140万人が使うモバイルアプリで顧客の流れを把握
ネットもリアルも「無印良品」 消費者の心をつかむ良品計画のO2O施策とは
無印良品を展開する良品計画では、モバイルアプリを中核として、ネットストアと実店舗を結ぶ、O2Oの仕組みを構築。ネットとリアルで相互に送客し合う環境や、よりパーソナルなマーケティングを可能にしている。
良品計画は、生活雑貨店「無印良品」を国内外に約640店舗展開する小売業者。2014年2月期の時点で、営業収益は1787億円、従業員数はパートタイム社員も含め5728人となっている。主に衣料品や家具、雑貨、日用品、食品などのオリジナル商品を販売し、老若男女を問わず、多くの人から人気を集めている。最近でも、同社の「体にフィットするソファ」がインターネットのまとめサイトに掲載され、大きな注目を集めていた。
無印良品を中心とした専門店事業を運営する同社だが、2000年にはネットショッピングサイト「無印良品ネットストア」をスタート。インターネット黎明期からネットビジネスに積極的に取り組んできた。現在、7000点以上の商品を販売、ネットストアの全登録会員数は430万人以上、平均して毎日11万人超の利用者が同サイトを訪問しているという。
2013年5月にはスマートフォンアプリ「MUJI passport」の配布を開始。会員数は140万人(2014年3月時点)に及ぶ。近年では、MUJI passportをネットとリアルの橋渡し役として、O2O(Online to Offline)サービスの展開に力を入れている。
MUJI passportでネットとリアルの融合を目指す
O2Oサービスに注力するきっかけとなったのは何か。良品計画 WEB事業部 システム担当 課長、山際高志氏は当時をこう振り返る。「ネットストアを開設したことで、ネット利用者の購買動向などは把握していた。だが、実店舗の顧客については、年齢や性別、居住形態や家族構成、購買履歴など、いわゆる属性情報を把握できていなかった」
良品計画では、クレジットカード機能の付帯した「MUJI Card」など一部を除き、会員証やポイントカードの仕組みを顧客に提供していなかった。そのため、実店舗の購買状況や傾向は、POSデータと店舗スタッフの“肌感覚”で捉える他なく、「データとして活用できる状態ではなかった」という。
また、当時は実店舗の来客数も伸び悩んでいた。こうした背景の下、ネットとリアルで顧客情報を共有・活用し、相互に顧客を送客し合える環境の構築に着手した。
顧客の動向を把握する「顧客時間」
良品計画におけるO2Oサービスの要となっているのが、前述のMUJI passportである。
MUJI passportは、アプリ自体が会員証となっており、商品を購入する際に提示することで、ポイントやクーポンを利用できる。また、欲しい商品の取り扱い店舗や、商品の在庫情報をアプリ上で確認できる「ショッピングガイド機能」を搭載。店舗やネットストアでの商品購入、店舗でのチェックイン、商品レビューの投稿、商品開発への参加によって、「MUJIマイル」がたまる仕組みも備える。MUJIマイルは、累計数に応じてMUJIショッピングポイント(10ポイント=10円相当)がプレゼントされる。ネットストアとMUJI passportのIDはひも付けることができる。
例えば、アプリで商品を調べ、どの店舗に在庫があるか確認、その店舗にチェックイン(来店)、実際の商品を手に取って確かめ商品を購入、会計時のアプリ提示でMUJIマイルを獲得、後日商品レビューを投稿し、さらにMUJIマイルを手に入れる、といった消費者の一連の購買行動を捉えることができる。
良品計画は、顧客の動向を把握する指標として「顧客時間」という考えを大事にしている。顧客時間とは、商品の購入前、購入後までを含めた消費者の行動の流れを捉えようという考え方。商品の検討から購入、使用、消費までの一連の消費者行動を把握することで、POSデータや購買データを分析しているだけでは見えてこない顧客の実態をより深く知ることができる、と山際氏は話す。
同社では、MUJI passportを導入することで、ネットとリアルを行き来する顧客の消費活動を一元的に把握し、これまで十分ではなかった実店舗との連携も可能となった。ネットとリアルにおける消費者の顧客時間を横断的に捉えるための仕組みだといえる。
「無印良品は、衣食住に関する日用品を取り扱っている。ブランド認知力は高いが、誰もがイメージする象徴的な商品があるわけではない。そうした日用品が、なぜ売れるのか、どうして買われるのかを分析することが非常に重要となる」(山際氏)
データ分析基盤をクラウドサービスで構築
良品計画は、無印良品ネットストアにアクセスする利用者の各種ログデータの収集、保管、分析作業および、MUJI passportの利用状況の把握・分析に、米Treasure Dataが提供するクラウド型データマネジメントサービス「トレジャーデータサービス」を利用している。
トレジャーデータサービスは、大容量の時系列データを収集・保管・集計することができ、最近では、Webブラウザ内でデータを可視化する機能やアドホックでのクエリ実行を可能にするオプションサービスなどが追加された。
良品計画では、ネットストアとアプリの閲覧ログをいったんトレジャーデータサービス上で集計し、バッチ処理でデータ変換している。加工済みの閲覧ログは、米Amazon Web Services(AWS)が提供するクラウド型データウェアハウス(DWH)「Amazon Redshift」にロードされる仕組みだ。
Amazon Redshift上には、閲覧ログに加え、チェックインデータや実店舗・ネットストアの販売データ、マイルデータ、各種マスター(商品、店舗、顧客、在庫)も集約。それらのデータに対して、米Tableau Softwareが提供するビジネスインテリジェンス(BI)ツール「Tableau」などを用いて分析している。
良品計画のシステム構築を支援するリヴァンプの濱野幸介氏は「初期費用を極力抑えてシステムを構築したかった。また、WEB事業部のマーケターがデータを手軽に操作することのできるレスポンス性が必要だった」と各種製品・サービスの選定理由を説明した。
トレジャーデータサービスとAmazon Redshiftの使い分けについて、濱野氏は「現状の製品特性から、トレジャーデータサービスはバッチ処理に適し、Amazon Redshiftはデータ分析に適していると判断した。その結果、良品計画の場合はこの組み合わせが最適だった」と話す。
より知ってほしい人に、より響く情報をダイレクトに
MUJI passportおよびデータ分析基盤の導入による成果について、山際氏はこう話す。「顧客に対して、よりパーソナルなクーポンを発行したり、誰にどのタイミングでマーケティングするかといったことが可能だ。各店別、エリア別、顧客のセグメント、来店頻度、購入日時、年間購買など、さまざまな切り口で分析することができる」
さらに、店舗にチェックインした顧客が実際に購買に至ったか、プロモーション活動の効果測定などの分析も可能だという。どの人がいつ来店し、何の商品を買ったか、あるいは、ある化粧水のリピーターがどのくらいの間隔で繰り返し購入しているか、というように顧客に対してより深い洞察を得られるようになるだろう。
実店舗への送客でも一定の成果が挙がっている。良品計画は2013年夏、「マッサマン」というタイカレーを新発売した。その際に、MUJI passport限定の割引クーポンを配布し、新商品を効果的にアピールすることができた、と山際氏は話す。そうした取り組みもあってか、競合他社を上回る来客数の伸びを記録しているという。
今後の展開について、現状はデジタルマーケティングの施策にとどまっているが、データ活用の領域を広げ、より本格的な分析を行えるような仕組み・体制を模索していくとした。
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