小売り大手Targetで起きたPOSシステムの障害は、電子商取引システムがその隙間を埋められる可能性を示した。まだネット通販が実店舗に取って代われる段階には至っていないものの、その状況に近づきつつある。
小売り大手Targetで起きた障害は、レジスター対応の遅れを生じさせ、推定5000万ドルの損害を発生させた。この事態を見る限り、電子商取引システムはまだ、販売時点情報管理(POS)システムの代替となるには程遠い。それでもカスタマーエクスペリエンス(CX)の面では年々、大きく前進しつつある。
Targetでは2019年6月15日、1800店舗以上で約2時間にわたってレジが使えなくなり、翌16日にはさらに90分間、一部の電子決済が処理できなくなった。先進的な買い物客にとって、スマートフォンのインターネット通販アプリケーションは、Targetの障害で発生した長蛇の列に並ばずに済む手段を提供した。
メールを通じてTargetが公開した声明によると、今回最初の障害は「社内の技術問題」によって、2度目はサードパーティーの決済処理企業NCRで起きたデータセンターの問題によって発生した。この障害で同社が被った売り上げの損失は、最大で5000万ドルに上る可能性があるとアナリストは推定する。
TargetのPOSシステムは社内のIT開発部門Target Technology Servicesが開発し、それぞれの店舗が自前のサーバで運用している。やはり社内で運用する電子商取引サイト「Target.com」は目覚ましい成長を遂げ、2018年の売り上げは初めて50億ドルを突破した。同社が2019年2月2日に発表した決算によると、オンラインの売り上げは5年連続で25%以上の伸びを示し、販売収入の7%以上を占めている。
調査会社Forrester Researchのアナリスト、サチャリタ・コダリ氏によれば、カスタマーエクスペリエンス(CX)の観点から見た場合、小売大手の店舗でPOSシステムの障害によって大行列ができるのは、まれだという。大抵の場合、ダウンするのは電子商取引のWebサイトあるいはそのベースとなっているシステムであり、Targetで起きたようなPOSシステムの障害がCXに与える影響を把握するのは難しい。
店舗のインフラがダウンするのは極めて珍しい。それでもネット通販が隙間を埋めた事例はある。「店舗で商品の在庫切れや休日の混雑といった『失敗』が起きた場合、Webで売り上げを補うことができる」とコダリ氏は話す。
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