スロースタートが奏功し、データ活用が浸透
オープン化が契機となったデータ活用 京阪百貨店の取り組みとは
京阪百貨店は、基幹系システムをオープン化することで、データ活用の道を切り開いた。また最近では、カラム型DBを導入することで、データ量の増大にも対応し、活用の幅を広げている。
京阪百貨店は、大阪府を拠点に5店舗を展開する地域密着型の百貨店。「すがたも心もきれいな百貨店」をコンセプトに、京阪沿線エリアで顧客密着型のビジネスを展開してきた。2013年3月期の売り上げ高は550億円、従業員数は約1000人となっている。
同社では、開封率や購買率向上につながる効果の高いダイレクトメール(DM)送付やサービスの拡充のため、自社データを分析し、その結果を踏まえた戦略的な販売推進を行ってきた。しかし、近年では、取り扱うデータ量の増大により、既存のITインフラでは処理が間に合わず、より詳細な分析に対応できないなどの課題を抱えていた。
そうした同社の情報活用基盤は、「メインフレームの時代」「オープンシステムへの移行」「データ増大への対応」の3段階に大別することができる。
データの連係に苦労したメインフレーム時代
京阪百貨店では、1983年の開店当初からメインフレーム上で基幹業務を行ってきた。メインフレームで構築した基幹系システムは、信頼性が高く安定性にも優れていたが、その半面、拡張性や柔軟性には乏しかった。また、メインフレームに蓄積されたデータを利用するには手間がかかった。ビジネスインテリジェンス(BI)ツール「Dr.Sum」を一部の業務で導入してみたものの、メインフレームとのデータの接続性が悪く、効果は非常に限定的だったという。京阪百貨店 経理部情報システムグループ担当部長 井上匡人氏は、当時の状況について「データ分析を十分にできる環境ではなかった」と振り返る。情報システム部門も運用保守にかかりきりで、ITの戦略活用まで手が回らなかったのだ。
そこで、2008年にメインフレームで稼働していた基幹系システムをオープンシステムに移行することを決定。同時に売り上げ情報・顧客情報を集約し、顧客ニーズに合った戦略を立案・実行するため、顧客購買分析用の情報系システムの検討を開始した。基幹系システムのオープンシステムへの移行は2010年4月から本格化し、情報系システムは2011年2月に業務利用を開始している。
情報系システムの社内構築で技術の空洞化を防ぐ
システムのオープン化に伴い、基幹業務を外部委託(アウトソース)し、運用・保守コストおよびリソースを削減する一方で、社内では情報系システムの構築と運用に注力した。自社内でシステム構築することで予算を抑え、技術の空洞化を防ぎ、柔軟な体制を整えることができたという。POSデータなど、業界や現場を深く理解している人員が関与できることも大きなメリットだ。一方で、情報系システムの構築・運用ノウハウがなかったためスロースタートとならざるを得ず、優先順位付けなど綿密なプロジェクト管理が必要だった。
当時の情報系システムは、「Oracle Database」でデータウェアハウス(DWH)を構築し、BIツールに「Oracle Business Intelligence(BI)」を導入した。京阪グループポイントカード「e-kenetカード」と、それにひも付けられた外商カードの顧客情報、POSデータなどの売り上げ情報を結び付けてDWHに蓄積し、BIツールを使って分析を行っていた。
「実際には、BIツールで分析を繰り返しながら、DMのヒット率を高めたり、来店客がどのような商品を購入しているか、どの地域からどのような来店率があるか、競合店から流れてきた新規会員がどのような購買活動をしているか、あるいはちゃんと取り込めているかを分析している」(井上氏)
カラム型DBの導入で全データの取り込みが可能に
基幹系システムのオープン化に伴い、導入された情報系システムであるが、運用が進むうち、データ活用に慣れてきた事業部門の要求に応えることが次第にできなくなってきたという。その理由の1つは、データ量の増大だ。当時のDWHはリレーショナルデータベース(RDB)で構築しており、処理性能や容量の問題から、POSデータなどから一部項目を抽出したサマリーデータを取り込んでいた。サマリーデータに含まれない項目を使って分析したい場合は、基幹系システムからデータを再取得する必要があった。データの再取得には時間も手間もかかるうえ、分析業務の中断を招いてしまう。複数の要因を掛け合わせた効果計測などもシステムの制約上、行えなかったという。
そこで、同社は2013年3月、新たにDWHの構築を検討、拡張性や性能の点からDWH専用カラム型DB「InfiniDB」の導入を決定した。実際には3社の製品から選定した。既存のBIシステムに独自実装している分析機能があり、その他の製品では検証段階で不具合が発生していた。その点、InfiniDBだけが、既存環境との連係によるエラーを解消できたのだという。
InfiniDBは、列指向型のDBであるため、データの圧縮効率が高く、大量データの処理に適している。2013年8月に新DWHをカットオーバーし、現在はサマリーデータではなく、POSデータなどの全情報を取得できるようになった他、検索時間も大幅に短縮され、より多面的な顧客分析、売り上げ分析を素早く実施可能となった。
ユーザーの成長に合わせて少しずつシステムをステップアップ
今後の展開については、BIツールを使った定形的な分析だけでなく、データマイニングツールを使ったさらなるDMの効果検証や、売り場を変更した際の効果計測、地図データとの連係なども検討しているという。また、「今は基本的に、前日のデータをバッチ処理で取り込んでいるが、当日の売り上げデータをリアルタイムに取り込んで分析できないかも考えている」という。
「小さな組織であったがため、やれることに限りがあり、ユーザー側の成長と一緒に、少しずつシステムをステップアップしていくことができた。それが功を奏し、ユーザーの反発を招くことなく、データ活用が業務に浸透していった。これからも優先順位を付けて、1つ1つ取り組んでいきたい」(井上氏)
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