関連企業とのWin-Winの関係作りが重要
徹底入門:小売業で大切なバリューチェーン最適化 そのポイントとは?
小売業を支えるバリューチェーン。そこでは、顧客情報や商品情報などさまざまなデータが日々蓄積されている。そうしたデータを適切に管理、活用することで、バリューチェーンの効率化と利益の増大へとつながる。
小売業界の特徴の1つとして、複雑に入り組んだバリューチェーンの存在が挙げられる。この仕組みを簡単に説明すると、メーカーが製品を倉庫に出荷し、そこから店舗へ配送、消費者が購入、という流れになる。
メーカーの背後には多数のサプライヤーが連なっている。ビスケットメーカーを例に取れば、砂糖、小麦粉、油脂、香味料など、製造に必要な全ての原料にサプライヤーが存在する。
こうした巨大なバリューチェーンが抱える問題とは、その中を行き来するデータが増え続けていることである。支払い方法や顧客名などの情報が、高度に分散・複雑化したバリューチェーンに含まれている。にもかかわらず、データの機密性や法規制に準拠したデータ管理への取り組みが進んでいないのが実情だ。
データの発生源はどこか。そして、バリューチェーン全体を通じてセキュリティを確保し、バリューチェーンの各部分で効率的かつ効果的な方法でデータを処理するには、どうすればいいのだろうか。
さまざまなデータソースが混在するバリューチェーン
バリューチェーンの中には、メインサプライヤーの従来型システムからロイヤルティーカードに至るまで、さまざまなデータソースが存在し、膨大な量のデータが日々生み出されている。これらのソースが互いに孤立し、外部から切り離された環境で管理されているケースも少なくない。だがバリューチェーンの中でデータをやりとりする必要性が高まるのに伴い、オープン性が求められるようになってきた。
バリューチェーンが有効に機能するには、データを統合的かつ一元的に管理すると同時に、情報の精度、整合性、セキュリティを維持する必要がある。
例えば、一次サプライヤーが一般消費者向け食品を製造するとしよう。このサプライヤーは、最終消費者に関する情報を知る必要はないが、倉庫/物流センターや販売店の情報ついては把握する必要がある。また、製品ラベルの記載内容を法的要件に満たすには、製品情報をラベル印刷業者や容器サプライヤーに伝える必要があるかもしれない。これらは全て基本的なデータであるため、セキュリティに対するニーズは低いといえる。
マスターデータ管理
別の製品を考えてみよう。消費者が買いに来た高付加価値製品(例えばテレビ)の在庫が店になかったとしよう。この場合、店がその商品を取り寄せて顧客に配達するよりも、メーカーから直接配送してもらう方がずっと効率的だ。これを実現するには、顧客データをバリューチェーンの隅々にまで伝達するとともに、配達のためにデータの一部を物流システムに渡す必要もある。
バリューチェーン内におけるデータ管理の出発点となるのが、マスターデータ管理である。商品と顧客をマスターレコードとして定義しておけば、部外者がこの2つの項目を直接結び付けることができなくても、特定の情報をマスターレコードに関連付けることができる。例えば、あるデータベースで「ジョン・ドー」という名前の顧客がマスターレコード識別子の「123456789」に結び付けられているとする。この場合、外部データベースにある「1234 5678 9012 3456」という番号のクレジットカードをマスターレコードの「123456789」に関連付けておくことで、部外者が2つの情報項目(顧客とクレジットカード番号)を一緒に引き出すことが困難になる。
同様に、顧客の住所、購入履歴、販売店とのやりとりなども、別のデータベースに保存された同じレコード識別子に関連付けることが可能だ。こうすることで、バリューチェーン内で情報を自由にやりとりし、正しい認証情報を持っている企業だけが必要な情報にアクセスできるようになる。テレビメーカーも物流会社も、顧客にテレビを配送するのに必要な情報を得られる。両社は支払い情報や顧客に関するその他の情報を見ることはできないが、小売店はテレビがいつ配達されたかを知ることが可能だ。
データ管理とセキュリティをさらに強化する手段としては、重複排除によるデータ量の縮小、データタギング(データへのタグ付け)、データパーティショニングなどがある。これらの手段を利用すれば、外部のパートナーがどの情報にアクセスできるかを容易に確認することが可能だ。また、暗号化はデータが盗み取られた場合のセキュリティ保護に役立つ。データ流出防止技術は、管理ネットワーク外に出してはならないデータを、ネットワーク境界内にとどめておくことができる。
要するに、バリューチェーンには、データの提供側・利用側双方の情報項目が存在し、顧客と商品、アプリケーションがそれに関連付けられているということだ。管理されたデータ環境では、「RSA SecurID」などの物理トークン、指紋や虹彩認証などのバイオメトリクスシステム、あるいは(少なくとも基本的なセキュリティ機能として)チャレンジ&レスポンス方式(共有パスワードでは監査証跡が無効になることに注意)などによってデータへのアクセスを管理することができる。
監査
監査も不可欠だ。複雑なバリューチェーンであっても、商品の未配達が生じた場合には、問題がどこで発生したかを容易に追跡し、早急に対処できなければならない。この問題に対処するには、バリューチェーンの物流部分でGPSシステムを利用する方法がある。GPSデータは物流機能を最適化する際にも役立つ。一定の時間内で配達可能な地点を管理するための等値線(地図上である量の値が同じであるような点を結んだ線)を用いることで、配達ルートを最適化できるのだ。
小売りバリューチェーンのセキュリティは本来、それほど深刻な問題ではないはずだ。ある程度の注意深さ、そして関連企業間の協力関係さえあれば、決して困難な課題ではない。効果的なデータ管理の真価は、バリューチェーンのスピードアップと全ての関連企業の利益率の増大にある。それはWin-Winの関係を作り出すことに他ならない。
Clive Longbottom氏は、英調査会社Quocircaのアナリスト
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