目に見える自動化と、目には見えない自動化の違い
人間、チャットbot、協働ロボットが共存する労働環境に必要な管理スキルとは
チャットbot、協働ロボット、人工知能(AI)が仕事に及ぼす影響、そしてデジタルな労働力が人間の職場に混在する環境には新たな管理スキルが求められる理由について、エキスパートに話を聞いた。
多くの労働者が自動化によって仕事を奪われないかと恐れていることをさまざまな調査が示している。だが、自動化やロボットテクノロジーが用いられるのは全ての職務ではなく、特定の仕事に限られることも同じく調査で示されている。
世界経済フォーラム(World Economic Forum)が2018年に公開したレポート「The Future of Jobs Report 2018」(2018年版仕事の将来についての報告書)には、次のように記載されている。「現在の職務の3分の2近くは、その仕事の30%を現状利用可能なテクノロジーに基づいて自動化できる。だが、仕事の70%以上を自動化できる職務は、現存する職務のほんの4分の1にすぎない」
同レポートでは、このような調査結果を基に、企業も個人も「人間の労働者、ロボット、アルゴリズムの間での労働力の分担に関する新たな平衡点」を見つける必要があると結んでいる。
自動化される職場はどのような役割を果たすのだろう。自動化、人工知能(AI)、botなどのテクノロジーが、今後、人間の労働者と自動化される職場にどのように影響を及ぼすかについて、IBMでオートメーション部門のグローバルバイスプレジデント兼統括マネジャーを務めるジン・チャオ氏に話を聞いた。チャオ氏の話は、「目に見える自動化」と「目には見えない自動化」を区別することから始まった。
――「目に見える自動化」と「目には見えない自動化」とは、何を意味するのでしょうか。
ジン・チャオ氏(以下チャオ氏) 目に見える自動化とは、チャットbotのようなものを指す。つまり、それ自体がシステムを成すものだ。そのシステムは、人間の行動を模倣する。その行動は、人間の声を聞くものもあれば、別の仕事をこなすものもある。これに対して、目には見えない自動化とは、システム内部で実行されるものを指す。
目に見える自動化に対応し、受け入れるのはそれほど難しいことではない。昨今は、botやロボットに親しみを感じるようになっている。昔は違った。私たちが子どものころは、ロボットには「邪悪、悲観的、陰湿」なイメージがあった。アーノルド・シュワルツェネッガーが演じた映画「ターミネーター」のような感じだ。ロボットが非常に穏やかで陽気な存在に見えるように、世間は大きく方向転換を図ったのだろう。だが、親しみやすいロボットのほうが受け入れられやすいのは確かだ。
――人間は、自動化された職場でbotをどのように認識または特定するのでしょうか。全てに名前が付けられるのでしょうか。
チャオ氏 デジタルレイバー(労働者)が自動化してくれる要素にはそれぞれ役割がある。そのため、その要素が何をしているかは理解できる。その仕事は、ホログラムではなく、目に見えるものだ。各要素の役割は「バーチャル経理担当者」のように、仕事上の役割や職務が中心にある。テクノロジーサポートサービスなどの仕事を担当するソフトウェアベースの労働力もあるかもしれない。
――バーチャル経理担当者や、バーチャルIT担当者に対して、人々はどのような不安を抱いていますか。
チャオ氏 1つは、インテリジェントな自動化やbotによって私たちの仕事が奪われるという恐れだ。白か黒かというような二者択一の見方によってこうした恐れが生まれる。だが、実際には2つが混在するハイブリッドな状況になる。人間にしかできない職務、仕事、経験はたくさんある。ロボットにしかできない仕事もある。だが大多数の仕事は、人間とロボットの両方が共存しなければならないハイブリッドな状態になる。
製造分野では、力仕事や組み立てラインのスタッフをサポートするために、協働ロボット(cobot:collaborative robot)が利用されている。この協働モデルが、知的労働にも取り入れられるようになる。これにより、誰が何の仕事をするかを見極める方法が変わる。
――ハイブリッド状態で自動化される職場はどの程度普及するでしょうか。
チャオ氏 ほぼ全ての職場で普及するだろう。だが、どの程度深く、広く浸透するかは、機能領域、仕事の種類、その仕事に求められる専門性の度合いに左右される。
ほぼ全ての人が、AIや自動化をある程度利用している。気付いていないかもしれないが、既に広がっている。大きな「System of Record」(SoR)を使用している場合、こうしたシステムトランザクションの内部は、一連のテクノロジーによる拡張サービスになっている。インテリジェントなサービスもあれば、タスク指向のサービスもある。分析に取り組む場合は、自動化やAIによって何らかのメッセージが情報に加えられている。
人間が介在しなくても実現する仕事も一定数存在する。例えば動画配信サービス「Netflix」は、ユーザーが視聴したものを学習し、そのユーザーが好みそうなコンテンツをレコメンドする。それが全てソフトウェアによって行われている。テクノロジーサポートについて考えてみよう。ほぼ全ての企業では、テクノロジーサービスやサポートメカニズムがほぼ常に仮想エージェントとの対話になる。例えば、サービスデスクにテキストを送ったり、チャットをしたりすれば、パスワードをリセットできる。この作業は一切人手を介さない。
――自動化される職場は将来の人員配置をどのように変えるでしょうか。
チャオ氏 バーチャル経理担当者の例に戻ろう。現時点では、(経理サービス)担当者のうち日常の仕事をしているバーチャル経理担当者はごく少数だ。だが、このバーチャル担当者が賢くなっていくにつれ、実行できる経理業務のレベルは人間に近づくだろう。そうなれば最高財務責任者(CFO)は、国内の労働者、国外の労働者に加え、第三の柱としてバーチャル労働者の管理にも力を入れなければならなくなる。
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