ファッションテクノロジーで“仮想試着室”
「サイズ違いの返品をなくせ」、ファッション通販サイトが活用する新技術とは?
サイズ違いの洋服を通販サイトで買ってしまったユーザーは商品を返品する。ブランドによっては返品率が80%にもなるという。適正なサイズの洋服を買ってもらうために行っている通販サイトの取り組みとは。
スウェーデンVirtusize、米Clothes Horse、米LoveThatFitは、オンラインショッピングに付随する近々の課題を解決するために取り組んでいる。だが、その解決策は消費者のニーズに適合するのだろうか。
最新のファッションをオンラインで購入できることは消費者にとって便利なことだ。だが、小売業者には新たな問題が突き付けられている。一方、企業家には新たなニッチ市場がもたらされている。
オンラインショッピングでは試着ができないため、購入を検討している衣類のフィット感を確認することはできない。そう語るのは、2014年10月に開催された「Strata + Hadoop World」のパネルディスカッションにパネリストとして参加したスウェーデンに本社を構えるSaaSプロバイダーのVirtusizeで北米地域の営業責任者を務めるラスムス・トフテ氏だ。ファッション業界のサイズはブランドによって異なる。そのためサイズ表記は必ずしも衣類のフィット感の目安にはならないのだ。
これは意図的に作り出された状況だ。例えば、米Levi'sの商品なら必ずサイズが合うことを知っている消費者は、Levi'sの商品のリピーターになる。そう語るのは、米ニューヨーク市を拠点とするファッションテクノロジーのコンサルティング会社Third Wave FashionのCEOであるライザ・キンドレッド氏だ。同氏は上述のパネルディスカッションでモデレーターを務めていた。「ブランドの間ではサイズに関する積極的な協定はあまり結ばれていない。これが消費者にとってフラストレーションの原因となる」(キンドレッド氏)
仮想試着室がないため返品率は高くなる。返品率は50~80%とブランドによって幅があるとキンドレッド氏は話す。また、仮想試着室がないことは、ショッピングカートの高い放置率の一因にもなっている。ショッピングカートの放置率は60~70%にも上るという。この数値は、オンラインカスタマーエクスペリエンスの改善に取り組んでいたデンマークのリサーチ会社Baymard Instituteが蓄積した統計データに基づいたものだ。
ぴったり合うものを探す
Virtusizeは、サイズの問題解決に取り組んでいるファッションテクノロジーの新興企業の1つだ。同社は、この問題を個人に特化した方法で解決しようとしている。Virtusizeはユーザーにお気に入りのワイシャツやジーンズの寸法を入力するよう依頼している。これは、クライアントのお気に入りの洋服を復元するという伝統的なスタイルを貫いている米eBayの再販業者と仕立屋からヒントを得たものだ。この採寸はオンラインショッピングで参考にする衣類のシルエットを作成するのに使用される。顧客がオンラインショッピングをしていて、フィット感を詳しく知りたいと思ったときには、購入を検討している衣類のシルエットを手持ちの衣類のシルエットに重ね合わせることができる。
「サイズの呼称にこだわる必要はない。ユーザーが手にするのは2つの衣類の視覚的な表示だけだ」(トフテ氏)
サイズが適正になっても、フィット感の問題は依然として残る。ドレスに関するデータの多様性という問題を例に考えてみよう。トフテ氏によると、ぴったり合うものを探すのが最も難しいのはドレスだという。「ドレスには、さまざまな種類がある。そのため、多数のシルエットが必要になる。1つの小売業者を取ってみても何百もの異なる種類のドレスが存在する」とトフテ氏はいう。購入者がサイズを正確に把握していたとしても、ひだの具合や、裁断方法や生地がドレスにどのような影響を与えるかまでは把握していない可能性が高いだろう。
米ニューヨーク市を拠点とする新興企業のClothes Horseの共同設立者であるデイビット・ホイットモア氏は、この意見に同調し、シルエットの問題は非常に重要だと語る。ストレッチ性の高い生地についても、フィット感を特定するのは難しいと同氏は補足する。
Clothes Horseは顧客と衣料メーカーの両方から収集したデータを活用するアドバイスエンジンを開発した。顧客から収集するデータは「体形」「お気に入りのブランド」「フィット感の好み」だ。このエンジンは、同社のデータベースに登録されている全ブランドのあらゆる衣類に関する実際のフィットデータについて中立的な立場のサードパーティーデータベースを作成するためのものだとホイットモア氏はいう。フィットデータにはスリーサイズと袖丈が含まれる(Clothes Horseは英Fits.meが2014年12月に買収している)。このエンジンを支えているのは、アドバイスを行うときに生地などを考慮する同社が独自に開発したアルゴリズムだ。パネルディスカッションが行われた2014年10月の時点で、Clothes Horseはダウンジャケットからヨガパンツに至るまで、100種類もの製品カテゴリに取り組んでいた。
「この2つは適切なフィット感を特定する方法が大きく異なる衣類だ。当社が設計したアルゴリズムと参照しているデータでは、この2つの製品をマップする必要があった」(ホイットモア氏)
お客さまは神様である
これらのサービスプロバイダーが成功を収めるには衣類だけでなく、顧客についても理解しなければならない。具体的には、顧客の衣類に対するセンスだ。小売業者とデザイナーが、特定のカテゴリやスタイル/フィット感に衣類を分類しても、最終的な分類を決めるのは購入者である。「米L.L. Beanや米Land's Endの商品を購入する人は、ヨーロッパのデザイナーブランドを好む人とは異なる感覚を持っているだろう。顧客について知ることで、より的確なアドバイスを提供できるようになる」とホイットモア氏は話す。
企業は顧客のデータを個人ベースで追跡している。だが、Virtusizeのユーザーはアカウントを作成しなくてもサービスにアクセスすることができる。米バージニア州シャーロッツビルを拠点に活動する新興企業のLoveThatFitにとって、このような種類のデータは顧客との距離を縮める上で欠かせないという。同社の創設者であるジーナ・マンカソ氏は次のように話す。「このようなデータを当社が収集しているのは、顧客の好みを把握するためである。好みは大きな要素だ。私がゆったりした感じが好きでも、あなたは体にフィットする感じが好きかもしれない。顧客のスタイルの好みを把握すれば、他の衣類についてもアドバイスを提供できるようになる」
LoveThatFitは現在プライベートβ版の段階にあり、2015年3月にリリースを目指している。フィット感の問題について上述の2社とは異なる取り組み方をしている。同社は体にフィットした洋服を着ているときの全身写真をアップロードするよう顧客に依頼し、仮想環境で衣類を試着できるようにしている。同社のWebサイトによると、同社が独自に開発したアルゴリズムを使用して、写真の傾きやゆがみを調整しながら、顧客の体のサイズやフィット感にかかわるポイントを正確に特定しているという。LoveThatFitはソーシャルなプラットフォームなので、ユーザーは購入者のネットワーク内で購入予定の商品を共有することができる。
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