゴリズムを使ってそれらを調べることができる。こうしたアルゴリズムにより、革、木材、金属などのさまざまな素材を分析し、その商品が本物か偽物かをユーザーに伝えることができる。
AIで服の購入体験を強化する
顧客はWebサイト、メール、ソーシャルメディアへの投稿、動画などのコンテンツが、個人に合わせて非常に細かく調整されていることに慣れてきた。こうしたコンテンツは顧客が今まさに欲しいと考えているものに合わせて作られる。顧客は簡単さと利便性も求めている。AI対応のショッピングアプリでは、顧客が服のスクリーンショットを撮影して、その画像に写っている購入可能な服やアクセサリーを特定することができる。その後同じ服を見つけたり、スタイルや見た目が似た商品を購入したりできる。
アパレル販売業者は、アプリケーションとバーチャル試着の提供を始めている。これらを利用する顧客は、自宅のソファでくつろぎながらジーンズやワンピース、さらには化粧まで試せる。Stitch Fixの同名サービスは、毎月服を自宅まで届ける個人向けのオンラインスタイリングサービスだ。本稿執筆時点では、デザインの流行、顧客の個人的な好み、フィードバックに基づく機械学習アルゴリズムを使用している。所属するスタイリストが、各顧客にとって最適な服やアクセサリーを選んで提供できるようにするためだ。
顧客がオンデマンドでより簡単に服を購入できるようにするために、多くのブランドが会話型のインタフェースを使って顧客の購入決定を後押ししている。例えばAmazonの「Alexa」、Googleの「Google Home」、Appleの「Siri」、Samsungの「Bixby」、Microsoftの「Cortana」などがこれにあたる。こうした音声ベースのインタフェースは、購入に関する一連の質問によってユーザーを助ける。関連商品や追加商品を提案できるように徐々に学習する機能もある。ファッション関連の企業はAIチャットbotも採用している。チャットbotを通じて顧客と24時間年中無休で関わり、多様な職務を支援することができる。
衣服は、手元に届くまでにさまざまな過程を経由する。AI技術はそうしたプロセス全体の各要素を変革する。ファッションへのAI技術の導入には課題があるものの、ブランドは将来を見据えて既にAIに投資し始めている。そして最終収益全体に影響を与え得る、AI技術の可能性を感じ始めているところだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社キーエンス] なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは -
製品資料
[株式会社セールスフォース・ジャパン] 「CRMは設計と無関係」は本当か? PLMとの融合で実現する高速開発 -
事例
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] AIエージェントの時代にどう備える? 「新たな働き手」を支える3要素とは -
製品資料
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] “横並びの自動化”から脱却、AI活用で生産性と競争力を高める秘訣 -
製品資料
[サイボウズ株式会社] AIが「わざわざ使うツール」になっていない? 業務で自然に使う導線にする秘訣
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
2
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
3
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
4
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
5
「中堅・中小企業のネットワーク・セキュリティ運用実態」に関するアンケート
-
6
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
7
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
8
情報漏えいはなぜ繰り返されるのか 今すぐ見直すべき「境界」
-
9
情シスの約8割が転職や退職を意識 調査で分かった“辞めたくなる最大の理由”
-
10
【漫画付き】ひとり情シス協会が明かす、RAG導入でしくじる企業「2つの共通点」
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
4
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
5
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
6
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
7
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
8
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
9
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー